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誰が殺さなかったのか? 小川一水「トネイロ会の非殺人事件」

トネイロ会の非殺人事件 (光文社文庫)

森のペンションに集った十人の男女。恐喝を受けた相手を全員で協力し殺害するが、裏切り者がいることが判明する。殺人に手を下さなかった一人は誰だ?(表題作)。その他、閉鎖された宇宙訓練施設で起こる毒ガス殺人事件(「星風よ、淀みに吹け」)、父の遺言の不審点を調べるうちに、壮大な謎に遭遇する少女の物語(「くばり神の紀」)など、絶妙なトリックの三編を集めた傑作集。

SF作家 小川一水の非SF?系短編集。
中でも突出してミステリ的完成度が高く、表題になっている「トネイロ会の非殺人事件」



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恐喝屋の被害者十人が結託して恐喝屋の殺害を決意。
ペンションの部屋で眠らせた恐喝屋の首に縄をかけ、それを扉の外に吊るす。
十人は、順に水の入ったペットボトルを下げ、首を絞めつける筈だった。
しかし朝になり空のペットボトルがあるのを発見する。
果たして誰が殺さなかったのか?

殺人犯を探すミステリではなく、この作品では殺さなかった裏切り者を探す「非殺人者探し」が展開される。
十人がペンションの別々の部屋に宿泊し、恐喝者の部屋にランダムに向かう。
「果たして何本のペットボトルが下がっていたのか?」
「自分の順番はどのあたりか?」
各人の証言から論理的に状況を組み立てようとすると、浮かび上がる状況は一見奇妙なパズラーになり、混迷の度を深めていくあたりも面白く、単純な(非)犯人当てだけではなく、そこからの展開もあって読み応えもある。

他二編はSF寄りの「くばり神の紀」と訓練中の宇宙飛行士が閉鎖環境下で巻き込まれる殺人事件の謎を扱う「星風よ、淀みに吹け」
正直、表題作と比較すると少し落ちる印象。

小川一水の他SF作品にも、こういったミステリー的要素もあるけれど、ここまでストレートにミステリーの作品は他にあまりないので是非読んでいただきたいところ。

トネイロ会の非殺人事件 (光文社文庫)
光文社 (2015-11-27)
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