今さらハインライン「夏への扉」と光源氏計画

夏への扉

ハインラインの「夏への扉」を読み終わった。
「え?今さら?」「読書家っぽいふりして読んでなかったとかマジで?!」
※石を投げないでください
ミステリクラスタであってもSFクラスタではないので、ドルリーレーンは読んでるけど月は無慈悲な〜は、読んでなかったり、赤い右手の手がかりは読んでても幼年期の終わり読んでないとか、皇帝のかぎタバコ入れは読んでるけど星を継ぐものを読んでな...あ、もういいですか。



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※ネタバレあり
ということで基本の今作を読んでみた。
今さら「すごい名作っすねー!」みたいな感想を書いても今更感が深くなるので、いつものごとく構造的に。

過去と未来と昨日と今日を行ったり来たり

今作を特徴づけるのはコールドスリープとタイムマシンによる時間軸の移動。
多くのタイムマシンものにあるような何百年といったスパンではなく何十年単位。

基本的に物語において「タイムマシン」という記号は、主人公と外界との時間軸をズラす、その文化的差を描くために存在する。
何百年、何千年スパンの場合、異境、異世界を描くため。
タイムマシンであろうが超空間転送装置であろうがワープ航法搭載の宇宙船だろうが、差異はあっても距離が長くなれば異文化、異界とのコンタクトを描くのが主眼。
文化の境界としてタイムマシンという記号が機能したということ。


あらすじを順に追う。


1970年の12月から物語は始まる。
親友に裏切られ会社を奪われたダニィは一度はコールドスリープによって未来へ行こうとするが思いとどまる。
しかしベルとマイルズの手により注射を打たれ、コールドスリープで強制的に未来へ送り込まれる。

→2000年12月13日へ(コールドスリープ)
そしてこの世界で眠っている30年間に起きたことを目の当たりにする。
タイムマシンの存在を知り、再び過去へと戻る。

←1970年5月3日に(タイムマシン)
そしてここから未来から持ち込んだ金を軍資金にして未来に向けての手を打つ。
ここで「未来から見た過去」のハッピーエンドを成立させるべく働く。
護民官ピートを作成し、アラディン自動工業商会を興す。
リッキイに会い、コールドスリープに入るよう指示をする。
そして再び自身もピートとコールドスリープに入る。

→2000年4月29(退院30)日へ(コールドスリープ)


御都合主義的にタイムマシンやコールドスリープがあるだなんて
……というのは違う。

御都合主義ではなく、タイムマシンとコールドスリープありきでこの物語世界がある。
この話は、いわばチート小説。

ダニィは一度未来を見ることでどうなるのかという事実を知った。
その状態で過去へ戻り、あとはお膳立てをするチートプレイ。

面白いのは現代→未来→現代に戻ったのに主人公ダニィは再度未来へ行こうとする。
生まれ育った現代ではなく未来に生きる。
しかし未来で孤独に生きるのは辛い。

どこかで「ダニィはベルらに復讐を〜」云々という書き込み(誤読)を見たのだけれど、ダニィは復讐などは一切していない。
ベルとマイルズは勝手に落ちてゆくので放っておけばいい。
ダニィが行動するのはあくまでも愛するリッキィのためで、そこがロリコンだのなんだのと言われる部分だったりする。
孤独な未来を一緒に過ごす相手として美くしい幼女と……(はぁはぁ。

真性やん。

光源氏計画発動

もともとダニィは、リッキイをどう思っていたか。

リッキイは、サンディアではじめて会った、髪にリボンをつけ大きなかわいいお目々の六つの少女のとき以来、ぼくの”恋人”だったのだ。彼女が大人になったら、かならず”結婚”して、二人でピートの世話をしようと固い約束をしてあった。ぼくはこの約束はゲームのようなものだと思っていた。
(中略)
リッキイは確かにいい子だった。お転婆でもないおしゃべりでもない、ずかずか膝の上にあがってくるがさつな神経も持っていなかった。ぼくらは大の親友で、二人してピートの面倒をみる共同責任を持っていた。そして、”恋人”ごっこは、そうしたぼくたちの、高級なゲームだったのだ

つまり最初はダニィにとってはかわいい娘であってもやはり結婚だとかいうものは遠い話。

過去から未来へ行き、通常ならそのまま過去に行ってそこで終わる。
なにせ生まれ育ったのは過去の世界なんですから。
ところがこのダ二ィは過去に戻って復讐するわけでも、自身に訪れる危機を回避しようともしない。
どうせ落ち目になる親友と元婚約者の野望は放置して、リッキィの将来に向けての伏線を打つ。

大きな覚醒ポイントは、以下にある。
本来はリッキィを過去に置き去りにしないために、ベルなどの手から救うためだったはずなのに突然リッキィが言う。

「もしあたしがそうしたらーーーそうしたら、あたしをお嫁さんにしてくれる?」
耳に轟々と耳鳴りがし、目に煌々と光が明滅した。

ここで完全に目覚めた。

「あたしをお嫁さんにしてくれる?」
と幼女に言われてもしロリの気がなければ
「そうだねー、そのときリッキィには他に好きな人ができているかもよ」
などと返したろうに、
ダニィは
「はっ?!コールドスリープのライムラグ使ったら光源氏できるやん!」
とシナプスが繋がった模様。
この、この愛しいリッキィと?!!

(*'д`*)ハァハァ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

耳鳴りがして目が明滅するってのはかなりの興奮。

はい、現行犯。
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ということで壮大な光源氏計画こそが「夏への扉」という説に一票投じたい(ネタ)。
面白かった。