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「誰が音楽をタダにした?──巨大産業をぶっ潰した男たち」は日本のことが書いていないからダメらしい

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち【無料拡大お試し版】 (早川書房)

アマゾンのコメント欄というのは誰でも自由に書くことができる。

どんな品質のコメントであれ、その内容がどれほどバカバカしいものでも一定のひとは参考にしてしまう。

ところでこの「誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち」は今月の21日に書籍が発売、電子書籍に至っては30日に発売……なのでまだ全編は読めない。
お試し版としてだけ配信されている。



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そんなお試し版によくわからないコメントが書き込まれていた。

いわゆるアメリカの音楽産業のmp3と、聞き放題、主にこの二点について語られるんですけど、
今の日本は「音楽がタダ」の前に音楽が聞かれてない。
もしくは若者が共通して聞く音楽、というものがほとんどない状態。
こんな状況の日本でこの文章を読んでも「だから何?」状態です。
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この本はまずmp3誕生の裏側から始まる。
人間が音を認識できる限界……耳の構造的欠陥に目をつけた。

人間の耳はマイクとは違う。
音が0.5秒途切れれば認識できるがそれが限りなくゼロに近ければそれを認識できない。
また可聴域外の音も聞くことは当然できない。

耳は適応型の器官で、自然選択によって①言語を聞き取って解釈し、②大型の肉食動物から身を守るための早期警戒システムとして働くようになっていた。
これらの目標を満たすのにちょうどいい程度に耳は機能するが、それ以上の能力はない

そこで一部の研究者らは音声の圧縮技術に目をつけ研究を始める。
最初は聞くに耐えないものだったがコンピューターの処理能力の向上と共に圧縮技術も向上していく。

やがてMPEG(ムービング・ピクチャー・エクスパーツ・グループ、動画専門家集団)による規格を決めるコンテストが行われるが、参加した14グループのうち3つの技術がそれぞれ採用された。
ひとつはデジタルカセット用のMP1。
しかしこの時点でデジタルカセット自体が時代遅れになりつつあった。
もうひとつが圧縮率はそれほどでもないが大手企業フィリップスが背後にいるMP2。
もう一つが圧縮率に長けたMP3。

しかしMP3側はMPEGの規格として承認されるために、妥協点としてMP2サイドのフィルタバンク技術を搭載しなければならなかった。
このフィルタバンク技術によってMP3は処理的なハンデキャップを背負うことになり、その裏には巨大企業フィリップスの影が……。


と言った具合。
まださわりしか読めないんだが、非常に面白い。

CDで一儲けしていたフィリップスが、MPEGの規格も自分らの利益にしようと企みMP3はその煽りを食らったなんて裏話はかなり興味深い。
この本ではさらに展開し、もちろんナップスターなども当然のごとく登場するでしょう(海賊版や音源共有に関してイントロダクションで示されてる)。

MP2との戦いに敗れたmp3が数奇な運命を辿り、音楽配信に結びつくその根幹を担った経緯。
その中には日本も登場する。
でも当然、それはもっと後編でしょうが。


「今の日本では音楽が聴かれてないので、アメリカでどうだったかなんて読んでもね」

というレビューコメントは、この本の中身をかすりもしてない上に判断材料として害でしかない。
いや、お試し版読んで「日本は音楽が聴かれてないので」って。
日本で音楽が聴かれているかいないかじゃなく「インターネットの発展と音楽配信により産業構造が変わった」ことを書いてるんだが、何を……。

そんなことを言い出せば、海外から入ってきた技術は全てそうだが……。
日本でどうなのか、を読みたいなら日本人が書いた本を読めばいいだけ。
ましてや序盤だけしか読めないお試し版で言える意見ですかね。

少なくとも現在の音楽配信に至るまでの黎明をまとめた書籍としてかなり興味深く、出たら買うが、それにしてもこんなコメントですら「読者としての」一票の重みを持ってしまうのだから残念でしょうがない。
本当に読んだかどうか定かではないが。

たまにアプリの評価で「日本語じゃないので星1つ」とかいう意見を目にすることがあるが、ローカライズされてないことが星を下げる原因になるという思考ってしみじみろくでもないと思うのだが、どうだろう?


ともかくお試し版なので気軽に一読あれ。
コメントが正しいかどうかわかると思うので。