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中年独身男がアイドルファンであるということ「ザ・ノンフィクション 中年純情物語 〜地下アイドルに恋して〜」

いつも思うのだけど、フジテレビは「ザ・ノンフィクション」をゴールデンのバラエティの代わりに二時間ぶち抜きで流すくらいの大幅改編やらないと復活できない。
これをこの時間帯で流す勿体無さ。
てか日曜昼に重々しい番組を放送して、日曜の午後を少し鬱にするのやめて。

厳しい「現実」が刺さる。



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地下アイドルの単価

ザ・ノンフィクション 中年純情物語 〜地下アイドルに恋して〜

今回のテーマは「地下アイドルとファン」
テーマの時点で先にぜつぼうしかない。

密着相手は53歳独身エンジニアのきよちゃん。
秋葉原にいる地下アイドル カタモミ女子のファン。
推しメンは、小泉りりあ 23歳

やがて、そんな推しメンりりあの突然の卒業が発表される。
果たしてそのときファンは……という内容。

カタモミ女子は、お店に行くと肩もみをしてくれるアイドルなんだそうで。
地下アイドル……深い。


中でカタモミ女子の店長 時田(プロデューサー)が金勘定するシーンが挟まれる。
仕掛ける側からすれば、これも商売。

CDは、10曲入り3,000円で手売り、握手付き。
チェキの2ショットは1枚500円。
ハーレムチェキと呼ばれる複数の娘と一緒に撮る場合も一人頭500円づつ。
店頭で、個室ブースでカタモミ女子と過ごすには1時間6,995円
肩もみあり。
ブロマイドは原価30円で売価300円。

きよちゃんが自分の誕生日に時間延長して1万8,495円支払うところも描かれる……。
しかもレジは推しメンの小泉りりあ。
この直に払うのが現実。
あくまでも商売。
デートサービスで必ず対面でお金をもらう(お金を介することで虚構と現実の区切りをつける)のにも似てる。

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カタモミ女子の方は、週4回ほど閉店まで店で働いて月収20万前後。
たしかこの金額だと地下アイドルとしてはもらってる方(下には下が……)。

年齢と独身というところをいちいち強調する。
ひとつひとつ単価を見せ、商売としての側面も見せるのが番組の編集意図。
林原めぐみの抑えめのナレーションが非常に上手い。

プロレス

アイドルとファンの間にある「金」という現実とアイドルという「夢」。
これはプロレス。

プロレスは、リングの上での世界とリングの外の現実はわかってる。
メタ的な視点がなきゃプロレスファンはやれない。
わかった上でリングの上で繰り広げられる虚構と現実を楽しんでる。


ファンはステージの上で踊るアイドルを追いかける自分が中年男で独身で、いくら金を突っ込んだって何がどーなるなんて思ってない。
そういう気持ちがあるならキャバ嬢に同額突っ込んでる方がよほど何かしらの見返りがある。
キャバ嬢と客の間には下心含め「現実」しかないが、アイドルとファンには「金」という現実をメタに、「アイドルとして成功する夢を応援するという物語」がファンとアイドルとの関係性の中心になる。
ステージを見ながらそれは虚構と理解し、でもそこに現実もメタに透かして見えてる。
貯金を溶かせばヤバいのはわかってる。
ただただ夢を見続けるだけの若さはない。
アイドルには「売れる」という漠然とした先(ゴール)はあるが、ファンに先はない。

インタビューを受けた38歳独身のファンも

ヤバいですね、何やってんでしょうね
良いんですよ、楽しければ

と答えてる。
自分の姿も状況も見えてる。
その上でアイドルの追っかけをやってる。

現実を一切見ないで夢中になれるほど若くもない。
応援してる今は楽しい。

でも自分がこうやってても、この場が楽しいだけだというのも理解してる。
どんどんいろいろな可能性がなくなっていく、将来に不安だってある。
このまま独身で孤独、親が歳をとり……未来を見てもロクな「現実的な終着点」が待ってない。

若いアイドルファンとは違う。
待ち構える「現実的な終着点」との距離が違う。
だから中年のアイドルファンは哀しい。

中年独身アイドルファンであるということ

「アイドルは夢を売る商売」というけれど。
ファンとの間に共同幻想を作ってそこを共有する。
生理じゃなく思考と感情。

アイドルを好きなのは、下半身じゃなく頭。
だからこそ独身中年の方がプラトニックなアイドルにハマってしまうのかもしれない。
酒がなくたって、サイリウム振ってドーパミンで酔える。

自分では何もできないけど
応援することによって彼女たちがちょっとでも上に行ったりすればいいかなみたいな

きよちゃんが答えてるこの感覚って、仮に娘がいれば注いでた愛情なのかもなーと思える。

アイドルオタのキモさを強調する番組が多い中、冷静さや夢を見続けることのできない現実との折り合いが見せるドキュメント番組としていい感じの構成になってた。

インフォメイト

ちなみにカタモミ女子を卒業した小泉りりあは現在インフォメイトという新アイドルグループに参加しているそうで。
元カタモミ女子が他にも混ざってますな。infomate.info
モラトリアムはまだ続く。
頑張っていただきたいものです。
仮面女子みたいに急に売れる可能性もなくないから……今は何が切っ掛けになるかわからん。

卒業に涙した きよちゃんは、アイドルファンとして復活してるんだろうか。
きよちゃん、いかにもいいひとで。
いい人すぎるんだろうなぁ。


日曜の昼間っから実に業が深い。

「生きること」「楽しむこと」は、何なのかを考えさせられる。
好きなことを進んでも必ずしも先にハッピーエンドがない、あるいはそれがわかっているのに進むしかないからこそ哀しい。


ちなみに赤根京ってカタモミ女子だったのね……そうか、そうか。
なんか。えぇ。

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