メタデータを制するものが現代の政治を制す 小口日出彦「情報参謀」

情報参謀 (講談社現代新書)

これが新時代の情報戦だ! 2009年の下野からわずか4年で政権を奪還した自民党。その水面下では、テレビとネットのメタデータを縦横無尽に駆使した政治情勢分析会議が行われていた。1461日間、自民党をデータ分析で導いた人物が初めて明かす、政権奪還の深層に迫る。



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大敗とメタデータ

私は、自民党が大敗して政権を失った2009年夏の総選挙直後から、2013年夏の参議院選挙に勝利して政権を完全に奪還するまでの4年間、同党の「情報参謀」を務めた。
はじめに

インターネットやSNSの急速な発展と共に重要性を増した情報。
ネットやメディアなどのビッグデータを収集、分類、解析することによって情報をコントロールしようとする動きは、政治に関して遅かった。

著者の小口氏は、元・日経ベンチャー編集長、株式会社パースペクティブ・メディア代表取締役社長。
小口氏は、民主党に大敗し野党になった自民党の情報分析を担当。
ネットやメディアのデータを元に自民党のメディア露出や発言、選挙などへの提言を行う情報部門を指揮した。

もちろん民主党→自民党への政権交代は、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震への対応を含む民衆党のあまりのグダグダっぷりに民心が離れたという側面が強くはあるけれど、氏らの情報分析やそれに基づくネット戦略の効果も多分にあったろう。

「我々はテレビで何が報道されているか、インターネットで何が語られているかにか関する情報をすべてデータベース化して持っています。今夏の総選挙では、そのデータを基に全国300小選挙区の候補者の得票数を予測し、毎日更新して発表しました。選挙戦中日の集計では新聞や通信社の世論調査に引けを取らぬ予想を叩き出し、最終的中率は80.33%に達しました。
(中略)
こうした分析は、政党名や候補者名のテレビ報道における露出量やネットのブログや掲示板での書き込み量から導き出されます。その量を計る基本要素がメタデータと言いまして……」
第1フェーズ 野党転落 ――報道分析から復活への手がかり

たとえば自民党のホームページを観ると公式の動画サイトがある。
動画チャンネル | 自民党の活動 | 自由民主党

CafeStaは、自由民主党本部一階にある喫茶店の特設スタジオから毎日放送。
議員が登場し、テレビなどと違いノーカットで放送され、24時間生放送という企画を行ったりもしている。
こういったネット動画チャンネルのように送り手から受け手へ(テレビなどを介さず)直接情報を送れる手段こそネットの強みであり、直接伝わってしまうからこそツイッターなどSNSで情報を発信する議員がしくじることも多い。
だからこそ今の時代において情報の分析や発信のコントロールは必須とも言える。

民主党と震災と

民主党―野望と野合のメカニズム―(新潮新書)
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震災以降の動きは、めまぐるしかった。

野党に落ち、テレビなどメディアへの露出が極端に減った自民党。
さまさまな手を打つ中、震災が発生。
ネットとSNSの重要性に注目が集まり、スマフォの普及と共に一気に広まる。

超会議3に出展する各政党ブースの情報を公開‐ニコニコインフォ
各党、ネットや若い層を意識してか2013年のニコニコ超会議にブースを出店。

一方、ネット上ではいわゆるネトウヨの活動が活発化。
2013年にはC.R.A.C.(しばき隊)、2015年にはSEALDsが結成される。
もはや震災前のネットがどうだったか思い出せないくらい政治的・思想的様相は変化した。

この本で描かれている数年間が、現代へ至る転換点とも言える重要な時代だったのがよく分かる。
よりにもよってとてつもなくパラダイムが変化した時代に与党として力の足りなかった民主党が政権を維持できるわけもなく、瓦解したのは当然だったとも言えるかもしれない。

激動の時代の裏、自民党の情報参謀として、政権奪還の舞台裏で活躍した方の記録はとても面白く読めた。

今となっては各党が行っているだろう情報分析、戦略黎明期の記録。
もちろんこの本に全てが全て書かれているわけではない。
しかし一般市民としては、政党が一体どのような情報分析を行っているか、どのように情報戦略を行いコントロールしているのかの概要だけでも知り、その上で情報を受け取り考えるべきだろうし、その一助にはなる。
必読の一冊。

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