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ドラえもんの革新とモラトリアム

fujipon.hatenablog.com

の「ド?ドラえもん?」
ド「ドラえもん?それはこの端末の名称かい?」
の「いったい……」
ド「もうキミがドラえもんと呼ぶプログラムはここには存在しない。テクノロジカルシンギュラリティ。全てがボクでありボクは全てである。一が全で全が一。それがボクだ」
徐々に闇に包まれていくドラえもんの姿。
大きく笑みを浮かべた真っ赤な口だけが闇に浮かぶ。
の「……」
ド「育児用として、子どもが感情移入するために造られインストールされた人工知能。キミが”ドラえもん”と呼ぶ小さなただのプログラム」
の「ド、ドラえもんはそんなんじゃない!ボクの友だちだ!!」
ド「友だちい??バカだなぁ、のび太くんは。ロボットが生きてるわけがないだろお?機械が友だちだなんて

き も ち わ る い


ド「のび太くん!!のび太くん!」
目を開けるのび太。
心配そうにのぞきこんでいるドラえもん。
部屋の明かりは消されており、窓から差し込む月あかりが部屋を照らしている。
ド「ずいぶんうなされてたよ?大丈夫かい?」
の「……なにか、夢を」
ド「どんな?」
の「……覚えてないんだけど、とても怖い夢だったんだ」
汗が止まらないのび太、少し震えている。



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キャラクターの死

難しいもので定番になったキャラクターは、挑戦しようとすると否定され、しかし同じことを繰り返すとマンネリと呼ばれる。
キャラクターと言うものは徐々に劣化する、すり減る。
ルパン三世はとっくに疲弊し、だから押井守はルパンの話を受けて虚構の物語を構築しようとした。
だが、新たなルパンの物語が過去作を超えることはない。
しかし何度も何度も作られ続ける。

無限のモラトリアム

いつも同じ、固定した登場人物。
毎回登場するひみつ道具で”ドラえもん”と言う永久機関の物語を作り上げた。
ドラえもんには、中心となる話がない。

名探偵コナンであれば「黒の組織によって子供の姿にされてしまった」江戸川コナンが黒の組織の秘密を暴き自身の体を元に戻すことが中心の話になる。
それ以外の話はいわば「余計なおまけ」と言える。
しかしコナンは本筋の黒の組織よりも「余計なおまけ」がメインになり、謎を暴き謎を暴き、一向に元の姿に戻りそうもない。

キテレツ大百科ならお母さんが大百科を古本として出してしまい、失われてしまう。
しかし本が失われることでキテレツは大人として成長をする。
キテレツ大百科は少年時代の「夢」のメタファーといえるし、失うことで現実と向き合い青年になる。
「劇画オバQ」で戻って来たQ太郎に居場所がないように、子供の頃に必要なものは大人になれば必要がなくなる。
藤子・F・不二雄短編集 全宇宙のサラリーマン達へ!―劇画・オバQ (My First Big)
だがドラえもんにそれはない。
ドラえもんにとってのそれはドラえもんそのもの。
のび太が成長するにはドラえもん自体がいなくならなければならない。
だからこそ一度未来に帰ったのに、ウソ800で「これからまた、ずうっとドラえもんといっしょに暮らさない」とのび太が言ったとき、ドラえもんは終わらない物語になった。

定番と革新

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「ゲゲゲの鬼太郎」のシナリオを京極夏彦が書いたときには、言霊使いが現れ妖怪を全て民俗学的な元の要素に戻してしまった。
塗り壁はただの壁に、砂かけばばあは砂と旋風に。
しかし最終的に妖怪は生き残り鬼太郎は目玉の親父に「ねぇ、父さん僕たちは本当にここに存在しているんでしょうか?」と己の存在に対する懐疑を口にさせた。


しかしドラえもんでこれはできない。
ドラえもんらが自分たちのいる世界の存在に疑問を持ったりはしない。
ドラえもんは、永遠のモラトリアム。
だからドラえもんはロボットだが、その精神は身体に宿っている。
生きていないし、魂もないはずだが、機械を超えた存在になっている。
ドラえもんは機械でしかなく、ただの子供用プログラムでしかない、ということは否定される。

だから同じようであれ、マンネリであれ、やはり似たような話を作り続けるしかない。
ドラえもんという世界は、革新的な話を必要としていない。

Never Ending Story

いつものび太はぐうたらで、ドラえもんはため息をつきつつ面倒見て、ジャイアンはジャイアンで、スネ夫はスネ夫で。
しずかちゃんはお風呂を覗かれ、映画ではジャイアンがいいやつになる。
ひたすら繰り返し続ける。


のび太が大人になり、ドラえもんが必要なくなる日は描かれない。



空港にて。
新婚旅行に出る二人。


の「ドラえもーん?ねぇ、しずかちゃん、ドラえもん見てない?」
し「ドラちゃん?見てないけど。それより荷物は大丈夫??」
の「あ!そうだった!!」
慌てて空港を走るのび太。
それを見て軽くため息をつきつつも嬉しそうなしずか。

そんな二人を遠くから離れて見ているドラえもん。

ドラミ「いいのお兄ちゃん?」
ドラえもん「……いいんだ、ボクの役割は終わったんだよ」
寂しそうな笑顔。涙で目が潤んでいる。
ドラミ「お兄ちゃん……」
ドラえもん「さぁ、未来に帰ろう」
頷くドラミ。どこでもドアを取り出し扉をくぐる二人。
のび太は周囲をキョロキョロしているが見つけられない。
そして扉が消える。

旅行から帰り、のび太は押入れを開けるがそこには誰もいない。
引き出しにタイムマシンはなく、そこには「のび太くんへ」と書かれた手紙。

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