古本や中古CD販売の右肩下がりが示す、情報媒体を所持するトレンドの終わり

東京古本とコーヒー巡り (散歩の達人ブックス 大人の自由時間)

fujipon.hatenablog.com

なんとなく目についたので。

ブックオフの買い取りシステムと言うのは実に単純。
本の大きさ、奥付、状態を参考に基準価格を決め、新刊や売れ筋などは別途に買い取り価格を設定する。
これをチェーン展開の基本として定めれば、目利きの古本屋店主がいなくてもバイトで充分対応できる。
いかに経験の必要のないシステムを構築するか。

ちなみに以前、部屋の本とCDをブックオフに投げ売ったら20万円超えましたが何か?



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僕のイメージでは、「どんな本でも状態(綺麗さ)だけをみて、十把一絡げに安く買い叩く」のがブックオフのビジネスモデルだと思っていたのだけれど、(少なくとも僕が今回行った店は)そうじゃない。

なのでこのfujipon氏の捉え方はかなり個人的なバイアスがかかっていると思われる。
なにせどこかの古本屋に持ち込んでブックオフよりいい価格で買い取ってくれるならそこに持ち込めばいいだけ。
買取価格が低ければ残弾が減る。
しかし買取価格を上げれば利益が減る。
買取価格も売値もお手盛りだが、その値付けもシステムにする必要がある。
プレミアムは必要ない。付加価値はいらない。

今でこそネット買い取りの駿河屋なんてものもあるけれど市井の古本屋に行って買い取りをお願いしても大した額にはならない。

ただしそこに目利きならではの付加価値があるから、それなりの本にはそれなりの価格を付けてくれることもある。
ただし売値もそれ相当になる。
売るだけの客と買うだけの客は一致しないから(自分が売ったものは買わない)売るときは売る時だけの、買うときは買う時だけの感覚しか体感し得ない。
それが「あそこは高い」「あそこは安い」というバイアスになる。
(実際、内側から見ればブックオフの買取価格はかなり頑張っている)

この辺はファミレスの暖めるだけメニューにも似て、ブックオフはシンプルな買い取り&値付けシステムを導入したからこそ多店舗展開ができた。
古本屋によくあるプレミアムの価値観を切り捨てることで執着を生みやすい「古本」を「モノ」として流通させた。
小さな古書店ではやらないエタノールとヤスリでの本のクリーニングなんてのも本に愛着がないからこそ思いつく。

自分なんかも昔は古本屋で店員をやってた時期があるので、ブックオフのやり方を聞いたときは感心したものですし、初めて本をクリーニングしたときは斬新さを感じましたが(10年以上前なんで)。


そんなブックオフもベビー用品を扱い、今度はブランド品や古着に手を広げたのは、いわずもがな当然中核となる古本やCDの流通が頭打ち→減少しはじめたからであって。
多角化の一環で、青山ブックセンターだって傘下におさめてる。

これは単にCDの売れ行きが下がった、と言うよりもコンテンツをハードとして所有するという考え方のトレンドが減少傾向にあるからだと思われる。
音楽はサブスクリプションが台頭し、活字媒体自体その存在が必要とされなくなりつつある。


活字離れとよく言うけれどそうではなく、活字”媒体”離れが正しいように感じる。
知識を得るならWikipediaで充分足りる。
わざわざ紙の本や電子書籍を買って読むことに時間を使うならユーチューバーの動画見てツイートしてる方が楽しい。
ネットの普及で文字自体を見る時間は伸びてる。
メールやSNSなど文字によるコミュニケーションの割合は圧倒的に高くなった。

でも本は売れない。
活字を読むのはネットでお腹いっぱい。
本にはネットにない情報があるけど、だったら買わなくても図書館に行けばいい。

fujipon氏はブックオフを「書店」として本に傾倒して語りたがるけれど、ブックオフにはDVDなんかも売っていて、だとすれば敵はHuluやNetflix、CDなら音楽のサブスクリプションサービスであるLINE MusicやAppleMusicだって敵だといえる。
というか、もうブックオフの事業展開するモノのリユース自体が全部しんどいということなんですよ。
本に限った話じゃあない。

残念ながら、もうモノを持つ時代は終わってる。

中古販売は、物理的には中古でも媒体に記された情報の品質には問題がないから成立する。
価値を感じなくなったユーザーから物理媒体を買い取り、新たな価値をつけ別のユーザーに流し、中間マージンで利ざやを稼ぐ形態。
本来、本の情報に対し対価を払い読んだ時点で(たとえ読まず手にするだけでも)その対価は昇華される。
ですから古本を売るというのは食べ残しを売るとか食べかけを売るとか、あるいはいつか食べようと残しておいたけれど結局食べなかったものを売るとか。
そういうことなんですが。

ところが世間的に物理的な記録媒体自体が欲しくないとなれば、媒体そのものが流れない。
在庫を抱えるだけでは利益が出ないどころか経費ばかりかかる。
本は、在庫が動かなければマイナスにはなってもプラスにはならない。

出店しなければ売れないが、出店してもモノが動かないなら維持費ばかりがかかる。
そこで店舗を減らし、リユースの多角店舗BOOKOFF SUPER BAZAARへの移行をしているがなかなか上手く行かない。


音楽CDが売れなくなった、活字離れだと叫ばれる中、しかしタワーレコードやまんだらけは増収を記録してる。
しかしそれらは、単に媒体を売るだけではなく客を囲い込む動きの結果があったからこその増収。
ブックオフのように右から左へ流す事業では囲い込みは難しい。
だから多角展開するしかないのも必然。


レンタルが低調なツタヤは代官山にオープンさせた意識高い蔦屋書店の好調さにあやかりサブカルホイホイなビジネスモデルを展開することで生き残りをかけてる。
ツタヤだって台所事情は厳しいから家電に手を出し、書店や図書館なんてなれないことをやっていろいろ燃やしてる。

ところで「ブックオフがダメかもしれない」という思い込みの記事タイトルだけれど、
toyokeizai.net
IR情報でも見た上で書いてるかと思ったんですが……。
どうりで「ダメかも」という割に数字が全然ない。

株主・投資家情報 | 本を売るならBOOKOFF(ブックオフ)

ブックオフは赤字転落したものの、この先がどうなるかは蓋を開けてみないと。
営業利益自体が激下がりしてるわけではないのはIR見ればわかる。
ただ販売費および一般管理費がかなり重い。
……なんや、これは。
まぁ、即座にダメとはいわんが、厳しいわねぇ……。


どちらにしろ座して死ぬのを待つだけの企業はない。
素人が考える打開策なんて会議でとっくに出てるだろうし、嫌われているとはいえマクドナルドほどでもない。
来期は売上高850億円、営業利益8億円、経常利益13億円、当期利益3億5000万円の見通しだそうですが……ねぇ。
店舗数も絞ってるみたいですが、さてどうなりますやら。

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