偽りの人生と死 映画「ミスターロンリー」

ミスター・ロンリー [DVD]

ハーモニー・コリン監督による珠玉のラブロマンス。マイケル・ジャクソンとして模倣の人生を送る青年と、マリリン・モンローのそっくりさんとして古城で奇妙な共同生活を送る美女が出会い、本当の“自分”を見付けていく。

※観て欲しいのでネタバレなしで書いてみた




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喜劇王と独裁者

主人公は、マイケル・ジャクソンのそっくりさん芸人。
あるときマリリンモンローのそっくりさんに出会う。
モンローのそっくりさんは、スコットランドの古城に住むモノマネ芸人の共同生活にマイケルを誘う。
そこではチャップリンやエリザベス女王などのそっくりさんがいて……。

監督は「ガンモ」のハーモニー・コリン。
素直なラブストーリーのわけがない。
珠玉のラブロマンス、だと言われて観るとちょっとまずい気がする。
もっとゴリゴリに現実的な暗喩のある話。


マイケルのそっくりさんとモンローのそっくりさんが出会い、マイケルはモンローにほのかな恋心を抱く。
しかしモンローはチャップリンのそっくりさんと結婚していて、チャップリンは独占欲が強い。

ベッドでモンローがチャップリンに
「アナタがときどきチャップリンじゃなく独裁者に見えるの」
という辺りも上手い。


共同生活を送るモノマネ芸人らは“地上最大のショー”と題しモノマネショーを企画する。
しかし辺鄙な田舎の古城で、二流三流のそっくりさんらが「地上最大」と題してショーを企画するのは、かなり皮肉なセンスを感じる。

信じる者は救われる

ところどころ挟まれる逸話。

パナマの難民のためにセスナに乗りジャングルへ支援物資を落とす神父とシスター。
途中、シスターがセスナから落下。
パラシュートもなく落下しながら神に祈るシスター。
そしてシスターはなぜか生還する。
信じる者は救われる。

神に祈りが通じたと歓喜するシスターら。
他のシスターも次々パラシュートなしで飛び降り、やはり傷ひとつなく生還する。
やがてシスターらにバチカンの教皇から謁見の話が持ちかけられる。
飛行機に乗りバチカンへと飛び立つシスター一行。

信仰心と奇跡を描いている逸話の意味するところは何か。

演じながら生きる

描かれているのは演じること、信じること、人生を送ること。
誰しもが何かしらのキャラクターを演じ生きている。
そして誰も死から逃れえない。

本物のマイケルが死ぬように、モンローが死ぬように。
マイケルは、孤独で疎外感を感じている。
誰かと繋がりたい、同じ気持ちをわかり合える相手に出会いたい。
そんな時モンローと出会う。


ハーモニー・コリンという監督は、やはりグロテスクな現実をニヒリズムたっぷりに描いてみせる。
モラトリアムに見えるモノマネ芸人の共同生活すら薄皮一枚。
グロテスクな現実に侵食される。


モンロー役のサマンサ・モートンが秀逸。
ムチムチ体型のモンローで、二流感が出ていて丁度いい。
あんまりグラマーだとよくない。
結婚して子供もいて、人生に疲れ体型も崩れてる。
本物の晩年すら思わせる。

ミスターロンリー

ウイルスに侵された羊は殺処分しなければならない。
働かなければ食えない、不倫肉欲、欺瞞と実際。
死と遺された者の孤独。

ハーモニー・コリン作品としては、かなり見やすい部類。
「KIDS」や「ガンモ」は疲れる、ゴリゴリ精神的に。
偽りの生と死を描いた佳作。
是非一度観て欲しい。

モノマネを演じた当のマイケルやモンローも偽りの人生を演じていたのだろうし、ダブルミーニングも考えると深い。

……ネタバレなしで書くとキツイ。


ミスター・ロンリー(字幕版) - YouTube