ドラマ「IQ246」に見る不必要な小ネタと雑情報

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TBSの日曜9時といえばドラマ枠。
過去には半沢直樹下町ロケットなど数多くのヒットドラマを生み出した。
今シーズンはそこで探偵物が始まった。
「IQ246」
暇を持て余した天才的IQを持つ貴族が探偵として事件を解決する、という内容。

見始めてまず違和感を感じる織田裕二の喋り方。
相棒の杉下右京というか熊倉一雄吹き替えのポワロっぽくもある。
少し甲高くて粘っこい。

数々の小ネタ。
演出(カットの見せ方)も含め堤幸彦作品を意識してる風に思える。
「トリック」「ケイゾク」や「スペック」「神の舌を持つ男」
そういう感じ。



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ホワイダニット


全体の構造は、コロンボや古畑などに見られるような犯人が先に分かった上でどのように犯行が行われたか?を推理する倒述ミステリ風でもあるが、しかし倒述形式では定番となる犯人視点が少ない。
ミステリにおいての大きな区分けとして

フーダニット:犯人は誰か?
ハウダニット:どうやって殺したか?
ホワイダニット:なぜ殺したか?

上記の分類だと探偵側からの視点がメインで、犯人は最初隠されるが途中から誰が犯人なのか明かされるハウダニット
よくあるミステリではフーダニットとハウダニットの両方が成立しているが今作においてはハウダニットに限定されている。

このやり方が上手いのか否かは定かではないが、ネットの評判を見る限りはうまく行っているのかも知れない。
個人的にはそうは思えないが。
もちろんこのやり方を逆手に取るような話があれば「騙されたコロンボ」のように俄然評価も上がるが、さてどうだろう。

小ネタとミステリの関係

時効警察 DVD-BOX

小ネタ満載、コミカルミステリドラマといえば堤幸彦のシリーズ、そして三木聡やケラの時効警察が挙げられる。
これらの共通点は全編に仕込まれた見切れの小ネタとシュールなノリ。

ナイロン100℃三木聡の舞台でも同様の感覚があるが、本編はシリアスなドラマであっても、無関係なところにネタが仕込まれている。
実はコミカルなミステリドラマにおいては、この「本筋とは無関係」という部分が大事。
小ネタがどれだけ暴走しようが事件で起きた殺人や事故や自殺は劇中においての実際。
この小ネタやシュールがシリアスな殺人にまで侵食してしまうのはあまりよくない。
シリアス要素とコメディ要素は切り分けてあってこそ成立する。

シュールな小ネタは基本的にメタな要素。
作中世界においては自然だが作外の世界では意味を持ってる。

たとえば時効警察に「日曜日にメガネをかけるのはイギリス人っぽい」というシュールな小ネタがある。
このネタは意味なしシュールだが、これが仮に作中世界において意味を持ったとする。

探偵が犯人を当てる際「日曜日にメガネをかけるのはイギリス人ですよね。だから犯人は〜」などと推理の根拠になったら?
「イギリス人でもないのに日曜日にメガネをかけたから殺したんです」と犯行動機になっていたら?
こうなると小ネタは単なる笑いの仕掛けではなく事件の要素になってしまう。

時効警察三木聡がどれだけ腹を壊してトイレに駆け込もうが、それは殺人事件とは関係ない出来事。

コミカル要素がシリアスに影響するならミステリは何でもありになる。
ネタとして使われた不条理すら作中で条理になる可能性がある。

だから小ネタは笑いに限定され、事件はシリアスな現実の要素に限定されるのが定石。


さて、今回のIQ246において被害者はみかんが演じ設定は西川史子風の女医 大山千恵子。
これは小ネタなのに事件にも意味を持ってしまっている。
殺されるのはみかんで構わないし、女医でも構わないんだが殺された被害者が西川史子風のモノマネ女医である必要性ってあるんだろうか。
そういうのは雑情報(不必要な情報)に思えて仕方ない。

郷ピロミ!殺人事件で本番中に郷ピロミ!が殺されることに意味はあったが、みかんの女医には意味を感じない。

貴族

富豪刑事 (新潮文庫)

さらに織田裕二は天才かつ貴族なんだが……この貴族って必要なのか?という疑問。
たとえば「富豪刑事」であれば刑事にも関わらず富豪なので金にあかして大仕掛けを仕掛け犯人を逮捕する。
この場合、富豪である意味があるし富豪でなければならない。

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そして貴族で探偵といえば麻耶雄嵩「貴族探偵」がある。
最初、貴族探偵ドラマと聞いて麻耶の映像化かと期待したのに……。

「どうしてこの人が推理をするの。あなたが探偵なんでしょ」
「馬鹿馬鹿しい。私に推理をしろと?貴族に労働を強要するとは時代も傲慢になったものだ。何のために使用人がいると思っているんですか」
貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

貴族探偵は推理をしない。

推理するのは、側にいる使用人の執事やメイド。
こちらには貴族だから推理をしないというところに「貴族」である意味がある。
探偵が推理をしないというトリッキーさを成立させるために必要な「貴族」というステータス。

で、織田裕二の貴族探偵はどうかといえば……貴族である意味ってなんですかね。
プロ棋士探偵や金持ちボンボン探偵でも成立してしまうんですが。

これからもっと貴族らしさが発揮されれば……。

キャリア

織田裕二の演技プランは大丈夫なのか?とか、石黒賢と二人で振り返れば奴がいるコンビだとか、踊る〜の小ネタがあったりしても構わないが「それはそれこれはこれ」という切り分けができないなら小ネタなんて邪魔。

囲碁の打ち手を考える思考のビジュアル化(ガリレオならチョークで式を書き殴る、鍵のかかった部屋なら指でカチリと解錠する仕草)も一向に構わないが、IQ246が必要なほどの事件でもなかったのでは……あと天才に見えないってところがなんとも。

裏でやってる「キャリア 〜掟破りの警察署長〜」の方がよくできてると感じたが、残念ながら地味。
視聴率も今ひとつ。

……「リーガルハイ」と同じ演出だから期待できるうえに、実際一話目は予想以上に良かったんだが視聴率一桁。
玉木宏瀧本美織コンビは織田裕二、ディーン藤岡、土屋太鳳トリオより華がないからか……内容よりキャストだとしたら、なんだかねぇ。

「キャリア」はテーマ的な切り分けがキチンと出来てるんだよなー……。

さんざ書いたけれど、相棒新シリーズの「呪いで殺したと言うのは実は殺人だったってそりゃあそうだ」よりはひねってあった。
もう相棒はそ(ry

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