読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

残虐ホラーの得意なパスカル・ロジェ監督なのにマトモすぎなサスペンス・ミステリー 映画「トールマン」

神隠しか、悪魔のいたずらか。死の町に忍び寄る子取り鬼”トールマン”。『マーターズ』のパスカル・ロジェ監督が、世界各地で頻発する幼児失踪事件を題材に描いた衝撃作!!

「この結末は映画の歴史をを変える」とか「マーターズを超える衝撃」とかそういうハードルのあげ方はこの映画の損になるだけだと思うんだが。
Netflixで配信していたんだけれど、なにせマジ○チホラー「マーターズ」を監督したパスカル・ロジェだけにこんなものを配信して大丈夫かと思ったがまったくもって大丈夫だった。

厳密に言えばホラーでもなく、残酷なシーンも特にない。
サスペンス・ミステリーじゃないだろうか。

あと映画の歴史も変えない。



【スポンサーリンク】



失踪事件

とある田舎町で子供の連続失踪事件が起きている。
町は炭鉱の閉鎖によって活気を失い、住人は子供の失踪事件によってさらに陰鬱に沈む。

そんな町に住む看護婦のジュリア。
ある時家に帰ると自宅から子供を連れ去ろうとする謎の人物を見つけ、彼女は必死で追いかける。
運転席に入り込みもみ合う中、車は横転。
しかしそのまま子供は連れ去られてしまう。

翌日、警察が近辺の捜査に向かうが子供は見つからなかった……。


……と言った感じなので残酷なシーンはない。
ホラーが苦手でも観れる。


以下は、ネタバレで。

トリック

この作はをミステリとして考えれば、映像トリックの一種であるといえる。

→テロップ、全米で疾走する子供のデータが提示される
→洞窟。FBIと警察が捜査しているが子供は見つからない
→顔に怪我を負い、治療を受けているジュリア
→そこへやってくるFBI「見つからない、他の子どもたちも」

冒頭、このようにシーンが並んでいる。
そして時間を36時間遡り、ジュリアがどんな経験をしたかが時系列で描かれる。
当然、観客は「ジュリアが事件に巻き込まれ怪我をした被害者」と考える。
子供がトールマンに連れさらわれ、必死で追いかけるジュリアを見ても善悪は確定してる。
そしてダイナーに行き、住人らがジュリアを追いかけ始めると今度は町の住人らを悪党に見せる演出。
観客に「住人ぐるみの犯行か」と思わせる。

しかし実際は誘拐犯側はジュリアであって善悪で言うなら善が住人で悪はジュリアなわけで。
ところがこの映画、それでは終わらない。

さらに娘が自分からトールマンについて行き新たな人生を歩む。
娘はドメスティックバイオレンスな町の生活よりも新たな都会の暮らしを選ぶ。
ジュリアの所属する“組織”の目的である「毒親から子供を切り離し毒親が将来の毒親を育てる循環を止める」を考えるなら組織の行動は「正義」とも受け取れる。

日本であれば、子供に暴力を振るっていれば親から引き離すこともある。
親が親の資格を持っているとは限らない。

しかし寂れた町で育つ子供は、どれだけ劣悪な環境と毒親であろうとそれを受け入れ育つしかない。
酒を飲み妻や子に暴力を振るう夫、それを受け入れる妻。
毒親は将来、毒親になる子供を育てる。
そしてその子供が大きくなり毒親となりまた子供に暴力を振るい……。

この映画で行おうとしたのは、映像により認識を錯誤させ、さらに観客の善悪観を揺さぶる。
果たして正しさは何か?
親は産みの親であるというだけで親であっていいのか?
子供にそれを選ぶ権利はないのか?


なにせパスカル・ロジェだけに「マーターズ」みたいなキ○ガイ鬼畜組織が出てくるかと思いきや。
そこも含めてトリックだとしたらそれはそれですごい。

【関連過去記事】
azanaerunawano5to4.hatenablog.com


トールマン(続・死ぬまでにこれは観ろ!) [Blu-ray]
キングレコード (2015-08-05)
売り上げランキング: 31,789