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ヒトラーが奪った美術品はどこにある? 篠田航一「ナチスの財宝」

ナチスの財宝 (講談社現代新書)

美術館建設の野望を抱いていたヒトラーが、各地で略奪した美術品60万点のうち、現在も未発見のナチス財宝は10万点を数える。今なおトレジャー・ハンターたちを惹きつけてやまない有名な「琥珀の間」や、悲劇の将軍・ロンメルの財宝など「消えた宝」のゆくえを追う、まるで冒険小説のようなルポルタージュ。ナチスと東ドイツの「亡霊」が浮かび上がってくる、教科書や歴史書には載っていないドイツ史がここに―。

「琥珀の間」は有名な財宝伝説。
部屋一面を琥珀で覆い尽くした一大工芸品。
18世紀、ドイツで作られロシアのピョートル大帝に寄贈された。

だが大戦中、ロシアに攻め込んだナチスがそれを奪取。
その後戦火の中で行方知れずになる。
一説では、攻撃を受けた際、火事で燃え尽きたとも言われていた。

しかし1997年、琥珀の間に飾られていた画を売りたいという人物が現れる。
そして調査を行った結果、その画が本物だと判明した。



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ナチスの財宝

ヒトラーやナチス関連本の多くは、ヒトラーの死で幕を下ろす。
しかしこの「ナチスの財宝」はヒトラーの死後、ナチスが各地で略奪した財宝をめぐる物語が展開される。

著者は毎日新聞社の特派員としてドイツに派遣され、隙間時間に「趣味として」各地の財宝に関して取材を行った篠田航一氏。


今日も、たまたまだがこんなニュースが流れていた。
www.gizmodo.jp

今年夏、アマチュアトレジャーハンターたちが「ナチスの隠し財宝を積んだ列車を見つけた」と発表し、特に現地・ポーランドでは大騒ぎになりました。ハンターたちは、ポーランド南部にある鉄道トンネルの中、岩石の下に列車が埋められている証拠をつかんだというのです。その信ぴょう性については当初から賛否ありましたが、科学者たちが検証した結果、残念ながら財宝はなかったようです。

The Guardianによれば、Polish mining academyのJanusz Madej氏は、記者会見で列車の存在を否定しました。彼は「もしそこに列車があるなら、地磁気モデルの変化がもっと大きいはず」だと説明したのです。

以前、ナチスの財宝を乗せた列車が見つかったというニュースがあったが、その続報。
時折こうやってナチスの財宝に関するニュースが流れる。
 
この本では、琥珀の間に関するエピソードに始まり、ナチスのエーリッヒ・コッホが略奪しどこかへ隠した財宝。
さらには戦後、行方をくらましたナチス残党を逃がす闇の組織の話が展開され、ロンメル将軍の部下がユダヤから奪った財宝を隠した逸話とそれを追うトレジャーハンター、そしてオーストリアのトプリッツ湖に沈めた財宝と目撃者の証言などが並んでる。

地続きな財宝

あるとしか言えない―赤城山徳川埋蔵金発掘と激闘の記録
日本でも徳川埋蔵金の探索作業をテレビの特集番組(ギミアブレイク)で放送。
赤城山で稼働するユンボが大量の土を掘り返しヘルメット姿の糸井重里が中継をやっていたことを覚えているひとも多いと思う(今や資金難で探索は止まってるらしいが……)。
参考:@nifty:デイリーポータル:赤城山のその後


徳川埋蔵金とナチスの財宝が大きく違うのは、その証言者がまだ存命なところだろう。
「幼い頃、ナチスが列車に財宝を載せるところを観た」と言う老婆や元SSから直接「ここに財宝を沈めた」と聞いたトレジャーハンターなどがいて、そんなひとびとに著者が取材を行っている。

実際、トプリッツ湖では1959年に新聞社が派遣したダイバーらが湖底から木箱を発見。
引き上げてみるとそこには偽ポンド札が詰まっていたと言う話もある。
これはナチスが偽札を流通させ、英国経済を混乱させようとし頓挫した「ベルンハルト作戦」のものとされているらしい(この偽札作戦は映画化もされている)。

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こうやって証言のあった何かしらが実際に見つかる。
そして財宝も見つかることがある。
徳川埋蔵金よりも現代に時間的に地続きな分、現実的で真実味がある伝説だからこそ信じるひとも多い。

最後に


『黄金のアデーレ 名画の帰還』予告編

ナチスの財宝は、コンテンツにしやすいのかもしれない。

今公開中の「黄金のアデーレ 名画の帰還」もナチスに奪われたクリムトの絵画をめぐる物語。
ナチスから美術品を奪い返すために派遣された連合軍部隊の姿を描き、2014年ジョージ・クルーニー製作・出演で作成された映画「ミケランジェロ・プロジェクト」という作品もあった。


映画『ミケランジェロ・プロジェクト』予告編

そして実際、「黄金のアデーレ 名画の帰還」のように美術商や美術館がひそかに隠している例も発覚している。

www.swissinfo.ch


www.swissinfo.ch

jp.wsj.com
かつて芸術家を志したヒトラーによるヨーロッパの蹂躙とそれに際して行われた美術品略奪。
そしてそのまま行方知れずになった財宝。

それが必ずしも伝説という存在ではないのが、この本でよくわかる。
日本人にあまり馴染みのない「ナチスの財宝」は、なかなか興味深い一冊でした。

つか、徳川埋蔵金……

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