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無垢な少年が残酷な兵士になる道のり ドラマ「ビースト・オブ・ノーネイション」

これはすごかった。

西アフリカ某所。
中立地帯の村に暮らす少年アグ―。
政府軍と反政府軍NDFの戦いは激しさを増し、やがてアグ―の村も戦禍に巻き込まれる。
村の住人をNDFと思い込んだ政府軍により処刑される村の人びと。
アグ―は独り銃弾を避けたが、目の前で父親と兄を撃ち殺される。

独りジャングルをさまようアグ―。
彼は突如現れた部隊に拘束される。
部隊の多くは、アグーと変わらない少年兵。
指揮官アイアンジャケット。彼はアグーを兵として迎え入れた。




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Netflixが作る作品は規模が違う。
制作総指揮・監督 デヴィッド・フィンチャー×制作総指揮・主演 ケヴィン・スペイシーの政治ドラマ「ハウス・オブ・カード」のときも、そのバジェットの大きさに驚いたが、この「ビースト・オブ・ノーネイション」も劇場映画の規模。
劇場で上映して客が呼べるクオリティ。
WOWOWが造るオリジナルドラマとは予算規模が違う*1

www.netflix.com

監督は「ジェーン・エア」のキャリー・フクナガ。
有名な俳優はアイアンジャケット役のイドリス・エルバくらいのものだけれど(黒人初ボンド役の話はいずこへ……)。

まず日本じゃこの映画はやれない。

アグーは、鉈を手に持たされ拘束され泣き叫ぶ捕虜の前に立たされる。
「そいつを殺せ」
アイアンジャケットに言われるアグーは躊躇する。
が、一気に鉈を振り下ろす。
捕虜の頭骸骨に刺さる鉈。
他の少年兵と共に捕虜が死ぬまで何度も鉈を振り下ろす。
繰り返し、繰り返し。

 “指揮官“はアグーに語る。自分をこんな目に合わせた連中に怒りを感じはしないか。復讐を遂げたくはないか。彼の言葉は禍々しいリズムを伴いながらアグーの憎しみを煽る。そして少年兵たちは忠誠の轟音を響かせる。「最高なるは! 指揮官!」「最高なるは! 指揮官!」。そんな轟音の中で腕を振り上げる“指揮官”。イドリス・エルバが圧倒的な存在感でもってカリスマ性を発露させるその姿は、“指揮官“でありながら“指揮者“のようであり、そして暴力という名のコロスを従えた軍神のようでもある。ここにおいて洗脳とは音の熱狂だ。音楽がアグーを暴力の道へと引きずりこんでいく。
Netflixオリジナルフィルム、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』の衝撃 (リアルサウンド) - Yahoo!ニュース

教師である父親によってキリスト教の教えを受けたアグー。
彼が初めて人を殺し、嘔吐し、しかし時が経つにつれ抵抗なく簡単に引き金を引くようになる。

泥と血にまみれ銃弾が飛び交い、死体が転がる。
どこまでも救いがない戦場の日々。
殺人、暴力、ドラッグ、強姦、幼児性愛。
戦災孤児らの愚連隊で、これら戦争の要素を溢れそうなくらい盛り込む。
吐き気がするくらいクソな展開。


アグー役 アブラハム・アタの演技は素晴らしい。
無垢な少年が戦争により表情が変わっていく過程を演じる。
前半と後半で顔が違う。

イドリス・エルバの演技は、さすがの安定感。
少年らの前で演説し、歌い、煽り、戦意を鼓舞し、操る。
クソなカリスマ指揮官アイアンジャケットの栄枯盛衰を演じ分ける辺りも素晴らしい。
ボンドよりボンドの敵の方が味が出そうなくらいの憎々しさ。

練兵のない少年らが暴力を振るい略奪することを戦争と呼び、暴力と狂気により少年の魂は変質していく。

この作品は、間違いなく一見の価値ありの名作なんだけど、残念ながらNetflix限定なんすよね。
あとは24日に東京国際映画祭で上映するらしい。

2015.tiff-jp.net

Netflixは、今だとテレ東系の「ウレロ」「ゴッドタン」「勇者ヨシヒコ」
オリジナルドラマ「スクリーム」とか11末からはマーベルの「ジェシカジョーンズ」が始まるんで加入もアリかもしれない。
意外とドキュメンタリー映画なんかも多いんですよね。
ウチは、継続してる。


戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった
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*1:とはいえ宮部みゆきの「理由」は監督 大林宣彦で撮影したのでクオリティ高かったけれど