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ナイロン100℃ 21th session「すべての犬は天国へ行く」

アイドル

すべての犬は天国へ行く

最近のアイドルは、本格的な舞台や演技を求められるらしく先日のももクロ主演「幕が上がる」では劇団青年団主宰の平田オリザのワークショップで演劇を学び、本広克行の演出で本格的な映画を撮影したり、私立恵比寿中学はシベリア少女鉄道の土屋亮一演出で喜劇「エクストラショットノンホイップキャラメルプディングマキアート」を公演したりもした。
今度は、乃木坂46が舞台をやるとのことであー、またアイドルのホンワカな芝居かなーと思ってたらナイロン100℃の「すべての犬は天国へ行く」をやるというのでずいぶん驚いた。

『すべての犬は天国へ行く』
↑乃木坂版

劇団ナイロン100℃が2001年に女性だけで行った異色西部劇。
これを乃木坂がやるってのはなかなかの冒険。
ひさびさ、ウチにあるDVDを引っ張り出して2001年の公演を見返してみた。




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舞台は、とある娼館。
娼婦たちは男の愚痴を言い、先夜店で暴れた男の主人が謝罪にやってくる。
そこへ持ち込まれる犬の屍体。誰かが犬を撃ち殺したらしい。
街の外から女性ガンマン エルザが訪れ、ビリーに勝負を挑もうとするがビリーもまた街にはいない。


大筋は、ケラの得意な
「小さなコミュニティが狂気により崩壊していく」
話。
この辺は今度ナイロンのオリジナルメンバーで再演する「消失」も同じ構造。

www.cinra.net

このころのナイロンが好きなんすよねぇ……。
街に暮らす女らは、男たちが全員死んでしまった現実を知りながら認めず”男たちは生きているが今はいない”共同幻想の虚構に暮らしている。
知りながら見ないふりで変わらない日常を「演じて」いる。


キャストは峯村リエ、松永玲子や犬山イヌコなどナイロン100℃の女優に加えて戸川純も出演。


戸川純 - Rawhide - YouTube

シリアスな芝居の中で犬山イヌコが演じるガンマンのエルザは、芝居の中で緊張を解く役割を担っている。
街の外からやってくる犬山のエルザは街の共同幻想を理解しつつもそれを幻想だと理解しているしコミュニティの外にいるからそれを口にもできる。
しかし己の追うビリーが生きていると信じたいから幻想を破壊することもできない。
気づけばエルザもコミュニティの中に囚われている。

エルザの存在と犬の死がきっかけとなり、危ういバランスで保たれていたコミュニティはバランスを崩し、一気に崩壊を始める。
積み上がる屍体と銃声、愛欲と流される血と憎しみと幻想。


かなり暴力的な描写が多く、短絡的に銃を撃ち殺す。
舞台は前半後半に分かれていて、大半が死にまくるんだけれど、ナイフで刺し殺すだとか首を絞めて殺すだとか首を切り落とすだとか、女も子供も殺し殺されるわ首を切り離されるわ、なんだが、どーやるんだろうか興味深い。
「アイドル乃木坂46が舞台に挑戦」というには、演目が本格的すぎる気がする。
美保純のところは鳥居みゆきがやるっぽいけれど、ポスターからすると村岡希美のガス役を生駒ちゃんがやるっぽい……痰壷のタンを飲んだりするわけですかね(そういう役なので)。

ナイロン版は何度も見ているので、乃木坂版が観れる機会があれば見比べてみたい。

『すべての犬は天国へ行く』で男たちが無意味な殺し合いにより死滅したとき、それを笑い飛ばし、新しい世界へと転換する契機はありえたはずだ。しかし女たちは男たちの価値観を(カミーラがビリーの服を着るように)そのまま身に纏い、男たちと同様に殺し合う。外から到来し嘘に気づいたエルザには風穴を開けるチャンスがあったはずだが、結局エルザも報復という西部劇の論理から逃れられず、死んでゆく。
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