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ウディ・アレン流ミュージカルは意外とキュート 映画「世界中がアイ・ラブ・ユー」

一年中、誰かが誰かに恋してる。ニューヨーク、裕福な弁護士一家にまつわる様々な恋模様を、ジュリア・ロバーツ、ナタリー・ポートマン他豪華キャストで綴ったミュージカル・ラブコメディ。

賛否両論の「ラ・ラ・ランド」と違い安心して観られる「世界中がアイ・ラブ・ユー」
適度にシニカルで適度にブラックで適度にスノッブで、アレンは相変わらず。
「ラ・ラ・ランド」を観に行った勢いでもう一度観てみた。



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そこそこのミュージカル

まずエドワード・ノートンの歌から始まって、この映画の方向性がわかる。
何せ今回のキャストで一番歌がそこそこなのが、このエドワード・ノートン。
踊りもそこそこ。ステップもドタドタしてる。
演技の才能はすさまじいが、歌と踊りの才能は普通。
で、このエドワード・ノートンと婚約したドリュー・バリモア。
こちらは、歌も上手い。
お嬢様育ちで世間知らずな役をこなしてる。

ところがこの結婚を控えたドリューの前に、野卑なムショ帰りの男が登場。
これを演じるのがティム・ロス。
歌は、完全にティム・ロスの方が上手い。
刺激的なティム・ロスに純真なドリューはすっかりメロメロになってしまう。

一方、ドリューの両親。
これがアラン・アルダとゴールディ・ホーン。
こちらは元夫のウディ・アレンとの仲もよく、アレンが女性にフラれて傷心になるとやってきて、ホーンに慰められるような不思議な関係。

あるとき、娘らが精神医のゴールディー・ホーンの患者(ジュリア・ロバーツ)と父親ウディ・アレンをくっつけようと画策。カウンセリングの内容を覗き見してアレンにリーク。
内心を言い当てられたジュリア・ロバーツはアレンに惹かれる。
……また、お前はモテ役か。
ジュリア・ロバーツとウディ・アレンって……30歳くらい歳の差。

さらにアラン・アルダとゴールディ・ホーン夫妻の娘(ナタリー・ポートマン等)の恋愛が絡みまくり、もう「誰かが誰かに恋してる」一家総出で恋愛中毒状態。

ミュージカル

見どころとしてはやはり「現実との乖離が小さいミュージカルシーン」にある。

もちろんフラッシュモブのように周囲のキャストがワラワラと踊り出すシーンもあるが、基本的に(映画内の)現実から並行してミュージカルシーンに突入する仕様で、この(最低限の)リアリティがあるからこそエドワードノートンのそこそこの歌声やそこそこのダンスも、そのままそこそこで使ってる。
この「吹き替えをしない自然な歌声」に現代的なミュージカル映画への試行錯誤の跡が垣間見える。

豪華キャスト

NETFLIXの新作ドラマではゾンビ役の”ET”ドリュー・バリモアを始め、まだ若い“刑事ジョン・ブック 目撃者”ルーカス・ハースや“レオン”ナタリーポートマンなど子役上がりの芸達者なキャストをそろえて、どこを切っても豪華で実力のある布陣。

もちろんアレンなので、美しいミュージカルだけではなくシニカルな要素も多い。
息子が右向きになって共和党の支持をしては父親と議論に(しかも原因が脳のせいなんてブラックなオチを)なるなんてのも左巻きなアレンっぽいし、民主党支持のゴールディー・ホーンが出所したばかりのティム・ロスを支援するからドリュー・バリモアは余計な騒動に巻き込まれる。

 

ゴールディー・ホーン

で、ゴールディ・ホーンですね。
ケイト・ハドソンのお母さん。

若いころのゴールディー・ホーンのコメディエンヌっぷりは神がかっていて、特に「プライベートベンジャミン」「ワイルドキャッツ」のころは、チャーミングさがさく裂していて素晴らしかった。

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そして中でも大傑作「潮風のいたずら」は、必見級の名作コメディ。
そんなゴールディホーンが50代で出演したこの作品でも往年のチャーミングさを発揮。

川辺でのアレンとの元夫婦によるダンスシーンは、アレンでもこんなロマンティックなシーンを撮れるんだな―などと感心する出来。
そこまであまり前に出てなかったゴールディー・ホーンが、一気にかっさらっていく。明らかにアレンの気合が、ここのシーンだけ違う。
 
 

アレン流人間讃歌

ミュージカル仕立てのせいかアレンにしては毒っけが薄め。
相変わらず鼻につくスノッブさはそれなり。グルーチョ・マルクスやMGMのミュージカルへのオマージュなど過去映画からの引用も、今どきの作品的。

恋愛中毒な群像劇の中心にあるのは、たとえいびつな形でも家族であって、男女が恋して一緒になれば、そんな家族の輪が広がっていく。
思想的にぶつかっても、経済的にどうでも、法的にどうでも家族は家族。
恋に恋して巡り巡る悲喜こもごもの群像劇は、アレン流の人間賛歌にも思える。
アレン作品に慣れない人にも観やすい一本だと思う。

余談

考えてみると昔より、コメディ映画を観る機会が圧倒的に減った。

そもそもヒットする映画にジャンル:コメディ作品を見かけない。
サボテンブラザーズ、天国から来たチャンピオン、潮風のいたずら……。
以前は、笑って泣ける名作コメディが幾つもヒットした。
ポリスアカデミー、クールランニング、フライングハイ、メリーに首ったけ、ホームアローンetc……。
ここ数年だとショーン・オブ・ザ・デッド(2004)とかTED(2012)くらいか?
もう今は、映画に笑いを求める時代じゃないのか。

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