読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

英国の階級制度とロックンロールスター

音楽


Pulp - Common People - YouTube
英国ロックバンドPULPの1995年ヒット曲「コモンピープル」
名門セントマーチンズに通う金持ちのお嬢様がこう語る。

I want to live like common people,
I want to do whatever common people do,
I want to sleep with common people,
I want to sleep with common people,Like you.

「普通の人みたいに生きてみたいわ」
「普通の人がすることをして、普通の人と寝てみたいの。アナタみたいなね」

上流階級を揶揄した、英国の階級制度が非常に現れているニヒリズムな歌詞。




【スポンサーリンク】




rock'n'rollstar


Oasis - Rock 'N' Roll Star (Official Video) - YouTube
オアシスがデビューした際、いつも同時期にデビューしたブラーと比較された。
ワーキングクラス(労働者階級)のオアシス。
ブラーはアッパーミドル(中上流階級)出身メンバーが占めるバンド。

同じ日にシングルを発売することになり英国では「オアシスvsブラー」を「労働者階級vs(中)上流階級」の代理戦争として報じた。

walking-class-hero


英国の階級社会は、昔から階級制度が根強く存在している。
日本でも階級社会だー!と言いますが、英国は名実ともに筋金入り。

ー階級の内訳と特徴
(以前の別記事での掲載の再掲載。英紙数紙の紹介を元に作成。実際には解釈が広いので、あくまで目安。)

上流: 貴族、紳士階級、土地所有者など。先祖代々の土地や資産を受け継ぎ、国内で最も裕福な層。BBCのアナウンサーなどが使う発音で英語を話し、パブリック・スクールで教育を受ける。狩猟、乗馬などを楽しむ。ビジネスを嫌悪する傾向も。

上・中流: 教育程度の高い家庭出身で自分自身も良い教育を受けた層。アッパークラスの発音や生活様式を模倣しようとする。弁護士、医者、軍隊幹部、学者、官僚、株式ブローカーなど。文化的リーダーシップを取る。

中・中級: 上の階級よりは教育程度がやや低いブルジョアジー。地元企業の経営者、大企業の中間管理職など。BBC英語に少々地元のアクセントを入れて話す場合もある。

下・中流: ホワイトカラーに従事するが、大学には行かなかった場合が多い。多少地元のアクセントが入った英語を話す。

労働者階級: 農業、鉱業、工場勤務者、ブルーカラーの仕事に就き、地元のアクセントの英語で話す。教育程度はあまり高くない。サッカーや大衆紙を好む層とされる。

貧困層:低所得者か社会保険を受給している層。

http://ukmedia.exblog.jp/11554874/

そういう階級社会の中で階級を超えて資本主義社会で成功を手にするには
「ワーキング・クラスはフットボーラーかミュージシャンになるしかない」
と自虐的に言われていた。


2013年ころからブレイクしてるソロシンガーのジェイク・バグはノッティンガムのワーキングクラス出身。

Jake Bugg - Lightning Bolt - Official Video - YouTube

ミドルアッパ-クラス出身のマムフォード・アンド・サンズを「バンジョーを持った金持ち農夫」「恵まれた環境で育った中産階級アーティストの音楽より、貧乏で育ったワーキング・クラス・アーティストの音楽のほうが【リアル】だなんて誰が決めたんだよ!?」とDISり話題になったりもしている。


The Streets - Dry your eyes - YouTube
The Streetsことマイク・スキナーは、英国貧困層の日常風景をラップで歌っていた。


このようにワーキングクラス出身のミュージシャンは数年前まで見かけた。
過去を振り返ればブライアン・フェリーやスエードのブレット・アンダーソンだってワーキングクラス出身。


英国には、権威として王室があり女王が存在する。
ロックバンドは「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」を歌い「クイーン・イズ・デッド」を歌い上を見上げて中指を立ててみせる。
ワーキングクラス出身のファッションデザイナーであるアレキサンダー・マックイーンが王室から依頼を受け皇太子のジャケットを作った際、ライナー部分に「I am a cunt」と落書きをしたというのは有名な話。

労働者階級から成り上がり、権力に逆らうワーキングクラス・ヒーローも英国の階級構造があるからこその存在。

realgreatbritain


Asian Dub Foundation - Real Great Britain - YouTube


本来社会構造に関わらず実力主義で成り上がれるはずの音楽や芝居などの芸能での成功が難しくなっている、というのが在英のブレイディみかこさんの記事。

役者なら英国で有名な王立演劇学校やギルドホール音楽演劇学校などがある。
出身者はアルバート・フィニー、ピーター・オトゥール、オーランド・ブルームやダニエル・クレイグなどなど名優。
中上流階級の出身者が並ぶ。

「演劇界の人々は皆、多くの俳優志望の若者たちから手紙を受け取っています。でも、私たちにできることには限りがある。演劇学校の費用が高過ぎるのです」
オブザーヴァー紙にそう語っているのは007シリーズのM役で有名なジュディ・デンチだ。
「才能さえあれば、そんな学校に通わなくともブレイクできるという人もいるでしょう。けれどもそれは、本当に至難の業です」と彼女は言う。
王立演劇学校の芸術監督エドワード・ケンプは、年収2万5千ポンド(約460万円)以下の家庭の子供で2014年に同校を卒業した生徒は全体の36パーセントだったと言う。奨学金制度が充実している王立演劇学校は庶民的な子供が多いほうだそうだ。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/bradymikako/20150226-00043362/

元ネタは
Posh U.K. actors spark concern over elitism | Arts & Ent , Culture | THE DAILY STAR
この辺りの記事。



2014年12月のノエル(ex.オアシス)のインタビューですが

「連中(引用者注:ワン・ダイレクション)はバンドじゃなくて、ただのグループだからね。せいぜい頑張ってもらいたいところだけど。アークティック・モンキーズとカサビアン、10年前といったら、この二つになるけど、そもそもこの二つのバンドはどっちも自分たちに続くバンドを触発できてないんだから、情けないよね。もう労働者階級を代弁する声なんてないってことだし、低所得者向けの住宅から聴こえてくるような感じなんかももうないよね」

「音楽は本当に中流的なものになっちゃってるよ。これが90年代だったら、俺だってバスティルなんてクソミソにやってつけてただろうし、インタヴュー1本だけで完膚なきまでに叩き潰して二度と誰の眼の前にも現れないようにしてやったはずだよ。そんなことは朝飯前だぜ。うちのベーシストがこの辺をうまく言い表してて、つまり、俺たちはいつも『次のバンドはどこからくるんだ?』って口にしてるわけだけど、うちのベーシストの話では『っていうか、バンド云々の前の話だから。やる気のあるやつはどこ行っちゃったんだ?』っていうね」

ワーキングクラスから成功したノエル(ギャラガー兄弟)は当然のごとくブラーもレディオヘッドも嫌い。
そんなノエルからすれば中上流層出身者ばかりの今をまどろっこしく感じる。

ピストルズやザ・スミスなど貧困、労働者層出身の有名バンドは多い。
英国におけるパンクやロックンロールとは、そういう階級構造に縛られない音楽だった。


しかし現状を見れば役者にしろ音楽にしろ労働者層からの出身者が実際に減っている。
だから

「今の英国社会は昔よりそういうワーキングクラスの成功が出来づらい社会構造になりつつあるんじゃ?」
「やっぱり保守党のキャメロン首相の政策が……」

と言う話が今英国や業界内からの声で話題になってる、という記事。
ブレイディさんの持論みたいに読んで非難してるひとがいたりしてなんともね……。


日本やJ-Popと比較して理想論を語っている記事も見かけたが……あまりに何もわかっていなさすぎる。
的外れすぎて苦笑いすら出ない。
貼りませんが。

これは決して
「芸能は教育や階級構造なんて関係ないぜ!」
「結局アイデアと才能次第だろ?」

などという話ではない。

階級など関係なく自分のセンスで成り上がったからこそアレキサンダー・マックイーンは他に類を見ない独自のセンスを披露して見せた。

「芸は実力次第」なんて、今さら言われるまでもなく、英国民が一番わかってる。
これは、そんなさまざまな過去例を前提とした上で、現在の状況に疑問を呈している話題。


よくわからないのに偉そうに語る方の寒さをいちいち突っ込みませんけどもね。
平常運転ですね、青n

Shangri La