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リアルなCGアニメと不気味の谷


『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』特別プロモーション映像

連続して、NETFLIXで視聴できる神山健治監督「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」とこちらもNETFLIXで観ることのできるフルCGアニメ「GANTZ:O」、そしてスタジオカラーの新作「龍の歯医者」を観た。

trendy.nikkeibp.co.jp
Netflixは国ごとにオリジナルコンテンツを配信しているが「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」は日本発のオリジナルコンテンツ。
「GANTZ:O」もフル3DCGで作られたが、この二つを比較してガンツのディテールや情報量が多いのは、予算からして当然。
そして「龍の歯医者」
こちらもCGだが、これらの中で一番セルっぽさを、あえて表現しているのがこれ。
反対に振り切っているのが「GANTZ:O」

この「GANTZ:O」にはリアルだという評がついて回るが、その評に何となく違和感を感じるのは自分だけだろうか?



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リアルとフィクション


『GANTZ:O』特報

リアル、というのであれば実写で撮影するのが一番「リアル」だろう。
現実に撮影する中で、登場する虚構の存在をCGで描きそれを現実のレイヤーに違和感なく溶け込ませる。それが一番「リアル」

今度実写化される「ジョジョ」もコスプレをした現実の人間とCGのスタンドを合わせ、マンガのフィクション世界を表現しようとしてる。
実写をアニメのテイストに寄せれば「キューティーハニー」や「ヤッターマン」のようになるのかもしれない。

だが実写をアニメに寄せれば解決するなら(全く解決の目途が立っていないが)、フル3DCGで作る意味がない。
アニメの情報量が、増えれば増えるほどリアルに近づく。
が、アニメ映像は果たして「リアル」であればあるほどいいんだろうか?


龍の歯医者 告知スポット

一方、「龍の歯医者」は、それほど予算を使うことなく、舞城王太郎独特の世界観を見事にビジュアル化していた。

画のリアルさを追求するベクトルではなく、しかしディテールにこだわる。
波頭を砕き航行する少し低めの戦艦の喫水線、攻撃を受けた砲塔は一瞬その下の円柱状の砲座をのぞかせて吹き飛ぶ、歯の間を走る無数の蟲、それを刺し砕く歯医者の動き。
セルのアニメ、マンガ的表現を多用しながら、CGの情報量ではなく、画としての情報量で見せる。
リアルさではなく、ディテールのこだわり、書き込み。


第25話「ハンマーヘッド」トレーラー/日本アニメ(ーター)見本市
※同じく舞城王太郎 原作短編アニメ「ハンマーヘッド」予告

「GANTZ:O」は、現実的なリアルさを感じさせる、ヌメヌメと柔らかく動き、非常に情報量の多いCGを多用している。
こちらの画もすごいが、「龍の歯医者」とはベクトルが全く違う。

そんな「リアル」な3DCGに通常のアニメを思わせる吹き替えが合わせてある。
ここに違和感を感じる。

アニメの吹き替えが、多少過剰気味なのは絵の情報量を補うため。
口をパクパクしてリップシンクがズレていても、声出しと口の動きの頭があっていればそこに違和感は感じない。アニメの画は記号であって、だから声優は、記号で足りない情報を補うため、感情を過剰に演じてみせる。

ところが実写の場合、声もあくまで情報のひとつ。
だから微細なリップシンクのズレですら違和感を覚える。

ところが技術が発達し、アニメの情報量が増えた。
「GANTZ:O」のように観客に「リアルさ」を感じさせる画の情報に対して、従来のアニメの演技では、過剰になってしまう。リップシンクもがっちり当っているし、気持ち悪いくらいクネクネと画が動く。

「CYBORG009 CALL OF JUSTICE」は「GANTZ:O」ほどの情報量がない。いわば2次元の絵を3次元に起こした絵柄。
画的に目を見張るほどのものはないが、声の演技との違和感はそれほどない。
セルの味を残した「龍の歯医者」は当然ながら何の違和感もない。
 

不気味の谷

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)
※「好き好き大好き超愛してる」を是非アニメ化して欲しいが……。

ひと昔前、アニメがCG化しつつある過渡期には「(プリキュアのような)CGの鮮明なカラーリングで目がショボショボする」とも言われたが、今や色の表現も増え、アニメも「3Dっぽさ」を前面に出すか、それとも「セルっぽさを出すか」という多様性を選べるようになった。
ヌルヌル動くCGはたしかにすごいが、しかし不気味の谷を感じさせてしまう。
情報量が増え、リアルに、現実っぽさが増えれば増えるほど、皮肉なことに不気味の谷に近づいていく。
リアルだからいいというわけでもなく、面白さとイコールでもない。

単純に面白さだけなら個人的には、

龍の歯医者>>越えられ壁>>GANTZ:O>>009 COJ

といった具合。

特に「龍の歯医者」
続編もありそうな話なのにこれで終わってしまうとは……うーん。

声優としての清水富美加は、非常にいい感じ。
向いてるよなぁ、と素直に。
今後は「仏陀再誕」とか「UFO学園の秘密」みたいな教団プロパガンダアニメでしか聴けないのかと思うと……実に、もったいない。