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映画のメタを武器に戦う掘り出し物のB級ホラーコメディ 「ファイナル・ガールズ」


ホラー映画の物語に入り込んで繰り広げられるホラーコメディ。女優の母を亡くしたマックス。3年経ってようやく母の死から立ち直った彼女が、生前の母の映画を見ていると、そのホラー映画の世界に入り込んでしまい…。

期待せずに観たが、これは意外とよかった。
掘り出し物。

ちなみにホラーの割にはスプラッターではないので(基本的にコメディです)血は控えめ。
ホラーが苦手なみなさまにも優しい仕様。
内臓は出ないし、手足がちぎれたりもしない(身体が反対に折れたり、首は飛ぶけれど)。

 



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主人公は「記憶探偵」のタイッサ・ファーミガ。
ちょっと嫌な感じの友人役で何気に「ヴァンパイアダイアリーズ」のニーナ・ドブレフが出てたり。
このキャストだと日本での劇場公開は厳しいか。
 
azanaerunawano5to4.hatenablog.com

タイッサ・ファーミガ演じるマックスの母親は女優。
とはいえ一番有名なのが、80年代に出演した”13日の金曜日”を思わせるようなスラッシャー(ホラー)ムービー。
バンに乗った若者一行が、キャンプ地で殺人犯ビリー(ジェイソンですな)に襲われ次々殺される映画。

ところが母親が交通事故で死亡。
マックスは一人生き残る。

ある時、母親主演のホラー映画を見に行くマックス。
上映中、劇場が火事に。
マックスと友人はスクリーンを切り裂き裏手にある出口へ向かおうとするが光に飲まれ……。
気づくと森の中。
映画で見たのと同じバンに乗った若者らがやってきて、マックスらに道を尋ねる。
 
 

メタ構造

目を覚ますとそこは映画の中の世界。

スクリーンに飛び込み、森の中で主人公らが映画の登場人物らに道を聞かれる。
映画の中の登場人物が目の前に現れ、驚いてボーっとしている間に走り去る→92分後、再びバンが登場しまた道を聞いてくる→92分後、また登場し……というのは、92分で作中作のホラー映画が一旦終わってまた始まってるんですよね、これ。
で、主人公らはヒッチハイクをしてバンに同乗。
殺人の起きるキャンプ場へと向かう。

ここの段階で、この映画がメタ構造だと言うのが提示される。
主人公ら、イレギュラーが映画のストーリーに関わらないなら92分で映画世界は循環してる。
バンに乗り込みキャンプ場へ向かう(メインストーリーに絡む)ことで、この循環から外れる。
(ただ、この92分はこの映画自体の尺でもあるというメタ)
 
この映画の注目点は、いわゆる「スクリーム」でホラー映画のコード(あるある)を踏まえ事件を展開したように、この作品でもホラー映画の”あるある”を踏まえ、さらにメタに展開させる部分。
たとえば森の中でエッチなことをすると殺人犯がやってくるとか、バカなお色気シーンがあるとやってくるだとか、そう言うありがちな展開をあえて仕掛けにして殺人鬼をおびき寄せてみたり、登場人物が過去を語ると回想シーンが侵食してきてみんな過去に飛ばされ白黒になったりもするし、スローモーションシーンはスローであることを自覚してゆっくり動いたり(「こーーれーーーはーーースーーローーーモーーーシーーョーーンーーよーーー!」)。
映画的演出に対し、主人公らの視点が映画の中に入ることで自覚的になってるメタ構造。

通常攻撃では勝てない不死身の殺人鬼相手に映画の知識やコード、演出。
そんなメタを武器に殺人犯ビリーと戦うマックスら。
闘わなければ、スクリーンの外から来た自分たちも殺されてしまう。

最後のタイッサ・ファーミガの鉈アクションもなかなか面白い(急に強くなるのは、映画的主人公属性が付与されるからでしょうね)。
 

母性

とはいえ基本はコメディなので、バカなシーンも多い。
なんだかんだ下ネタも多いし、バカなキャラクターは終始バカなまま死ぬカリカチュアライズされた80年代B級ホラー映画の世界。
主人公らは外の世界からやってきたので映画のバカB級パラダイムの束縛外にいるから正常に判断できているけれども。

とは言えこの作品、単純におバカで終わらせないのが、マックスと母親(の若い頃)との交流。
仲のいい母親と死別し、母に会えるのが映画の中だけ。
そして映画の中に入ったことで、若い頃の母親と出会うマックスはバック・トゥ・ザ・フューチャーなタイムマシン状態。
マックスは、たとえ映画であっても、もう一度母親を死なせたくない。
そして母の方もマックスを知らないけれど、無意識のうちに親しみを感じる。
 
 
大傑作ってわけではないけれど良くできた小品。
観ていなくても問題はないけれど、メタ映画を語るなら観ておくのがいいかもしれない。
タイッサ・ファーミガも欧州っぽい美しさがあっていい感じだし、尺も2時間なくさっくり観れるので損はなし。
コメディの割に、そんなに笑えないと思うが(そういう意味では失敗してる)。
 
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