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1%が踊り99%が転ぶ 映画「マネーショート 華麗なる大逆転」

実話に基づき、4人のアウトサイダーを描いた物語。大手銀行、メディア、政府が否定した世界経済の破綻を予見した男たちによる大胆な投資は、銀行のいかがわしい闇を浮かび上がらせた。そこには人間も物も、何もかも信じられない世界があった。

マイケル・ルイス原作。
原作を読んでから観たので何の引っ掛かりも感じなかったけれど、経済用語はかなり出てくる。



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逆張り

まず映画の前段階としてアメリカのITバブルがある。

アメリカでは2000年頃、多くのベンチャー企業が生み出されたITバブルが弾けた。
この反動でFRBのアラン・グリーンスパン議長(当時)は、短期金利を1%まで下げる。

金利が下がることでこれまで住宅には手が届かなかった低所得者にも住宅を手に入れる手段ができることになる。
これがいわゆるサブプライム(低所得者向け)ローン。
これによってバブルがやってくるYahYahYah。
 
 
映画は、ここからスタート。

中身が空っぽでいつ弾けてもおかしくない証券化されたサブプライムモーゲージ(低所得者向け住宅ローン)に格付け機関が中身も精査せずにAAAやAAで格付け。
それに対し投資家がたかり、いわゆるバブルを迎えた。そして2007年頃からそんなサブプライムローンの利用者が焦げ付き始める。
低所得者がローンで金を借りて家を買うから住宅価格も上がる。
バブル終盤にはCDO(ゴミ商品に幾つかのAAAの商品をくっつけてAAAに見せかけた合成金融商品)などというキメラまで市場に登場。

循環が止まれば当然住宅が余り始める。
ローンは焦げ付き、買い手のいない家は廃墟になり、AAAやAAに見える債権も実際はゴミ。

そんなバブルの最中、市場の崩壊を見抜き、市場の逆に張ったごく一部の人々を描いた作品。
ウォール街がバブルに踊る中、逆行する人々の姿はまるでモーセのようで、特にクリスチャン・ベール演じるマイケル・バーリは投資家が資金を引き上げ、突き上げ相手に苦心惨憺しながらも逆張りを続ける。

フィクション/ノンフィクション

世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)

原作は、マイケル・ルイスのノンフィクション「世紀の空売り」
実際の人物にインタビューし作品に再構築してる。

この情報過多で専門用語満載なマイケル・ルイスの原作をどうやって映画化するのかとおもいきや、結構そのまんまやってるんで、これはこれで驚く。
一応わかりやすく劇中にはなぜかストーリーには関係ないセクシー系の女性が泡風呂でシャンパンを飲みながら金融用語を解説してくれたり、あるいはシェフやあるいは行動経済学者なども登場し噛み砕いて観客に説明してくれる。

完全にフィクションにはなりきらず、一部ではスクリーンの向の観客を意識したシークエンスがあったり、上記のような説明的なパートがあったり、原作ではたっぷり描いているところをなにせ二時間に詰め込まなきゃあならないのでかなり端折ってはいるが、それでも各人がどのようにこの「世紀の空売り」に参入したのかはわかるように出来てる。
 
 

金融に踊る

サブプライムを背景にした映画はいくつかあって、まずドキュメンタリー「インサイド・ジョブ」

こいつを観ると99%と1%の経済格差が当たり前なのがよく分かるし、バブルが弾けて自己破産したはずのトランプが大統領選に出ているのも理解できる。アメリカというのは上流階級に一度入れば落ちても這い上がれるが、それ以外のところでは二度と上がることは出来ない仕組みになってる。
まぁ、アメリカに限ったことじゃあないが。

azanaerunawano5to4.hatenablog.com

もうひとつ「キャピタリズム マネーは踊る」
こちらは、ハリセンはるなでお馴染みマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー。

こっちも露骨にアンチ1%批判な作品。
突撃取材とか懐かしいな……。

さらに「ドリームホーム 99%を操る男たち」
こちらはいわゆるサブプライムの影響で家を失った主人公が家を売る側に回り、その黒い闇と向き合うお話。
「マネーショート」のあとを描いた映画。

 
 

グローバリズム

たしかに、サブプライム住宅ローンとデリバティブの市場は、グリーンスパン氏の演説から約2年後までには、投機的な崩壊は始まっていなかった。しかし、全ての兆候は、2005年時点で見られていた。それは、バブルの崩壊を、悲惨な結果を招かないように十分に抑制できるタイミングであり、政府が破綻を極小化できるタイミングであった。

(中略)

このような状況になる必要は無かった。だからこそ、危機を予測した者の分析が、考えも無く却下される理由は無いのだ。グリーンスパン氏は、彼の豊富な知識と卓越した政府の知識を使って、彼と他の政府高官がどのように舵取りを誤ったのかを、確かめて十分に説明すべきだ。もし、これらの失敗が適切に明らかになれば、これらの結果が、議会による銀行規制の改善に活かされ、将来のFRB議長が同じ過ちに陥る事を防ぐのだ。(2010年4月3日 ニューヨークタイムズ電子版)
「サブプライム問題」はグリーンスパンFRB議長のITバブルの救済から - るいネット

「マネーショート」を観て学べることは何か。

資本主義の危うさや、バブルの危険性か。
それとも1%の人々が踊り転べんだとしても、損をするのは99%の人々だということか。

ブラッド・ピット演じる銀行家ベンが英国のパブで電話取引をするシーンがある。
英国は長らくの不況、パブで昼間っから酒を飲むオッサンの姿がある。
その横ではノートPCを開いて数千万ドルの取引をする銀行家。

英国はEUから離脱することを決め、その影響はこれから広まって行くことになる。
影響を限定的にしようとも既に世界経済は繋がってしまっている。

ギリシャの危機があり、お次は英国のEU離脱。
おかげで次のスペインでは左派ポデモスではなく保守に票が集まったようですし、日本も自民党が安定して強かった。
野党がアレでは票が集まらないのもむべなるかなですが(別に日本会議云々ではなくても……ユダヤの陰謀みたいだわ)。

お次は何が待ち構えているやら。
 
 
普通の映画だと最後はハッピーエンドなわけだけれど、先にあるのは主人公らの勝利と世界に影響する大不況。
儲けたといって喜べるかどうかというのもなかなか難しいし、単にCDS(債権に対する逆張り)で儲けるのはあまりカタルシスとして大きくない。
どう転んでもバッドエンド。
エンタメ的な爽快感を求めても難しい。

「マネーショート 華麗なる大逆転」
映画会社としては、見当はずれの「華麗なる大逆転」なんてワードでも、こう付けざるを得なかったんだろう。
 
大変面白かった。
あまり経済強くないひとはまず先に挙げたドキュメンタリーを見てからのほうがいいかも。 

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