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書かれたことを鵜呑みにするような精度の低い抽象度は悪癖でしかない

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もともと抽象的な話とか、全く関係なさそうなこと同士に共通点を見つけたりすると、一人静かにテン上げしてるタイプの人間だったので、「人の名前を覚えられない人は、抽象的に世界を捉えるのが好きな人かもしれない」という仮説をもとに、そんな人に多そうな傾向を出してみました。

タイトルが全てって感じですが、人の名前は「抽象」ではなく「具象」ですね。
ひとの固有存在を具体化し指すための言語化。
なので、抽象的とは真逆。

少し引っかかりますが、先を急ぎます。



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抽象思考

自分はどちらかというと抽象思考なんですよ。
単語、固有名詞を覚えるのが非常に苦手。
ですがざっくり覚えるのは得意なので大まかな長期記憶は保持しやすい。

業務で言うならイメージでプロジェクトの全体像を捉え仕組みを作り、マイルストーンを立て、運用を見直すのは得意。
代わりに細かいデータの整合性なんかは、関数とかVBAに自動化して任せる。
数値をコピペすれば間違いない、数値が間違ってるなら担当に投げればいい。

あとひとの相手は苦手。
人事や営業は向いてない。
気分で変わりやすく、表面的すぎ、能力に安定がなく信頼性に欠ける。

抽象的な事象を具象に置き換える(抽象→言語化)のはスムースに行える。
本来であればこの記事に書かれた「人の名前を覚えられない人は、抽象的に世界を捉えるのが好きな人かもしれない」に当てはまるはずなんですよ。
しかしどれもしっくり来ない。


まず見出しだけ引用しますが、

傾向1)実体験は思い出せない、けど例え話はすぐに出せる
(中略)
傾向2)意識が散漫で、人の話を長く集中して聞けない
(中略)
傾向3)文字数を稼ぐための文章が書けない
(中略)
傾向4)細かいことは基本覚えてないが、要点だけはおさえてる
(中略)
傾向5)やる意義に同意しているものとしていないものとではそのアウトプットの質に天と地ほどの差が出る

1は抽象と具象とイマジネーション。
2は集中力。
3は文章力と集中力。
4は記憶の傾向。
5は意識の方向性とアウトプットの上手、下手。

これらを全て「抽象思考の人の傾向」とするのには無理がある。

「意識」は、外部からデータを取り込むための仕組みだといえる。
視覚などのセンサーを動かし外部からの情報を取り込み、内部的に処理するOSが「意識」。

この意識を仮に「流通」に例えれば、「記憶」はデータを保存するための「倉庫」。
意識が散漫か否かというのは「梱包」の上手下手。
さらに思い出す出せないというのは「発送」で、文章を書き出すというのは取り出したものをどうするのかという「使用」ですからこれもすべて異なる。
どれも抽象か?というとそんなこともない。

実際、自分は抽象思考ですが、こんな長文書いてますからね。
 
 

トリアージ

意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論

意識の話をすると長いので最近面白かった「意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論」を読んでいただくとして、問題の「ひとの名前を覚えられない」に行きますが、人の名前というのは人という存在に対する具象化……言ってみればタグです。
平安の世に陰陽師が名前をつけることで存在を縛ったように、言霊信仰の背景にある思考にも見られる抽象の存在を具象化する「名」こそが存在を世界に繋ぐ楔とも言える。

クラスに「転校生」がやってきたとして、その転校生の名前を聞けばその「転校生」は転校生という属性から名前という「固有名詞」を持つ存在にクラスチェンジする。
ところがいつまでもその名前じゃなく「あの転校生さー」としか覚えられないというのはそもそも興味が無いわけです。
つまりインプットしたあと保存の優先順位が低い。

医療現場にトリアージというのがある。
これは患者に優先度(重篤度)を振り、重症の高い患者から順番に診る緊急救命ならではのやり方ですが(ドラマのERで知った)そもそも人間の情報と言うのは単純ではない。
人間にはまず容姿、顔、表情、印象、体つき、身長、格好、持ち物という外見。
さらに声、匂い、話し方、息遣いなどもある。
そして話した内容、話した場所、天気、気温などの情報もある。

一人の人間と相対し話すというのはこれだけの情報をリアルタイムで処理してるわけです。
だから人間は自然とこれらの情報をトリアージみたいにタグつけしている。
そして不要な情報は一度短期記憶に取り込み、不要と判断したものはすべて切り捨て、最終的に必要な情報だけを長期記憶へと移行させる。

ところが意識の自動部分*1は、基本的に仕事が雑なので自分の思い入れの強いもの、馴染みのあるものなど情報処理のし易いものに優先度を高く付け、そうでないものは低くつける

トリアージで言うなら顔見知りで扱いやすそうな患者は優先度を高く、めんどくさそうな患者は優先度を低くしてしまう研修医のようなもの。

トリアージの精度が悪いと本来優先するべき患者が置き捨てられそのまま死んでしまう。
入院しなくて良い患者ばかりが入院(長期記憶)し、助けるべき患者は墓場行き(忘却)。

ひとの名前を覚えられないというのはその人を捉える際の情報処理において「名前」に関する記憶の優先度が低い。
タグ付けが弱い、ヘタなわけです。
だからよくある記憶術の「ものと関連付けて覚える」などというのはそんなタグの強化とも言える。
 
 

苦手意識

ウォーキング・デッド7

知ってる方にスターウォーズを観たことがないというひとがいて説明しようとしたら

私「えーと、ルーク・スカイウォーカーが……」
某「……長くて覚えられない」
私「ふわっ?!」

もう「外国人の名前は覚えられない」「外国人の顔も覚えれない」「見分けもあまりつかない」→だから覚えられない。
ところがデイヴ・スペクターやボビーオロゴンなら覚えられる。
これには、完全に苦手意識と思考停止の傾向が見える。
そもそも覚える気がない。


ちなみに「ウォーキングデッド」の人の名前なんて覚えられないのは不思議じゃない。
じゃあリックの元嫁の名前は?
刑務所で最初に焼き殺された人の名前は??
なんて出てきません。自分なんてドレッドヘアーで刀持ってる……あのレギュラーキャラの名前も出てこない。
リックの息子も、ベリーショートで一度失踪した強キャラの女性も。
霊柩車で誘拐された娘の名前も覚えてない。
どこまで覚えていればそれは「ひとの名前を覚えられる人」なんですかね?

ドラマを見ている際に人の名前の優先度は低い。
だって誰かに話すわけじゃない。
誰かに話すつもりで観るなら覚えますけどそうじゃないならストーリーや関係性など優先度の高い情報が山ほどある。
だから毎回見ていてもキャラの名前を覚えられない。
で、キャラの名前ばかり覚えているひとというのは、メタ視やストーリーの捉え方が一面的だったりする。


多くの情報を処理する際、いつまでも抽象的な情報の取り込み方しかできないのはしんどい。
具象的な情報ばかりを取り込み抽象に弱いというのも厳しい。
漠然としているから上手くいく、細かくこだわるから上手くいく。

抽象がいい、具象がいい。
どちらの場面だってあるわけで、人間はどちらも出来るのにどちらかが得意だからどちらかしかやらず、いつの間にかどちらかしかできなくなっていく。
「頭が固い」というのは抽象具象の切り替えを怠けた結果、考え方の偏向が錆びついた面は否めない。

「人の名前を覚えられない人は、抽象的な世界に生きている人かもしれない」
一部首肯も出来るが、論考記事としてはおかしい部分が多すぎ首肯は出来ない。
どちらかといえば無根拠な印象論に近い。
情報処理と記憶には、もっと多くのセンシティブな要素が絡み合ってる。

ひとつ言えるのは、こういう風に書かれた情報を書かれた通りに鵜呑みにしてしまうひとほど自分の情報インプット(トリアージ)を疑う方がいい。
情報の処理する際に重要度と同時に精度の確保も行わなければならないのに、それに信頼が置けないというのはかなり重篤。デマですら信頼し、デマを元に判断を行ってしまう。
精度の低い抽象度は悪癖でしかない。

あと元記事のコメント欄ひどく質が悪い……いやはや。

*1:朝、扉の鍵を締めたことをすぐに忘れるのは自動化されているから