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はてなブックマーク最後の日

機動警察パトレイバー2 the Movie [Blu-ray]

※はてな向け記事です

序章 萌芽

AM4:30
異変に気付いたのは、都内に住む会社員だった。
40代独身、はてなブックマークのヘビーユーザー。
キレのあるコメントでスターを常に獲得し、ユーザーの間ではそれなりにアカウント名が知れている。

はてなブックマークのアプリを立ち上げホットエントリーを確認するのが毎朝の日課。
今日もアプリを立ち上げ……しかしそこに表示されるタイトルに彼は感違和感を感じた。
……これはいったい?



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はてなは株式上場を果たした。
もはや昔のように一部のギークに好まれるマイナーでダーティなブックマーク共有サービスのイメージを脱却しなければならない。

そんな株式会社はてなの二代目社長栗栖に連絡があったのはその日の昼。
報告を聞いた栗栖は何も語らず、ただ口元を不快そうに歪めた。

決起行動

話は、一週間遡る。
都内某所。

壁に達筆な筆致で筆を走らせた大きな半紙が二枚貼り付けられている。
「第二回 はてブオフ会」
「美しきはてなブックマークを取り戻す会 決起集会」

立錐の余地もないほど部屋に集まった男性らは、それぞれにスマフォやPCを操作し、周囲と会話をする様子はない。
静謐の中、ただ息遣いや咳の音、キーボードの打鍵音だけが響く。

扉が開き一人の男性が入ってきた。
頭には白いヘルメットを被り「はてぶ❤︎」と染め抜かれたハチマキを巻いている。
ミラーサングラス、パーマの髪を撫でつけ、左手にゲバ棒、右手にメガホン。

巨魁 齊藤貴義( id:opensuse )。
はてなユーザーの間ではそれなりに知られためんどくさいひとである。

部屋の端に設えられた演台に昇り、彼はメガホンのスイッチを入れた。
拡声器が必要な空間ではない。
メガホンのハウリングに数人が眉をひそめた。

「諸君、私ははてなブックマークが好きだ」

仮にネットなら「それ少佐の改ざんネタだろ」とコメントもできたが現実世界にコメント機能はなかった。

「しかし今のはてなブックマークはどうだろう?
金儲けの道具としてしか見ないはてなブロガーやクマやスパムに蹂躙され、もはや我々が愛したはてなブックマークはそこにはない。なぜだ?!」

数人「坊やだからさ」と思ったが口には出さない。

「運営は何もしようとはしない。もはやはてなブックマークはインタレストランキングとして機能不全を起こしている。株式上場したはてなにとってもはや旧来的はてなブックマークユーザーなど余計な火種、単なるお荷物でしかない!
諸君!君らはそれでいいのか?!

今日、ここに集った諸君らにオフパコの余地はない!
だが諸君らには確固とした信念と理想がある!
誇り高きユーザーの諸君!

炎上を利用し知名度を上げたちきりんがコメント欄を非表示にして後ろ足で砂をかけたように、はてなもまたユーザーの活動により築きあげたインタレストランクをお荷物のように扱っている!
スパムが横行しようが、ユーザーがフィルターを望もうが、はてブアプリでメタブ機能を希望しようが、もはやかなえられることはない。
彼らの脳には、効率的な撤退戦しか無いのだ!

だからだ!
だからこそ我らの手で引導を渡そう!

ユーザーの手により築き上げられた醜悪なバベルの塔を諸君らの手で打ち崩すのだ!
諸君!我々は一振りの手斧と化そう!

我々を邪魔もの扱いし惰眠を貪るはてな運営を叩き起こすのだ!
id:jkondo を!社長 id:chris4403 に手斧を打ち込むのだ!

はてなの中核をなすインタレストランキングはもはや張り子の虎に過ぎない。
我ら決起軍の手にかかれば善意に基づくハンパなシステムなど容易に陥落する。

諸君!我ら一丸となったユーザーの力を思う存分見せつけてやるのだ!」
 
 

状況

真夜中。
LINEグループに一つのメッセージが投下された。

ただ一言「状況開始」と。


その日、はてなブックマークのホットエントリーは全て“増田”こと はてなanonymusダイアリーで埋め尽くされた。
どの増田にも数百数千のブックマークが付き、一つのタイトルにつき数百の無関係なタグがつけられる。
新着にすら増田が並び、時折一桁のブクマがついたブログが並ぶが、それも新着増田の数に押され流されてしまう。
圧倒的な物量作戦。
次々生み出されブクマされ浮上、どこまでもホットエントリーに立ち並ぶ無数の増田は、決起軍の兵士そのものだった。


はてなブックマークの仕組みは単純だ。

ユーザーは自分の嗜好に応じてコンテンツをブックマークする。
ブックマークが多ければそれは大勢のユーザーが支持しているとして扱う。
ブクマ数に応じホットエントリーとして表示することでインタレストのランキングができあがる。
投票制の人気ランキング。

しかし一つの指向性を持つ集団がブックマークを行えばそんな仕組みは容易に崩壊する。
それが数人や数十人であればシステムも耐えられ、誤差の範囲。

使い方に関しユーザー同士で喧々諤々やっていようが運営が口出しをすることでもない。
仮に悪質ならスパムとして垢BANすることも考えられる。

実際、アクセスを欲しがる業者は年中はてなブックマークを悪用しようと様々な手を使う。
とまれ運営によるスパム対処は実質後手後手だったが。


しかしランキングシステムは盤石。
どれだけスパムが足掻こうが数日しか効果がない。

そう思われていた。
しかし数百、数千のユーザーにより意図的なブックマーク操作が行われればどうなるか?

ユーザーのためのシステムがユーザーの手により混乱に陥る。

それははてなブックマークというインタレストランキングの完全なる崩壊だった。

収束

第二次はてブオフでばら撒かれた騒乱の種は一週間ほどで自然消滅した。

突然取り憑かれたように増田ばかりをブックマークしていた決起軍のはてぶユーザーらは行為に飽きたかのように通常のブックマークへと戻り、一部のはてなユーザーがブックマーク騒乱の裏を記事として書きホットエントリーしていたが、それもはてなではよくある光景。
また騒乱の中で見せしめのごとく幾つかのアカウントが垢BANされたことも決起軍崩壊の一因と言われている。
増田に一致した行動を継続させるほどの求心力は、どこに存在しなかった。

決起軍を指揮し、実質的作戦指導者であった齊藤貴義は行方をくらました。
ツイッターアカウントやブログを消し、増田に書き置きのような記事を残し。

一説には富士の樹海に消えたとも、あるいは株主総会に向かう総会屋と一緒にいたとも、一説にはスポンジボブの手引によりロシアンマフィアの下請けをやっているともいうがどれも真偽定かではない。


決起の目的は騒乱と混乱の生み出す「状況」にこそあった。
はてなブックマークというシステムの脆弱性をつき機能不全「状況」を作り上げる。
脆弱なシステムとそれを使いインタレストランキング機能に希望を見たユーザーらは絶望し決起へと走った。
しかし彼らを受け入れる先はアメブロでもデリシャスでもなく、やはりはてなしかないのだ。

愛すべきはてな。
しかしそのシステムは欺瞞の上に成立している。

この話から学ぶべきことは何一つとしてない。


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【追記】
呼ぶほどのネタでもないので平文でしたがリクエストありましたのでidコール込みにしました。
はてなでのお茶会お待ちしております(いや、お茶が出なくてキレるのやりたい)