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アイルランド紛争とゾンビ 映画「28週後…」

「トレインスポッティング」のコンビ、ダニー・ボイル×ロバート・カーライルが放つバイオ系サバイバル・ホラー ウイルス発生から28日後:英国全土汚染。5週後:最後の感染者死亡。24週後:復興計画開始。 恐るべき新種ウイルス“RAGE(レイジ)”の発生から28週後のロンドン。難を逃れたタミーとアンディの姉弟も帰国し、父親との再会を果たす。軍の監視を逃れて我が家へ行くと、死亡したはずの母が生きていた。彼女がウイルスに感染しながらも発病していないキャリアだと判明、ワクチン開発への期待が膨らむが・・・。

ゾンビ映画の歴史の中で名作と呼ばれるものがいくつかある。
ダニー・ボイル監督「28日後…」もそのひとつだが、その続編となるこの「28週後…」はそこまで評判がよくない。



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ベルファスト

ところで「28週後…」を観ながら「ベルファスト71」を思い出した。

アイルランド紛争只中のベルファストを舞台にSASの隊員がIRAに追われる作品だが、まるで「28日後」や「28週後」のゾンビウイルス……レイジ(怒り)感染者に追われるのと同じような光景が描かれている。

ダニー・ボイル自身、アイルランドのワーキングクラス出身。
この作品ではメガホンを取っていないけれど(製作総指揮)、そういったダニー・ボイルの出自が色濃く影響しているように感じるのは気のせいではないだろう。
ゾンビはベトナム戦争や病んだアメリカが暗喩として描かれているが、走り回るRAGEはゾンビと違い怒りに狂ったアイルランドのワーキングクラスの群衆にも見える。


アイルランドを統治するのは、英軍ではなく米軍。
やがて死滅したはずのウイルスは再び活動を始め「怒り」が感染していく。
最初は患者だけを撃ち殺していた米軍は途中から誰かれ構わず全てを撃ち殺そうとする。
テロリストだろうが市民だろうが、構わず撃ち殺すのにも似て。

崩壊家庭と暴力

ロバート・カーライル演じるドンは臆病な男で、騒乱の最中、保菌者に襲われる妻を見捨てて独り逃亡する。
そして海外から帰った息子と娘に妻を救えなかったことは仕方がなかったんだと嘘をつく。
ところが妻は感染しながらも抗体があったせいか人間として生きていた。

ドンは妻に謝罪しようとストレッチャーで眠る妻の元へ行く。
そしてウイルスに感染し、妻を素手で殺す。
しかし夫が感染しても妻は慌てることもなく黙って見ている。
自身が保菌者であり、復讐として感染させることも計算していたのかもしれない。

このあとドンは、ひたすら自分の息子と娘を追う。
通常、ゾンビのような存在は特定の何かを狙うこともないはずだが、ドンの場合感染者を増やしながらも息子と娘を殺そうと追いかけ続ける。
この辺り、ドメスティックバイオレンスだと思えば必然的な構図で、父親の暴力で母親が死に、姉弟を父親が追い、最終的に逆撃に合う、とわかりやすい。

最後に

「28週後…」はアイルランドの一つの家庭が「怒り」により壊れ、そして英国も「怒り」により壊れるシニカルな話と捉えればまたひとつ面白く観れるんじゃないだろうか。

イージーな連想だが意外と触れている記事を見ないのであえて書いてみた。


ちなみに米軍の准将役として「パシフィック・リム」の司令官役や「刑事ジョンルーサー」イドリス・エルバが演じていたり、スナイパーとして「アベンジャーズ」ホークアイ役のジェレミー・レナーが演じていたり、このあと大きな役を得る俳優が揃っているのも面白い。

アマゾンプライムで無料対象なので時間があればどうぞ。
もちろん前作「28日後…」のほうが数倍面白いが(「28日後…」もプライム無料対象)。

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