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「1日を50円で売る東大生」は、何を売り何を得たのか?

テレビ ブログ

真夜中にフジで放送しているドキュメンタリー番組「NONFIX」
先週放送「『東京プライスレス』 これはお金で買えますか? ~わたしの知らない ワタシの街~」と題して放送された内容がなかなか面白かった。
NONFIX : 『東京プライスレス』 これはお金で買えますか? ~わたしの知らない ワタシの街~ - フジテレビ

「プライスレス」…それは「値段がつけられないほど貴重な価値」を意味する。
感動、体験、恋愛、絆、家族…かつてはお金で決して手に入らなかったモノ、手に入れてはいけなかったモノ…そんなプライスレスなモノが、今、お金を支払うことで手に入れることができる街・東京。




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東京

今はさまざま、新しい商売が存在しているのだそうだ。

お墓をきれいに掃除して花を供え、線香をあげてその様子を報告写真として提出。
墓参り代行 
年間契約 4回48,000円、12回コースは120,000円。
1回15,000円から。 
 
 
結婚披露宴の出席者代行サービス。

二ヶ月後に結婚を予定している30代男性が依頼人。
披露宴に呼ぶ友人が少ない、二度目の結婚なので会社の人を呼びたくないと依頼。

代行は一人10,000円~。
依頼数はだいたい月に70件程度。
バレない講習を受けたスタッフが代行として参加。
探偵のように「それなりに目立たない」ことを求められる。
歌を披露しても上手すぎてはダメ。
そこそこの素人っぽい歌唱力と対応が求められる。

結婚式と披露宴で13,000円。
二次会への参加は、プラス料金8,000円。
スピーチ、余興の披露 プラス8,000円。

 
法政大経済学部卒の元塾講師の男性が行っているのは、宿題の代行業。
ドリル一冊5,000円、大学の卒論2万字で175,000円。
読書感想文400文字で3,000円から。

受験に必要のない宿題をさせたくないという親の依頼もあるらしい。
夏休みは、かきいれどき。
ひと月に200件も依頼が来るとのこと。
 
 
ぬいぐるみの旅行代行ウナギトラベル。
http://unagi-travel.com/
自分の代わりにぬいぐるみに旅行をさせる。
旅行の記録はリアルタイムでアップロードされ、依頼主は旅行気分を味わえる。
旅行に行きたい人の下見、
中には、親孝行できないまま亡くなった母親の代わりにぬいぐるみを旅行に行かせたり、あるいは身体が不自由な少女の代わりに母親が依頼したりすることもあるらしい。

 

50円で何を売り何を買ったのか

現役東大生が1日を50円で売ってみたら
KADOKAWA / 中経出版 (2017-02-02)
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www.asahi.com

本にもなった「1日を50円で売る東大生」も登場した。
「1日を50円で売る東大生」に感じたのは「50円で時間を売る」というより「50円を介して経験を得る」の方が正しいのかもしれないということだった。


1日50円の東大生。
「50円じゃなく無料でやればいい」という意見もあるかもしれないが、この金額はよく出来ている。
そこにお金を介するからこそ「商売である」ことを確立できる。
行動経済学を持ち出せば、50円という対価の存在が社会規範と市場規範を別っている。

そして金銭の多寡は、市場規範を完全に成立させるほどの額ではない。
もし「東大生1日10万円」なら依頼した側も、元を取ろうと考えるかもしれず、受ける側も10万円分の価値を提供しなければならないプレッシャーが生じてしまう。
10万円という金額に、市場規範を用いるには多すぎる。

50円は商売として考えれば成立はしてない。
あくまでも市場規範と社会規範を区別するためのタグ。

50円がなければ単なるボランティアになってしまう。
そこにたとえ50円でも間に挟むからこそ売り手と買い手という関係性が発生し、双方に責任が生じる。
経験というものが社会規範として付随する。


しかしその50円でいろいろなひとに会うという経験は、50円以上の価値を持っている。
それらはお金には換算できない。


マネして炎上したブロガーもいたがあれは市場規範と社会規範を完全に勘違いしている。
売り手主導でなければ社会規範は成立しない。
買い手が主導なら市場規範に基づき「日雇い労働をし、その給料を振り込む」依頼も受けなければならない。
だが売り手主導なら社会規範の依頼だけを選別できる。
現実を見ずにモラトリアムに生きる人間に無理なのは道理。

アウトソース

レンタル恋人、おっさんレンタルも取り上げていた。

特にレンタル恋人は、一度レンタル恋人でのデートの様子を流し、そのあとでもう一度同じ映像を流しながら「自然に見えた彼女の行動がマニュアル通りだった」ことを示すよう、マニュアルの記載をテロップで見せる編集。
これは少し怖かった。

番組内でレンタル恋人を利用している客はいわゆる勝ち組男性。
お金もあるが恋人を作りたくない、関係性を築くのが面倒でこういったサービスを利用するのだという。


社会が変化し、従来の規範が実際の現実とズレを生じている。
旧弊的なしきたりと、現実とのギャプ。
受験には必要ないのに宿題という従来のシステムが生きているから宿題をアウトソースする。
旅行に行きたいが行けないから旅行の体験をヴァーチャルにアウトソースする。
核家族化によって家の繋がりが弱まり、墓参りという習慣が消えつつあるから、墓参りのアウトソースする。

恋人はいらないめんどくさい、簡単にレンタルできるならそれに越したことはない。
面倒な彼女の相手をしなくても、デートという楽しい部分だけ味わえる。
恋愛に対しておっくうになる若者が増えるからレンタル恋人が成立する。

コミュニケーションの必要性が薄れるが結婚式という行事自体はいくら形骸化しても残っている。
だから参加者代行サービスが成立する。

これまで死蔵されてきたおっさんの経験と知識がおっさんレンタルで掘り起こされ活用され、東大生は50円で自分を売りつつ50円以上の経験を得ている。

これまでになかった業態は、現代社会の誤謬と歪みから生まれる。
とても気づきの多い、いい番組だった。
フジテレビのバラエティは今やどうしようもないが、ドキュメンタリー班は頑張ってる。


ところでこういうめんどくさいことばかり考えるおっさんブロガーは、いったいいくらなら買ってもらえるんだろう……。

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