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就職浪人とネットカフェの探偵 西尾維新「難民探偵」

読書 ミステリ

難民探偵 (講談社文庫)

就職浪人の窓居証子は、祖母の助言で人気推理作家の叔父・京樹の雑用係として就職活動を続けることに。叔父に持たされた携帯電話に連絡してきた警察は、京樹の友人の根深陽義を保護しているので引き取ってほしいという。警視の肩書きを捨ててネットカフェで暮らす根深によって、証子は殺人事件の捜査に巻き込まれる羽目に。



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西尾維新の作品の中で最も冗長なのが「○○伝」なのは言うまでもないが(なにせ一冊まるまる使ってスタート視点からほぼ移動していない小説を書いたほどで)この難民探偵もなかなかのもの。
語り手は、就職浪人の窓居証子。
大学を卒業したはいいが受ける先受ける先全て落ちてしまい、バイトすら通らない。
ようやく書店のバイトが決まったがその書店も潰れてしまい、いよいよ進退窮まった証子は叔父の作家 京樹を頼ることに。
京樹の豪邸で過ごす中、難民探偵と出会い事件に巻き込まれる。


通常の探偵モノであればワトソンがひとり、探偵がひとりと相場が決まってる。
しかし今作ではややこしくって真田という男がかつての難民探偵のワトソン役で、証子が現在のワトソン役。
さらには証子の叔父の京樹もワトソンなんだかホームズなんだか安楽椅子探偵としてスピンオフが書けそうなキャラとして設定されてるし、なかなか端々鋭い。
その上、難民探偵は(いろいろ経緯があって)己の能力を落とすべく努力した結果、推理が最後まで行き切らずなんとなくダラダラした挙句、ワトソンらを囲んで黒後家蜘蛛の会のように推理談義に突入する始末。

しかもこの本、一冊使って事件は一つですからね。
いかに一つの人物、一つの描写、一つの心理を書き込んでるかよくわかる。
しかも容疑者より捜査する側の方がよほど多い。

容疑者は二人しかいないんだから。

一応シリーズ化できるようになってはいるけど。
続きはあるかなぁ……。
(掟上〜は、いかにもシリーズ化しそうな雰囲気あったが)

「根深さん。働くってなんなんでしょう」
「生きる手段だよ。自己実現の手段でもあるし、世界をよくするための手段かもしれない。まあ色々あるけれど、詰まるところはーーーー手段だ」
手法であり。
手立てだ。
(中略)
「それ自体を目的とするようなものじゃない」