音響技師の煉獄 映画「バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所」

ホラー映画の音響効果スタジオで働く男が自身の狂気を発見していくアイデンティティ崩壊ホラー。ホラー映画の巨匠監督に雇われた音響技師・ギルデロイ。彼は日々残虐なシーンに触れていく中で、残虐性に目覚めていく。 トビー・ジョーンズ主演。

※夏のホラー月間

いわゆるデヴィッド・リンチ的狂気を目指したが、行き着くことが出来なかった作品。
単純に「音響技師が狂っていく映画」としか観ないとさらに面白くない。



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音響効果

イギリス人の音響技師がイタリアのB級ホラー監督(ダリオ・アルジェント的な)に呼ばれ、スタジオでアフレコに励む。
人を斬る音ではキャベツに包丁を刺し、頭が潰れる音にはかぼちゃを床に投げつける。
しかし過酷な労働の中、音響技師の精神は徐々に崩壊していく……という話。

この音響効果の裏方の話はなかなか面白い。
野菜を刺したりぶつけたりして音を出すことが多いらしい。
しかしせっかく腕をふるうのも、魔女が拷問されるホラー映画だそうで、悲鳴とか肉を切り裂くとか肉が焼けるとか、ろくなシチュエーションがない。

暗喩

これをあえて深読みしてみる。

そもそもこの技師は果たしてどこにいたのか。

どの映画評も「イギリスの技師がイタリアのスタジオで仕事に追われ追い詰められ狂っていく」というブラック社畜な物語だと書いているんだけれども、その割にイタリアの町並みなどは一切現れず。
自室と録音スタジオしか映画には登場しない。

だからこれは、地獄なのではないかな、と。
以下、ネタバレですが、ネタバレ気にするほどの映画でもないと……。


主人公の技師は、死んだ。
そして気づけばスタジオに。

経理に「交通費をくれ」と電話し、経費を請求するが払ってもらえない。
何度もせっつくが梨のつぶて。
ついには「乗ってきた飛行機なんて存在しない(だから交通費は払えない)」と言い出す。

経理の言う「そんな飛行機は存在しない」というセリフは、主人公が狂っているわけではなく、そんな飛行機は本当に存在しないからじゃないのか?と。

「技師が狂っているから存在しない飛行機でやってきた」というのは技師の狂気を示すための要素としてはおかしい。
それであれば「ろくな仕事をしないんだから払えるか!」でもいいはずで「乗ったはずの飛行機が存在しない」とまで言う必要はない。
つまり飛行機に乗っていない(確かに移動のシーンはない)のであれば「ここがイタリアだとは限らない」ことを示してる。
もしくはその飛行機が落ちた可能性すらある。

狂っっていることにすればどれだけ整合性がとれなくてもいい、というわけではない。
狂っているならそれなりの整合性のズレが有る。

そして悲鳴をあげるアフレコ役の女性がやってきて、技師の母親が手紙に書いているのと同じことを話し始める。
しかし母親の手紙の内容は母親と自分以外には知らないはず。
ましてやイタリアでは。

これは虚構と現実の区別がつかなくなって……と書いてある記事が多いんだけれど腑に落ちない。

技師の思考が漏れている、もしくはこの映画世界自体が技師の頭のなかの世界である
→現実の技師はイタリアのスタジオには存在しない。
→映画内の世界は実際の存在すら怪しい。

つまり技師の死後に観る地獄巡り(煉獄)がこの映画の暗喩ではないのかな、と深読みしてみましたが。
自己解釈なので合ってるかどうかは定かではありませんが。

HULUでも観れるのでものすごくヒマな方はどうぞ。
そうでないなら「イットフォローズ」をオススメしますよ。
アレは深読みしがいがある。