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押井守と東京

アニメ 小ネタ 映画

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一九六〇年代にマーシャル・マクルーハンが『メディアの理解』で電気メディアを身体外部への中枢神経系の拡張であると述べるのに先だち、二〇世紀初頭のゲオルク・ジンメルやヴァルター・ベンヤミンの都市論は、近代都市の経験が人間の神経に及ぼす作用を通じて、都市における人間身体を一種のサイボーグととらえる一方、都市をひとつの「身体空間」として描きだしていた。
ジンメルは論文「大都市と精神生活」(一九〇三)で、外的、内的な刺激の迅速な交代が「神経生活の高揚」を生む大都市では、刺激があまりに過剰で強力すぎるための一種の適応現象として、独特な「倦怠」という無感覚状態が生まれているとした

http://db.10plus1.jp/backnumber/article/articleid/622/

天才プログラマー帆場暎一が犯罪を行うのは「復讐」だと言われる。
しかし「復讐」は動機ではなく「行為」。
作中では明確な動機は描かれず観客はその悪意から推測するしかない。

ここでは少し帆場の動機について少し考えてみる。




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東京と押井守

東京防衛軍 (アクションコミックス)

1989年に上映された「PATOLABOR THE MOVIE」
バブル景気に踊る1989年。

昭和から平成に変わった年。
いじめや校内暴力が社会問題になり、女子高生コンクリート詰め殺人事件が起き、宮崎勉による東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件が起き、オウムにより坂本弁護士が殺害された年でもある。
岡崎京子が空虚な現実を描いた"平坦な戦場"。

「そういう意味で、私は世界が終わってしまうといった世紀末の終末感より、むしろ”世界が終わらないこと”のほうが怖い。終わらない、この日常をジタバタ生きていくことの方が恐ろしい」

i-Okazaki:cliqueインタビュー

岡崎京子がこのように語っている80年代後半、90年代初め。

よしもとよしともは「東京防衛軍」に”昭和の亡霊”を登場させ、ノスタルジーで作られた亡霊を倒すためにノルウェイの森で出来たミサイルによる”トレンディ”で対抗した。
よしもとはコメディとして描いているがこの東京のノスタルジーを薄っぺらなトレンディで駆逐すると言う虚無感は薄っぺらな東京と言う街をとてもよくあらわしている気がする。


バブルに躍る世間は好景気に躍る80〜90年代。
そしてパトレイバーの作中世界もまた、バビロンプロジェクトによる特需で好景気に沸いている。

完成の暁には首都圏を一周する大環状線が開通するだけでなく、十数箇所に設置された水門で潮差を利用した排水を開始。海面沈下と埋立で10年後には東京湾に45000ヘクタールの用地を確保。21世紀を通しての首都圏の用地問題が一挙に解決されます。永遠の都バビロン、コスモポリス東京をめざす文字通り今世紀最大の洋上工事計画バビロンプロジェクトというわけですよ

http://homepage1.nifty.com/~yu/p/p1.html

永遠の都、奢りにとりつかれた享楽の都を神エホバが窘める。

押井は「古い東京による新しい東京への復讐」物語を描いた。
それは写し鏡のように80〜90年代のバブルの日本をなぞっているようにおもえる。
リバーズ・エッジ 愛蔵版
押井守は、学生運動に憧れ、しかし本格的に学生運動に参加できなかった世代。
革命による新しい日本を夢想し、しかし現実は内ゲバによる崩壊を迎え、世界は変わらず、日本は好景気に踊り、東京と言う都市はメタボリックに醜く成長し続ける。
PATOLABOR THE MOVIEにおける”悪”~帆場は「東京の街を破壊する」ことを目的にしている。

コスモポリス東京を目指し、享楽の中にあり過去を振り返らずひたすら変わり続ける東京。
岡崎のいう終わることのない平坦な戦場あるいは緩慢なる死を終わらせるべく行われるテロ。

それにしても奇妙な街だなここは。あいつの過去をおっかけてるうちに、何かこう時の流れに取り残されたような、そんな気分になっちまって。ついこの間まで見慣れてた風景があっちで朽ち果てこっちで廃墟になり、ちょっと目を離すときれいさっぱり消えちまってる。それにどんな意味があるのか考えるよりも速くだ
ここじゃ過去なんてものには一文の値打ちもないのかも知れんな
俺たちがこうして話してるこの場所だって、ちょっと前までは海だったんだぜ。それが数年後には、目の前のこの海に巨大な街がうまれる。でもそれだってあっという間に、一文の値打ちもない過去になるに決まってるんだ。たちのわるい冗談につきあってるようなもんさ。帆場の見せたかったものって、そういうことなのかも知れんな
我々はどこへ行くのか、我々は何者なのか

http://homepage1.nifty.com/~yu/p/p1.html

個人による革命。
独りの人間の作り出した言葉(HOS)が世界を変革する。


パトレイバーに引用されるバベルの塔の逸話においてエホバは天より降りて塔を建てる人間の”言葉”を乱す。
帆場の職業はプログラマー。

言葉を操り創造を行う。
そして生み出す”HOS”という名のOS。

帆場が憎み、復讐する変わりゆく東京という街。
旧時代の亡霊、行き場のない妄念。

僕は穏やかに死んでゆく/いつも少しずつ死んでゆく。
ひどく穏やかに死んでゆく/僕はやわらかく死んでゆく。
言葉などもう無いだろう

世界塔よ永遠に/Flipper's Guitar

機動警察パトレイバー 劇場版 [Blu-ray]