「日本映画が面白くない」のは、観客を育てなかった当然の帰結

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日本映画のレベルが低いと言われているらしく。
いや、その通りとしか。

元記事のアダム・トレル氏は日本映画批判をしてるわけじゃなく、中にはいい映画もあるという前提で話してる。
とはいえ「日本映画って面白くないよなー」に対しての反論が「面白いぞ!」じゃない時点で察(ry
頑張ってるのに評価されないなら、それは結果出てないってこと。



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アニメ大国

www.eiren.org

さて、まずこちらの日本映画産業統計のデータを見てみる。
こちら2014年データ。

http://www.eiren.org/toukei/img/eiren_kosyu/data_2014.pdf

作品名興行収入(単位:億円)
1永遠の087.6
2STANDBYMEドラえもん83.8
3るろうに剣心 京都大火編52.2
4テルマエ・ロマエⅡ44.2
5るろうに剣心 伝説の最期編43.5

ベスト10のうち6作品がアニメ。
残りの実写作品も原作はマンガや小説。
次に2013年データ。

http://www.eiren.org/toukei/img/eiren_kosyu/data_2013.pdf

作品名興行収入(単位:億円)
1風立ちぬ120.2
2ONE PIECE FILM Z68.7
3ドラえもん のび太のひみつ道具博物館39.8
4名探偵コナン 絶海の探偵36.3
5真夏の方程式33.1

ジブリ>ワンピース>ドラえもん>コナン>福山雅治

オリジナルタイトル企画では金がでない。
金が出るならそれなりに名のある監督やそれなりに客を呼べる俳優をメインに据えてなきゃならない。

そして子供向けアニメが多いのは当然客が「子供と親」だからですよね。
子供向けアニメは子供プラス親がついてくる。
子供の映画料金が安くても親がついてくるから通常の作品よりも収益がいい。

映画だって商売ですから安定して利益が出る「流行ってるテレビアニメ」「子供向け」ばかりが作られる。
そういうお手軽な利益追求をした結果がランキングに現れる。

脚本か主演か

本来、映画において一番重要な監督や脚本より看板となる俳優が客を呼ぶ大きな要素になってる。
ダメなときは監督のせい。
ウケたときは役者の手柄になることが多いのも面白い。


映画『野火』特報

塚本晋也の「野火」がいくら面白くたって単館で上映されて一部の映画マニアが喜ぶ程度。
この記事を読んでる何人が「六月の蛇」を観て「妻の不貞を写真で撮るフェティッシュな嗜好の夫を演じる神足裕司は、あの雨の中で濡れるハゲた頭がち○この暗喩なんだろうなー」なんて見方をしてるのか、と。

塚本晋也を見ている方がレベルが高いなんてバカなことを言いたいのではなく、塚本晋也のような監督の作品が広く広告を打って宣伝しまくって観客を呼ぶような興業はしない。
そういう映画を一切見ないなら暗喩や演出意図の観方がわからない。
感情を全てセリフにしなきゃあわからない観客ばかりが育ってしまう。
ハリウッド映画みたく大味な作品ばかりでは、無言や暗喩で何かを表現する映画を観る素養が育たない。
だからガス・ヴァン・サントやキム・ギドクを評価するのは映画マニアばかり。

トレンディな俳優や大手アイドル事務所のタレントや抱かれたい男ランキング上位の役者が主演をやってる映画や、ベストセラー小説や大ヒットドラマや大ヒットマンガの映画でしか大規模な宣伝はやらない。
まぁ、宣伝打つ客層を間違えたのが「イノセンス」ですけど。

映画には主題歌が必要だ、とホザいたのは鈴木敏夫です。
 ホンマかいな、といまだに思っています。
「アナと雪のナントカ」の空前の大ヒットを見ても、相変わらずホンマかいなと思ってます。
 映画と歌とはなんのカンケイもありません。
 映画の宣伝とカンケイがあるだけです。
 映画の宣伝は監督の仕事じゃありませんから、監督にとって主題歌なんてものはどうでもよろしい。
(中略)
 映画の宣伝においても、主題歌なんていまどきの話とは思えませんね。
 成功例だけをあげて説得する、その手つきがすでにして詐欺です。
「映画の宣伝には主題歌が必要だ」と言うべきところを「映画には」と巧妙に掏り替える、その手つきが典型的な詐欺の手口です。
押井守の「世界の半分を怒らせる」。第45号

一時期の角川映画、ブロックバスター映画(多額の予算をかけCMを打つような大作映画)指向やトレンディドラマ、ホイチョイの果てに監督ではなく役者だけを推す宣伝が主流になった。
役者を推して宣伝してるんだから観客も役者を観に行く。
演出や物語ではなく。
これはドラマも同じ。

フジにはブロックバスター狙い過ぎてダダ滑りした「パ★テ★オ」という映画があっ(ry

監督・プロデューサー

テレビドラマや邦画って多くが主演俳優らがインタビューを受け映画について語る。
監督やプロデューサーが前に出て語るの作品は、ほんの一部。

知ってる日本の監督の名前を聞いても黒澤明や山田洋次の名前がいまだに出てくる。

せいぜい三池崇史、本広克行、岩井俊二、矢口 史靖、大根仁。
山下敦弘、塚本晋也、犬童一心、吉田大八なんて名前が出てくれば知ってる方じゃないですかね。
日本の観客は多くが監督名じゃなく役者で観に行く。
「ビリギャル」って流行ったけど監督の名前を何人言えるんだろう?*1
「黒崎くんの言いなりになんてならない」の主演はみんな言えるだろうけど監督は誰??*2

福山雅治主演、木村拓哉主演、松本潤主演。

だから宣伝も役者を前に出す。
アニメくらいですよ。原作 or 監督を看板に掲げる。

「宮崎駿監督作品」「押井守監督作品」「庵野秀明監督作品」

アニメの場合、観客がうるさいんですよ。
だから必然的にクオリティが上がらざるを得ない。
幾ら作画が良くても、声優を揃えても演出がダメなら評価されない。
 
 
客を呼べる役者を並べ、少女マンガを映画化するのが近年の日本映画の常とう手段。
・ヒットした原作
・イケメン俳優、美少女

これさえあれば充分。
あとは原作をどんな風に再現するかってところだけ気を付けてればいい。
でもこれは、マンガの二次利用でしかない。


本来、映画において最も重要なのは監督や脚本、プロデューサーの筈なんですよ。
役者を撮るのは監督だし、面白い作品を作るのに金を集めるのはプロデューサーの手腕なんだから。

だから今の日本の映画が面白くないなんざ当然の帰結。

物語や演出を見る観客を育ててこなかった。
ジャンクフードのように美男美女がくっつき別れる物語ばかりを見せ「これが流行っている」とさんざ宣伝した結果そういうものが「面白い」「感動する」と思いこませてしまった。
ジャンクフードを「これが美味しいんだ」と言い続けて売ってきたのに、今さら「だってジャンクは栄養ないやん」と言われても。

日本の空洞化したコンテンツは、どれも見た目重視で構造だけ。
中身がないモノが大半になった。
セカチューのころからとっくに言われてたお話。

「今の日本映画が面白くない」じゃなく正しくは
「数少ない面白い作品すらなくなってしまった」
じゃないかな?

ブロックバスターやイケメン主演映画ばかり観せた観客の市場相手に売り込むから映画の傾向は、当然一方向になる。
スターが来日したらアナウンサーやLiLiCoがギャーギャー騒ぎながらインタビューして持ち上げるばかり。
そーじゃねーよ。
ギレルモ・デルトロとかピーター・ジャクソンにもっと話聞けや。
 
 

日本映画界の残念な状況


映画『新しき世界』予告編

韓国の「新しき世界」がここ数年の映画の中ではトップクラスのクオリティ。
これを越える作品が日本にない。
でも「新しき世界」を観るとかつての日本映画にあったような何かしらのパワーがそこにあるんですよ。
野卑で汚くって荒々しくて、それが剥き出しになってるような。

あと「マッドマックス」もバカで素晴らしかった。
こちらもハリウッド映画か。
日本じゃない。

あぁ、もっと面白い日本映画を多く観たい。
どれもこれも原作モノばかり。
もう少女マンガとドラマの映画化は飽きたよ……。

こんなだから「スターウォーズ エピソード9」に日本人じゃなくドニー・イェンが出演するのも納得してしまう。
(スターウォーズは、黒澤の影響下なのに皮肉ですね)
ホント残念ですよ。

「64 -ロクヨン-」だけ少し期待してるが、はてさて。

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押井言論 2012-2015

押井言論 2012-2015

*1:土井裕泰

*2:月川翔