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天才数学者が知略で戦う非戦争軍事マンガ 三田紀房「アルキメデスの大戦」

アルキメデスの大戦(1) (ヤングマガジンコミックス)

戦艦「大和」を阻止せよ!!! 日本の未来を1人の数学の天才が変える!? 時は1933年。日本海軍の中枢・海軍省の会議室で、次世代の旗艦を決める新型戦艦建造計画会議が開かれ、2つの陣営が設計採用を争う事に。これからの海戦を見据え、高速の小型戦艦を打ち出す“航空主兵主義”派に対し、海軍内で権力を握る“大艦巨砲主義”派の計画は、世界でも類を見ない超巨大戦艦の建造だった――!!

これまで「ドラゴン桜」で受験や勉強法、「インベスターZ」で投資について描いてきた三田紀房が、現在連載中の新作では軍モノに挑戦?と思いきややっぱり三田紀房作品になってる。
これはかなりオススメ。



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数学の天才

1933年。
ドイツでは、ヒトラーが政権を獲得したその年。
国際連盟を脱退、二次大戦の足跡が近づきつつある日本が舞台。

海軍内で2つの新艦艇建造計画が持ち上がる。
ひとつは対抗空気戦闘を考え、空母の直掩用とした小型戦艦を推す藤岡案。
そしてもう一つは世界でも他に類を見ない巨大戦艦を作ろうとする平山案。
しかも平山案の巨大戦艦は、藤岡案の小型戦艦より半分の建造費で済むという。

巨大な戦艦の建造費が半分で済むとはどう考えてもおかしい。
平山案に不正があるのは間違いないがその実態がつかめない。
そこで藤岡案を推す永野海軍大将らは、帝大数学科卒の「数学の天才」を海軍に招き入れ、巨大戦艦「大和」の製造費を計算させることにするのだが……。


この話は軍を舞台にしていても前線の兵士は描かれない。
まだ時代は、大戦前。
戦争まで、まだ時間はある。

そこで戦争前の日本を舞台に、後方で兵器開発に関わる人々や海軍上層部においての派閥の駆け引き、陰謀術策が描かれるという一風変わった作品。
この「数学の天才」櫂が探偵になり「巨大戦艦、建造費の謎」に挑むのが柱となる構図。

櫂の敵は、巨大戦艦 大和建造計画。
しかし問題は山積み。

まず立ちはだかる機密情報の壁。
一般から招き入れられた櫂はまず軍艦の設計図を見ようとするがそれは叶わない。
なにせ軍艦の設計図は重要機密。
だったら部品の価格だけでも……と思うがこれも機密。

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※第12話 櫂の過去

軍「戦艦の建造費を探ってくれ」
櫂「じゃあ設計図を」
軍「無理」
櫂「え?」
軍「無理」
櫂「」

そんな矛盾にもめげずに櫂は知恵を働かせ軍艦の建造費を探り出そうと駆けずり回る。
櫂は軍艦に乗り込み意外な方法を思いつくのだが……。

中高年中心

もちろん大和建造が悲願の平山派も黙っていない。
事あるごとに邪魔しようとするチキチキマシン猛レース。

櫂は過去にスキャンダルがあり、それを敵方に握られてしまう。

それどころか中盤になると芸者といい仲になって課長島耕作ばりの中年なお色気シーンがあったりするんで、まぁ、なんか……。
こんなに色気のないお色気シーンもなかなかない。

あと軍が舞台なので女性キャラは少なく、おっさん率が高い。
だが三田紀房、おっさんの書き分けも今一つなので、こっちもおっさん、こっちもおっさん。
こっちは禿げてて、こっちは眼鏡で、こっちは七三で……などと特徴でおっさん軍人キャラを見分けるのが正しい読み方。

時折、ギャグと思しきコマが挟まるんだけど、三田紀房は緩急の絵の書き分けが出来ない人なので、笑っていいんだかどうなんだか。

基本、会話劇なので背景がスカスカなことも多いが特に気にならない。
三田作品は、ストーリーが面白けりゃいいんですよ、それで。

堀越二郎

アルキメデスの大戦(4) (ヤングマガジンコミックス)

そして大和建造の次は航空機に目覚める櫂。
戦闘機こそ次世代の戦争の主役だ!
巨大戦艦などというバカげた代物の建造を防ぐにはそもそもの戦術すら変えなければならない。

というわけで日本の新型戦闘機の開発に没入していく天才 櫂。
天才なので航空機開発の知識もガンガン吸収。

「風立ちぬ」堀越二郎も登場。
堀越自慢の逆ガル翼*1の九試単座戦闘機を櫂は……。

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※第33話 逆ガル翼

当然ながらこのまま日本は戦争に突入。
櫂の望み叶わず巨大戦艦大和の建造へと突き進んでしまうんだろう。

そんな予定調和の物語をどこまで見せるか。
櫂の構想は、これからどのように結実していくのか。
現在まだ五巻。
戦争の影が徐々に迫りつつある。

これは面白い。
早く続きが読みたい。

*1:W字型になった形状の翼