ファンでなくても楽しめる次世代の正統な続編 映画「スターウォーズ/フォースの覚醒」


砂漠の惑星で家族を待ち続けている孤独な女性レイは、謎のドロイドBB-8とストームトルーパーの脱走兵フィンと出会い運命が一変する。一方、十字型のライトセーバーを操るカイロ・レンに率いられた帝国軍の残党であるファースト・オーダーは、消えたとされる最後のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの行方を追っていた。銀河に新たな脅威が迫る中、レイたちはハン・ソロとチューバッカに出会う。

ようやく観た。
よくできたファンムービー。
丁寧で完成度の高い作品。



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親と子

千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
スター・ウォーズは、親子の物語であり父殺しの物語。
スターウォーズで用いられる子による親殺しのモティーフは有名で、今作でも盛り込まれている。
そして親と子の継承も持ち込まれたテーマの1つ。

この文脈に照らしても、「父殺し」とは、ひとつの権威に対する革命、あるいは体制の破壊です。神話においてそれは、万物の創造主たる神に対する反逆とイコールになるでしょう。どの国の法律でも、国家反逆罪、国家転覆(てんぷく)罪は大罪です。革命は成功すればいいですが、失敗すれば自分の命はありません。ですから、神々によってつくられたタブーを破る者、たとえば火を盗み出したプロメテウスには、途方もない罰が与えられます。
(中略)
『スター・ウォーズ』において、息子のおかげで善の心を取り戻した父は絶体絶命の息子を助けて皇帝を殺し、みずからも死にます。息子が父を乗り越える、という形の典型的な関係です。
神話とギリシア悲劇からみる「父殺し」の普遍性 | NHKテキストビュー

ジョージ・ルーカスは、世界各国の英雄譚を調べた「千の顔を持つ英雄」著者ジョーゼフ・キャンベルの講演を聞き、感銘を受けてスターウォーズに英雄譚の構造を盛り込んだのは有名。
親殺しモティーフも当然神話から。


時間が経てば物語の世界は変わり、次世代へと受け継がれなきゃあならない。
なにせスター・ウォーズ一作目は1977年(日本公開は翌78年)だからもう38年経ってる。
ルーク・スカイウォーカーを演じるマーク・ハミルはもう64歳ですからね……。

ちなみに次世代へ受け継がなかったのがドラゴンボール。
主人公の悟空は死んでも死なずに生き返り、悟飯や悟天に引き継がれずに物語が続いたがあれは特殊例。
なにせ死なないしどこかに旅立ちもしない……。


親から子へ、旧作から今作へ。
それを繋ぐのが、ライトセイバー。
キーアイテムとして各所に登場する。


続編が作られ、いろいろな大人の事情で主人公が次世代に変わる。
しかし全く主人公や登場人物が大幅に変更されてしまうと、観客からすれば「こいつ誰やねん」と戸惑いを生む。

今作ではきちんと旧作の登場人物が登場し、今作へと継承が行われる。
ハン・ソロの横にレイが座り、コパイロットとして実力を示すのもそのひとつ。

過去作を思わせるシーンが盛り込まれ、新シリーズを担う登場人物に旧シリーズの登場人物がこれからを託す。
インディージョンズへのオマージュまで入ってるなんて。
この過程を見せることで観客はこの物語が監督が変わっても地続きであることを実感し、素直に物語に入り込むことができる。

ファンタジー

スター・ウォーズがSFか否かなんてヤボな話ですが、明確にS・ファンタジー寄り。
何に一番近いかと言われればROL辺り。

自然の多さ。
砂漠、緑、森林、降雪地帯。

有意的な自然を舞台に未来っぽい機械を組み込むのがスターウォーズの世界観。
無機質な機械に満たされた空間が悪の象徴、帝国 ニューオーダー。
SFってのは「無機質な世界に有機的なものを仕込む」んですけどね。
スターウォーズの未来の方が、現代の日本の都会より自然が多いんだから。

フォースなんて、充分に発達した科学技術は、魔法と云々。
ファンタジーだからこそ継承に剣が用いられる。

クオリティの高さと粗さ

にしても最後の作戦で完全に劣勢な反乱軍を救おうと爆弾仕掛けに行くシーンがありますが、明らかに計画ミスだろとか、潜入させるならもっとそっちにリソース裂けばよかったんじゃあとか言うツッコミは禁止。
成功の目がない、たまたまがいい方に転がり上手く行った作戦だなー。
フォースの導きでいきあたりばったりで勝てるなら、計画立案の必要性……。

キチンと伝統のボーイ・ミーツ・ガールもあり、継承も行われ、旧作のファンも納得。
大きな仕掛けは、旧作のデススター破壊をなぞるクライマックス。

ひとつ気になったのはハン・ソロの船に乗り込んでくるカンジクラブの取り立て屋メンツが明らかに「ザ・レイド」コンビなのにアクション一切無しで怪物に追い回されるだけってのが勿体無い。
メチャメチャ動けるのに(でも怪物と格闘すると話がブレるから難しい)。

ちなみに今年12月に公開されるスピンオフ「ローグワン」には、アクション俳優ドニー・イェンが出演。
棍術を披露。

マッツ・ミケルセン、フォレスト・ウィテカー……。
これも面白そうな。


タイトル頼りにならない隅々まで考えこまれたシナリオもさすが。
スターウォーズという大きなシリーズを受け止めるだけのクオリティが確保されてる。
エンタメとしてもよくできてる。
ファンでなくても満足感がとても高い一作。