第154回芥川賞受賞 本谷有希子「異類婚姻譚」

異類婚姻譚

「ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。」――結婚4年の専業主婦を主人公に、他人同士が一つになる「夫婦」という形式の魔力と違和を、軽妙なユーモアと毒を込めて描く表題作ほか、「藁の夫」など短編3篇を収録。第154回芥川賞受賞作!

KINDLEで予約して、自動でDLされて、気づけば芥川賞を受賞してた。
なので芥川賞受賞直後に作品を読むのはこれが初めて(賞を獲ったから読むということはあまりない)。
単に本谷作品は全て読んでるだけですが。



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本谷有希子というと劇団本谷有希子の主宰であり、映画化もされた「腑抜けども悲しみの愛を見せろ」や「乱暴と待機」などの代表作もある作家の面も持つ。
そんな本谷も2013年、作詞家の御徒町凧と結婚し、執筆もお休みかと思われたが、この短編集の表題作でもある「異類婚姻譚」で第154回芥川龍之介賞受賞を受賞した。

短編は以下。

異類婚姻譚

ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。

表題作。
奥泉光氏の選評にもあるように説話の構造を使った物語。

あるとき自分の顔が夫とそっくりになっていることに気づいた主人公。
しかしこれは近しい関係性であれば起こる現象のようで、お互いの関係性によってそれは異なる。
夫が社会からドロップアウトし、共依存な関係性を持っている妻もまた飲み込まれるように共に落ちていく。

<犬たち>

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こちらはKindleSingle(短編のバラ売り)で発表されていた<この街から>を改稿したもの。
雪山の山荘にこもり多くの犬と暮らす主人公。
あるとき街に降りてみるとそこでは犬が話題になっており……。

地球最後の男とかゾンビ映画的な廃墟感がある作品。
果たして犬とは何なのか。

トモ子のバームクーヘン

コンロの火を弱火にしていたトモ子は、この世界が途中で消されてしまうクイズ番組だということを突然理解した。

こちらは超短編。
主人公は突然、自分たちはずっと前から荒野の真ん中で自動で機械が作り続け、終わることのないクイズを答え続けていることに気づく。
マトリックス的な世界で己が水槽の中で現実の幻想を見せられていることに気づいてしまう感覚というか、夢の中でそれが夢であることを気付いてしまうというか。

藁の夫

藁でできた夫と結婚した主人公。
しかし車に傷をつけたことから夫を構成する藁の隙間から何かが零れ落ちるようになり……。


本谷作品は、これまでも親子や恋人、友人や兄弟などの関係性を描いてきた。
やはり結婚の影響が強いのか、今回は妻と夫をテーマにしたものが多いように感じた。

「藁の夫」は暗喩がわかりやすく、それまで魅力的に見えていた相手だろうが、萎みただの藁束に見えれば火をつけて燃やしたくもなる。
「異類婚姻譚」は説話の形をとって、一つの夫婦の終わりを扱ってる。
せっかく美しい終わり方なのに暗喩を俗っぽい理解で、構造を解体するのはもったいない気がするし、そういう話なのだろうと表面的に読む方が不思議な余韻が残るのでいいのかもしれない。
ちなみに作中、顔のパーツが崩れるシーンがあるんだけれどこのPV↓を連想した。

猫を捨ていく辺りは少し冗長だったんだが、その割に猫を捨てる描写はほとんど描かれないのもなかなか面白い。
猫は何を示してたんでしょうね。
舞台として山が登場するあたり「山月記」を思わせたりも。虎じゃなく山芍薬ですが。

ウチのような独身男より既婚者……特に女性の感想が聞きたい一冊。
(感想記事では、是非言及してください。お待ちしております)

【関連過去記事】
azanaerunawano5to4.hatenablog.com


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