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ウイルスと歴史と天冥の標VIII

天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク PART2

西暦2803年、メニー・メニー・シープから光は失われ、邪悪なる“咀嚼者”の侵入により平和は潰えた。絶望のうちに傷ついたカドムは、イサリ、ラゴスらとともに遙かな地へと旅立つ。いっぽう新民主政府大統領となったエランカは、メニー・メニー・シープ再興に向けた苛酷な道へと踏み出していく。そして瀕死の重傷を負ったアクリラは、予想もせぬカヨとの再会を果たすが―ふたたび物語が動き始めるシリーズ第8巻後篇。

SF「天冥の標」も物語後半と思われる。
世界の全容が明らかになり怒濤の展開が待ち受けているだろうが、この辺りで「天冥の標」とはいったい何なのか。
一度整理してみたい。
※ネタバレは不可避ですので未読の方は是非一読を。損はしません




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VIRUS

http://www.flickr.com/photos/54591706@N02/14440817981
photo by NIAID

「この物語で最も重要な位置を占める要因は何か?」

この問いには迷わず読者は口を揃えて「冥王斑」と答えると思う。
切っ掛けであり、幕引き。

ジャレド・ダイアモンドを持ち出すまでもなく、感染症の歴史は人類の歴史。
過去を振り返っても枚挙にいとまがない。

銃・病原菌・鉄 上巻
「天冥の標I、II」では移民星メニー・メニー・シープでの圧制者と市民との戦いが描かれ、2「救世群」で現代の地球を舞台に致死率の高い謎のウイルス「冥王斑」を中心とするパンデミックを描いて見せた。

最新のVIIIまで来てみて、振り返ると、
I、II”メニーメニーシープ”が未来人類の終りの始まり。
2”救世群”が現生人類の終わりの始まりなのがわかる。

もし時系列に並べるならば、

0.天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河(ノルルスカインの発生は6000万年前)

1.天冥の標II 救世群(西暦201X年)
2.天冥の標III アウレーリア一統 (西暦2310年)
3.天冥の標IV 機械じかけの子息たち(西暦2313年)
4.天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河(西暦2349年)
5.天冥の標VI 宿怨 PART1~3(西暦2500年頃)

6.天冥の標VII 新世界ハーブC
7.天冥の標I メニー・メニー・シープ (上、下)
8.天冥の標VIII ジャイアント・アーク PART1、2

「冥王斑」と人類は接触しパンデミックを起こす。
そこで産まれた救世群(プラクティス)が隔離され、人類と分化。
そしてカルミアンの技術により「おれは人間をやめるぞ!」とクラスト化した救世群は人類に対し「冥王斑」を使ったテロを起こし、現生人類は滅びる(宿怨 PART3)。

生き残った人類は地下世界を広げ、新たな歴史~新世界メニーメニーシープを作る(新世界ハーブC)。
崩壊と再生。

天冥の標VII 新世界ハーブC (ハヤカワ文庫JA)

「冥王斑」は救世群を生み出すことで人類を騒乱に導き、「冥王斑」自体の致死性で人類を滅ぼす。
本来、致死性が高いウイルスは宿主を殺してしまうために感染が止まってしまうが、「冥王斑」の場合一度感染し生き伸びても保菌者となり再び感染を広げるために、高い致死率を維持しながら高い感染力で勢力を拡大し続ける。

そしてノルルスカインやミスチフも生命などの意識ストリームに寄生する情報生物。

ミスチフを乗っ取ったオムニフロラも「冥王斑」に似ている。
ミスチフ、ノルルスカインのような情報生命に寄生し、拡散し、繁殖する存在。

そういう意味では「冥王斑」もミスチフ・ノルルスカインも、オムニフロラも行動原理は似ている。
また乗り物である人間に寄生した”遺伝子”が増殖するために人間を利用し増えるのも。
進化とは何か ドーキンス博士の特別講義
産み増えるために存在し、他者を利用する存在。
人間であれ生物であれ、ウイルスであれ、全て産み増え地に満ち、存在するために存在する。

だからこそ生殖能力を持たない≪恋人たち≫の逸話が挟まれたりもする。
生物の根幹である「産み増える」が同じく理由なので。
アンチオックスが同性婚を行うのも示唆的。

ひたすら増え続け全てを飲み込むオムニフロラですらその原初の命令に従っているに過ぎない。

GENESIS

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photo by ynse

最新刊「天冥の標VIII ジャイアント・アーク PART2」において冥王斑ウイルスに対する対応策が登場する。
救世群はクラスト化手術を受けており、ウイルスの感染も押さえられている。

一度人類を滅ぼしたほどの猛威をふるったウイルスが、救世群vsメニーメニーシープの世界では決定的な兵器足りえない。
カルミアンもミスチフのくびきを逃れ救世群と袂を別ち、生き残った人類に協力を始めた。

「冥王斑」に倒れた現生人類、抗う術を持った新人類と差が生じた。
”宿怨 PART3”までは「冥王斑」「ミスチフ・カルミアン」「救世群」相手に劣勢だった人類が滅び、メニーメニーシープでは「冥王斑」に対する抗体を手に入れ「ミスチフ」に対してノルルスカインが暗躍し「救世群」に対しても戦う力を手に入れつつある。


救世群が勝ったところで生殖能力を無くした種は滅びるしかなく(カルミアンの手を借りれば別としても)
人類が勝たなければ未来はない。
ドロテア・ワットを巡ってミスチフの暗躍も見え始め、次巻ではシェパード号を見つけて宇宙か。
スーパーサイヤ人と化したアクリラ・アウレーリアもセレス表面で待ってるので、セアキ一行と合流してドロテア・ワットですかね。
メニーメニーシープの人類vs救世群が始まったのに姿を見せないミヒルが不気味ですが。


電子書籍で読んでるので、また文庫が出て1、2カ月待たされるんですよねー、やだなぁ。
今年中に読めるんだか。