「パトレイバー首都決戦」を観る7つのポイント


映画『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』予告編 - YouTube
「THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦」を観てきました。

ネタバレありでガッツリ記事は書きますが、まずその前にこの映画の見るべきポイントに関して記事を一つ書いてみたいというのが以下。

※観終わった方はこちらをどうぞ↓azanaerunawano5to4.hatenablog.com

1.女の戦い

押井作品においては、まず女性。

今回の場合はまず太田莉菜演じるカーシャ。
テロリストと一戦交えるにしろ、まともに戦えるのはカーシャしかいませんし男性陣は全てガラクタ。
ですので戦闘シーンでカーシャが超絶活躍します。
ミラ・ジョボヴィッチ的な感じっていうか。。次いで高島礼子扮する公安の高畑彗。

そして真野恵里菜扮する泉野明。
普通、タイトルになっているロボットの搭乗者は主人公ですが今回の主人公は泉野ではありません。
敵、灰原零(森カンナ)。
泉野明は灰原零と対になる存在。


押井監督にとって男はどーでもいい。
若い男じゃなくオッサンが多い。

女性を撮りたいし、女性を動かしたい。

男性は簡単ですが演出するモチベーションは低下します。
女性はその反対で演出のモチベーションは上がりますが難しい。
したがって男性的な女性キャラクターが誕生することになるのです。

押井守の「世界の半分を怒らせる」。第59号

過去作を振り返り、
劇場版パトにおいて最後の決戦は、泉 野明vs香貫花・クランシー。
パト2でもこじらせた柘植を南雲が追い、
「攻殻」では草薙素子が身体を破壊しつつ戦い、「イノセンス」では押井の分身である冴えない孤独なオッサンのバトーが草薙素子を追い求める。



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押井作品における女性は、常に活動的で最前線で戦い、マッチョ。
男性は女性のアシストをする存在。
この辺は変奏曲である踊る~において、女性→男性に変更されている辺りわかりやすい。


押井監督、対談の中でこんなことを言っていた。

夏野:冒頭で述べた『攻殻』の主人公も、若い女性ですよね。
 
押井:あれは主人公が女性だから成立したのです。女性は「自分という存在は、代々つながっているなかの1つでしかない」という感覚をもっている気がします。だからネットと直接つながる世界との親和性が高いのではないか。あるいは自分の存在と肉体を分けて考えるため、「義体」に対してもさほど抵抗を示さない。化粧や美容整形といった肉体の外見を変える行為も、ためらうことなく行なうことができるのは、そのためでしょう。

逆に男性から『攻殻』の感想を聞くと、「『義体』なんかまっぴらごめん」という声が多い。自分の身体についてどこか観念的であるために、かえって肉体に執着したり、コンプレックスをもったりするように思います。

(中略)

押井:男は基本的にバカなんですよ(笑)。声優や役者のなかには、「自分はいつまでも子供だ」「やりたいことはすべてやる」と開き直っている人もいますね。僕の周りにもたくさんいますが、ついつい「しようがないなあ」って付き合ってしまう。一方、女の子は6歳ぐらいになると「大人のスイッチ」がときどき入って、男の幼稚な行動を覚めた目でみるようになる。

少し乱暴な言い方をすると、たぶん「動物」や「女」という世界があって、男はそこでは不要な存在なのです。生き物であることに忠実であればあるほど、動物や女の世界に向かうため、男は生き物から外れた存在とすらいっていい。そういう人間が携帯をつくったり、パソコンをつくったりしているわけですから。
悩めるリーダーはSFに学べ(2)―押井 守(映画監督)、夏野 剛(慶應義塾大学特別招聘教授)

パト2で言われる「男がこじらせたものを(柘植のテロ)女性がいさめる(南雲が逮捕する)」という構図といい、押井にとっての女性とは敵わない存在であり、愛おしい存在なんでしょうし、イノセンスの素子とバトーという「女性を追い求める孤独な中年男の悲哀」を女性が視るのと男性が見るのとではずいぶん違うのでしょうね。

2.ロボット映画ではない

見てない人ほど「どうせ巨大ロボットが動くだけでしょう?」という。

でもそれって刑事モノを
「どうせパトカーで走るだけでしょう?」
「どうせ銃で撃つだけでしょう?」
というのと大差ない。


押井作品においてのロボという存在はあくまでも要素のひとつです。
これは日本のフィクションにおいて、巨大ロボという存在が

「(肉体に自信のない日本人男性の)肉体の拡張」

だからだとも言われる。
女性をそもそもメインに据える押井監督的に巨大ロボは必要ではないのかも知れない。

――話題の原寸大レイバーは活躍するんですか?
押井:活躍もなにも出っぱなしだよ。動かすときはCGだけどね。
あれは本当に作って大正解だった。あれがなかったらどうにもならなかった。
結局ね、ああいう作り物なしに合成だけで作っていこうというのはね、ダメだよやっぱり。
決まったような画しか撮れないしさ。やっぱり乗ったり降りたり、寄っかかれて蹴飛ばせて、車に乗っけて走り回ってナンボのものなんだよ。それは合成でやるのと別世界だよ。
その部分では実物のリアリティは強い。
最初に見ると誰でも「おお」って感じになる。それは衣装と同じでさ、演技に絡むんだよ。当たり前だけど。

押井守の「世界の半分を怒らせる」。第26号

だからこそ伊藤和典らの男性エンタメ的目線が混ざることで娯楽映画として昇華した「パトレイバーTHE MOVIE」に対し、ロボを脇に押井イズムで突っ走った「パトレイバー2THE MOVIE」とは、そんな巨大ロボに対する幻想の差異が現れたのかもしれない。

映画が終わって帰り、子供がお父さんに
子「ロボット全然動かなかったのー」
父「そうだねー最後だけだったねー」
とかなんとか。
子供よ、ロボットが活躍し世界を救う物語は他で見なさい。

3.ヘリのドッグファイト

やはりこれに尽きるかと。
どうしてもレイバーvsヘリ、という構図で見る人が多いんですが、ヘリとレイバーがまともにやって勝てるわけありません。
戦車だってヘリが天敵、戦車以下の装甲しかなく火力にも安定性にも劣るレイバーが戦闘ヘリと戦って勝つなんて砲台として使うしかない→なので終盤の展開になるわけです。

東京の空で繰り広げられるヘリとヘリとの戦い。
これをガッツリやる映画ってなかなかない。

4.象徴を見ましょう

Methods―押井守「パトレイバー2」演出ノート
押井作品には多く、象徴が折り込まれます。
犬、魚、鳥。

 〈鳥〉=言語、精神、神、天使、少女、子ども 

 〈犬〉=仲間・主人を求める者、さすらう者、男

 〈魚〉=本能、夢、無意識、性欲、身体、衝動、暴力、女、母、妻

 この分類を基に押井作品を見直すと、〈鳥〉と〈魚〉が結びついて危機に陥った世界に〈犬〉が現れ〈鳥〉と〈魚〉を分離(除去)して平安を取り戻そうとする、という基本構造が浮かび上がってきます。それが端的な描写として現れたのが、前回の本欄で指摘した「堕胎モチーフ」であり、その陰にはある時期の押井監督が抱えていた家族問題が――ていうかぶっちゃけ「アパートで自分を待つ妻と娘から逃げたい」という願望が塗り込められているんじゃないか、というのが私の妄想的解釈なのです(あーあ、言っちゃった)。
朝日新聞デジタル:「犬・鳥・魚」講座その2 ヒロインは不吉だ - 小原篤のアニマゲ丼 - 映画・音楽・芸能

この象徴を意識しながら観ると、一層面白く見れます。
今回、魚は多く登場します。
そして鳥は出ません。
その代わり、鳥に相当する存在が山ほど出演ます。

5.既視感

機動警察パトレイバー2 the Movie [Blu-ray]
過去策を観ている人は色々な過去作品のパーツが見えます。
この部分を「セルフパロディ」「セルフリメイク」などと言われていますが、事件の中身を見ると随分違うんですよね。
ですから……詳細は解析記事で。
二重写しになったパラレルワールドの物語、それでありながらやはり現代に合わせて中身も変更してある、そういうことです。
パト1と2のミックス、小ネタ満載。

ちなみにジブリ的抱き合うシーンですが……あのカメラの距離が心理的距離なんですよね。
見ればわかると思います。

6.シリーズは観ておいたほうがいいか?

観ておく方がどのキャラがどういった性格かがわかるので当然観ておくことをお勧めしますが、パトレイバーを観ていた人なら「あのキャラはアレだな」と大体わかるので必ずしも見なくても一応見れます。
とはいえやはりシリーズの最後ですから一応幾つかは観ておくほうがいいかと。
初期よりも太田莉菜大活躍のエピソード8「遠距離狙撃8000」や立てこもり事件のエピソード4「野良犬たちの午後」辺りをお勧めしたい。
やはりこのシリーズはカーシャに尽きます……。
THE NEXT GENERATION パトレイバー 分冊版 赤いカーシャ (角川書店単行本)

7.だからって他の押井実写は観てはいけない

「押井守面白かったなー、他のも観てみようかな……」
という奇特なひとが現れるかかもしれないけれど危険です。
止めましょう。

トーキング・ヘッド [DVD]

アングラ芝居好きなら止めやしませんが、エンタメを期待すれば大いに裏切られます。
とりあえずアニメだけにしましょう。
慣れてきてからの実写鑑賞をお勧めします。


観客の年齢層が高いのも印象的。
個人的には、非常に面白かった。
押井氏は真野恵里菜より太田莉菜が好きなのモロバレですね。

誰にでもお勧めはしませんが一部には非常にウケそう。
ネタバレありの解析編でまた。

THE NEXT GENERATION パトレイバー/第1章 [Blu-ray]