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これからの「音楽」の売り方

bylines.news.yahoo.co.jp

音楽業界にとって一番のお得意様は学生。その学生でも少しずつだが「有料聴取」が減り、「無料聴取」ですらも減少し、無関心層が増加している。

20代も似たような動きだが、30代以降は「無関心(曲聴かず)」はほぼ変わらず、「有料聴取」が漸減し、「無料聴取」はあまり変化が無くむしろ増える属性すらあり、「無関心(無料・既知曲)」が増える動きも示していた。要は手持ちの楽曲のみで満足する「お腹いっぱい現象」が生じていた。しかし2015年では状況が一変、「有料聴取」「無料聴取」が大きく減り、「無関心(曲聴かず)」が急激に増える動きを示している。中堅層以降の音楽離れが一気に加速した感はある。

まぁ、当然ですよね、という。



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ヒットチャート

では、10年前のオリコンチャートをどうぞ。
年間ヒットチャート特集『2006年 年間チャート大発表!』 | ORICON STYLE

1 RealFace KAT-TUN
2 粉雪 レミオロメン ドラマ『1リットルの涙』
3 青春アミーゴ 修二と彰 ドラマ『野ブタ。をプロデュース』
4 抱いてセニョリータ 山下智久 テレビドラマ『クロサギ』
5 SIGNAL KAT-TUN
6 ただ…逢いたくて EXILE
7 しるし Mr.Children ドラマ『14才の母』
8 純恋歌 湘南乃風
9 supernova/カルマ BUMP OF CHICKEN ゲーム「TALES OF THE ABYSS」主題歌
10 タイヨウのうた Kaoru Amane ドラマ『タイヨウのうた』

KAT-TUN強っ。
1位はKAT-TUNのデビュー曲。
デビュー直後のKAT-TUNはタイアップなしで年間トップ。
あとはタイアップ曲が占めてるのがわかる。


Mr.Children「しるし」Music Video

いくら楽曲があってもそれを顧客に届かせるリーチがなければ話にならない。
だからラジオでヘヴィーローテーションになったり、あるいはテレビCMやアニメの主題歌でヒットなんてパターンもあった。

コメントにはJASRACがーなんて声が多いが、JASRACは1939年から存在してる。
今さら音楽離れの責任を「著作権使用料を取ったからだ!」とJASRACだけに負わせる意見は見当が違うし、実際街で流れる音楽で購入するより、テレビなんかのメディアがきっかけになる方が多い。
全商連[全国商工新聞] 店舗のBGMに著作権使用料 500平方メートル以下に一律6000円?

仮想敵としてJASRACは叩きやすいからね。
実際、市場からすればテレビ離れのほうが圧倒的に影響してるでしょうが。


テレビやラジオは、受動的なメディア。
自分から能動的に選ばなくても何かしらの情報が流れる。
そしてテレビ映像には、必ず何かしらの音楽が付いてる。
あまちゃんの「暦の上ではディセンバー」もドラマだから流行ったんでね。


暦の上ではディセンバー / アメ横女学園ᴴᴰ

しかしネットは自分からクリックしなきゃ情報にたどり着かない。
ほとんど音も流れない。
その上、目に入る情報は文字情報が主。

映像メディアがあってもそこの音楽は単なる付け足しでしかない。
ネットでは、音楽はユーザーへのリーチを失ってしまう。

ネットとテレビと

フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)

検索しない検索の時代がもうすぐ訪れるかと思われるが、そのとき、メディアを動かすのはアイデンティティだ。しかし、これと対をなす側面の事実、つまりメデイアがアイデンティティを形成するという問題はまだ十分検討がなされていない
フィルターバブル/イーライ・パリサー

なんと素晴らしい。

テレビみたいなクソメディアによる洗脳によって行われていたプライミング効果*1から開放されている証拠だ!……という人もいるかも知れないが、しかしネットの情報を能動的にユーザーがコントロールしているかといえばそんなこともない。

ネットでは「アナタのお望みの情報」を出すようにできている。
アナタがこれを好むだろう、という情報を、これが売れているからという商品を。
何かを買えば「これを買ったひとはこんなものも買っていますよ?」と勧めてくる。

ニュースアプリの設定でも興味のないニュースジャンルは排除して、興味のあるものだけを見るようにできる。
ガーデニングや化粧品は興味がないから外し、エンタメやアニメ、テクノロジージャンルのニュースだけを見る。
政治はくだらないから見なくていい、でも殺人とか火事とか事件は見ておこう。

でもテレビってのは、つけっぱなしにしてると鰹のたたきの作り方とか、イーグルス来日公演の予告とか、観たことないグラビアアイドルが出てきたり、プロ野球珍プレー好プレーとか、勝新太郎主演のドラマが始まったりする。
そういう自分では望まない情報に触れることで何かしらの知識が増え、興味を持ったりすることも多い。

アマゾンで本を検索すれば欲しい本がすぐに見つかる。
でも書店に行って書棚の前をダラダラ眺めて「あれ?こんなところにこんな本がある?」「え?こんな本あったの??」「お、ゆうきまさみが表紙書いてるな。これ面白そうだな」という出会いも存在する。

テレビというのは、そういう「不意の出会い」を作り出す機能もあった。
しかしネットは不意の出会いを作りづらい。
一定の“趣味嗜好のバイアス”が反映された想定内のフィルターの影響下においての出会いはあるけれど。

同じような「想定内のフィルター」の中ではセレンディピティが起きづらい。
結果、確証バイアスにとらわれてしまう。

テレビっ子だから小学生でも「すきま風」を歌えたんですから。
ひとを愛して~♪

確証バイアスによる心地よさ

確証バイアス(かくしょうバイアス、英: Confirmation bias)とは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。 認知バイアスの一種。
確証バイアス - Wikipedia

自分の趣味嗜好や思想に一致する情報ばかりを見れば、確証バイアスを強めることになる。
自身の考えに沿った情報を認めるのは心地よい。

己の意に沿わない、理解しづらい意見を考え理解しようとするのはとても難しいし苦労が伴う。
ましてや己の考えを批判する意見を理解するなんて拷問に近しい。
人間は楽な己に近い考えだけを吸収しようとする。
見たいものしか見ない心地よいセカイ - あざなえるなわのごとし

「テレビなんざいらないし、メディアなんてなくなってしまえ」という考えでテレビを見ないのは自由だけれど、でもテレビを見ないことでできた時間でネットを見て、気づけば確証バイアスばかりが強くなってしまう。
情報に対する健全さっていうのはある種、様々な情報を観たうえで取捨選択を己で行うことでその能力を持つことなんじゃないのかなと思ったりする。

右寄りのひとは右寄りの意見ばかりを読み、左寄りの人は左寄りの意見ばかりを読む。
そして右は左に、左は右の意見をひたすら否定する。
確証バイアスってのは無意識に働き、思想の偏りを強固にしていく。

アイドルとコンテクスト

で、まぁ、ももクロの話を少し。

最近は違いますが、以前のももクロは露出も少なくて、テレビのレギュラーなんてCSのももクロchanやド深夜の5分コーナーくらいだった。

ファン(モノノフ)は、YOUTUBEでいろいろな動画を見て、ももクロの歴史というか、NHKホールの横で踊っていた路上時代の動画や、これまでの歩みや、早見あかりの脱退エピソードや、山里のラジオに出演し将来は紅白に出てその時早見あかりが司会をして6人のももクロになるんだと全員で涙したとか、そういうリアルタイムで見ていないコンテクストを動画サイトで補った。
コンテクストを知ったうえでライブを見るから泣けるし応援したくなる、という仕組みを作り上げた。
ひと時代前にASAYANでモー娘。がやってた方式をYOUTUBEでやった。
そして成功した。

今やファンは、動画サイトやSNSで情報を追うことが多くなってる。
ネットというツールによってファンとアイドルの間のホットラインが出来上がった。
それがイマドキのアイドルの売り方のひとつ。

コレカラの売り方

これから音楽をどう売るか?というのはなかなか難しい。

LINEが仕掛けてるLINE LIVEなんかもあるが、要はアマチュアではなく既存のプロがユーザーにリーチを持てるメディアを確立して、そこで売っていくしかないんでしょうが。
先日のリリスクみたいに話題になってもそこからファンにまでなるか。
m.huffpost.com

もうテレビ離れは止まらない。
とはいえテレビがなくなるか?というと、そんなこともなさそう。

これだけ普及しこれだけリーチがあるメディアは他に存在しない。
幾らネットが普及しても未だにスマフォやPCの端末では操作が難しい。


ネット発のミュージシャンが(たとえばニコニコでもYoutubeでも)それなりにファンを獲得したうえでデビューして……くらいしかないのかねぇ。ぼくのりりっくぼうよみとかjinmenusagiみたいな?

ミュージシャンがこれまでみたいに食えなくなってきたってのは間違いない。
これから世に出てくるミュージシャンは、自分たちで音源を発表し売り出す手段は増えたけれど、代わりに大ヒットを飛ばすような夢は見づらくなったってことなんだろう。

だから一定のファンを囲いそこで収益を上げるような既存の構造を持ってるところは強い。
ジャニーズみたいに「どの年齢層にも適合したアイドルグループを出せる」とか、AKBみたいに「入れ替えを行うことで常に新しい顔が並ぶ」とか、そういうところは息が長いし、新興は厳しい。
音楽が消えてなくなることはないだろうが、でも大ヒット曲というのはほとんど無くなるんでしょう。
誰かがしかけてもそのリーチが難しい。

ただの素人は趨勢を見守るしかないが。

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*1:あらかじめ何かしらの情報を与えておくことで他の情報が思い出しやすくなる。政治に関するニュースを連続してみせると政治に関しての意識が高くなるなど