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アメリカのドラマと相棒が劣化したたった一つの理由

この記事で述べる内容は、新しいものではありません。
時折「外国では○○なのに日本では××だ」という雑な比較をよく見かけるのですが、環境も歴史も民族も何もかも違う土地の状況と比較し「あちらは正しいこちらは間違っているメソッド」は使いやすいがゆえに多用され、そして雑であるがゆえに正しくありません。

joshi-spa.jp
さて、なぜか相棒とNCISを比較しているこの記事。
なぜこの二本なのかもよくわかりませんが、随分と雑ですね。



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CATVが強いアメリカ

日本でテレビの視聴は、地上波と呼ばれる民放及びNHKなどの公共放送を無料で(NHKを除き)観ることが可能であり、山がちで届かない場所にも中継アンテナを立て、衛星を利用し視聴を可能にしていました。
しかしアメリカは広く電波が届かない環境も多いために、有料のケーブルテレビが発展。
このことからアメリカのテレビは視聴者の多さ、有料であるなどのことからドラマに対する予算も多くなります。

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アメリカドラマの作り方

まずアメリカのドラマの作り方ですが最初に無数のシナリオが書かれます。
一度に数百本のシナリオが書かれ、その中から製作にゴーが出るのは数本から多くで十数本程度。
そして製作された中から選ばれ実際に放送されるのはその中の数本程度。

ですからアメリカのドラマの多くは一話目が「PILOT」になっていますね。
X-ファイルの1話目は、日本では「序章」原題は「Pilot」
ER緊急救命室 1話目、日本では「甘い誘い」原題「Pilot: 24 Hours」

そしてアメリカでの新ドラマの放送は半年のみ。
残り半年はオフシーズンになり各局が再放送に入ります。
これも日本のように年がら年中働いている国民が仕事終わりにテレビをダラダラ観るのと、アメリカのように休みはテレビを見ずに別荘だのなんだの出かけバカンスを楽しむという国民性の違いからこのような「オフシーズンには再放送」という流れができたのかもしれません。

そしてオフシーズン(再放送)の間に打ち切りになるかどうかが決まります。
ですからアメリカのドラマには最終回が無いものが多いわけですね。
中にはキチンと最終回があるものもありますが、そういうものは新作の放送中に打ち切りが決まったので作られる、という場合もあるそうです。

dramanavi.net

CATVの終焉

しかしそんなアメリカのCATVも危機に立たされていて、その相手がオンラインレンタル&ネットストリーミングの最大手ネットフリックスの存在です。
ネットフリックスはCATVより格安でテレビを配信しコンテンツを視聴できるということで急激にユーザーを伸ばしつつあります。
そんな中、ネットフリックスが自社オリジナルでドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」を作ります。


6.4(水)リリース『ハウス・オブ・カード 野望の階段』トレーラー - YouTube

監督にデヴィッド・フィンチャー、主演にケヴィン・スペイシーを迎えアメリカ大統領を目指し覇業を邪魔する相手はことごとく排除する非情の男の物語はWOWOWオリジナルドラマどころのクオリティではなく、予算は一話あたり四億円以上かかっているという噂もあります。
当然のごとく面白い作品になっています。
シーズン3が早く観たいものですが。

以上のようにアメリカのテレビ業界とは視聴者の数、環境などが全く異なりかけられる予算も状況も異なるわけです。
ですからこれらを比較して見せるのはとても恣意的と言わざるをえません。

相棒の終わるとき

相棒 season12 下 (朝日文庫)

さて、以上のようにアメリカのドラマと日本のドラマを比較する時点でお門違いも甚だしいわけで、全部否定もできるのですがとりあえず記事から一つだけ。

(1)動かしてはいけないキャストを動かした

これですね。

相棒のさまざまなキャスト変更に関してあーだこーだ言っているわけですが、それをいうなら2008年の時点で相棒は終わってる。
基本的に相棒メイン以外のキャラは全て飾りですからね。
もしメインのキャストと物語さえ魅力があれば、面白さは変わらない。
(記事主は、はぐれ刑事とでも比較したかったのかもしれないが)

もともと肉体派&頭脳派のバディものというバランスが最初。
ミッチーの頭脳派&頭脳派になり、成宮の若者&老練という相棒に変わり期待したのですが、もう最初の相棒以降は脚本的に杉下とのバディものである必然性がなくなってしまっている。

杉下というキャラは頭脳明晰な正義でありながらも非情。
欠けた情の部分を補うのが相棒の役割になってきた。

それは代々続いていたし、若さで初期は成宮も杉下との差を出していたんですが、いかんせんリア充だったもんですからなんとなく地味になり、若さゆえの暴走もなくなり、脚本的に成宮のキャラを活かしきれないまま例の「ダークナイト」に突っ込んでしまった悲劇。
もう杉下右京というキャラは押井のいうルパンと同じく、キャラとしては死んでる。

今さら声のそっくりさんを使ってまでルパンを見たいというファンの想いも度を過ぎる、とね。それは僕自身「うる星」シリーズで味わったことで、これで終わりだと思って「ビューティフルドリーマー」(84)を作った。どう考えてもあそこで終わってるのに、その後何年も何年も作られ続けて。僕はやっぽり作り手の責任としてどこかで必ず死に場所を見つけてあげるべきだと思ってるんですよ。そうすることで、記憶の中にルパンならルパンが場所を得られるわけで、死んだんだか生きてんだか分かんないゾンビのようにさまよってるキャラクターを見るのは、正直言って作った側としては忍びないですよ。僕自身そういう経験があるからこそ宮さんの思惑をそうと察したわけで、たぶん間違ってないと思う。
 これは大事なことだと思うんだけどね。最終的に実はファンヘの大サービスだと思いますよ。学生の頃や思春期に見たキャラクターといつ訣別したらいいのか。今は大人がアニメのビデオ買っても恥ずかしくない時代だから売れると分かれば作るし、それじゃいつまでたっても死ねない、いつまでたっても卒業できない。これが本当のサービスかと言うと違う気がします。

幻の押井守ルパンは「虚構を盗む」はずだった(押井ルパン資料2)

それがシステムとして生かされ続けている。
基本、一話完結の刑事物の構造は作ろうと思えばどこまででも作れる。
ですからキャラクターの賞味期限が過ぎていても事件さえ新しければ賞味期限をごまかせる。
そのために相棒を変え、手を変え品を変えやりくりしてきた。
杉下というキャラには目指すべきゴールがない。


本来、杉下と亀山のコンビだけが「相棒」
亀山が警察を辞めた、そこから先は「杉下右京の物語」なんですよね。

タイトルは「相棒」だけど、正確には「杉下右京の相棒」
さらに言うなら「神戸尊の相棒」でもないし「甲斐亨の相棒」でもない。
杉下というテクスチャさえ貼り続ければ「相棒」という看板をつけられる。


相棒が劣化した理由に海外のドラマを比較に出し四つも条件を出す必要はない。
単に「亀山&杉下の相棒が解散した時に終わらなかったから」
これだけのこと。
物語のキャラクターには終わるべきときというものがある。


今は「杉下右京の事件簿」が延々と続き、もはや名探偵コナン状態。
大人の事情で生かされ続けている。
劣化も何もトリック自体がもう枯渇しつつあるでしょうに。

今やどうやって終わらせるのか、そして次に続くシリーズを生み出せるか否か。
もしくは「バビロンの黄金伝説」よろしくまだまだ死人に鞭打って働かせるのか。

相棒より「TEAM -警視庁特別犯罪捜査本部」に力を入れりゃあよかったものを……。
これまでにない人間性丸出しのチームによる現場総当たりと無慈悲な天才型管理職という新しさがあったのに。
なんで地味な「臨場」を選んだのか。

TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部 DVD-BOX