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マイケル・キートン あるいは(自虐がもたらす予期せぬ奇跡)

この夏、『スパイダーマン:ホームカミング』が公開される―予告編#2公開 | TechCrunch Japan


スパイダーマンのリブート新作「スパイダーマン ホームカミング」予告編が公開された。

今作では、スパイダーマンのほかに“アイアンマン”トニー・スタークとしてロバート・ダウニーJrも出演。
マーベルヒーローの競演になるらしい。
そして敵役にはマイケル・キートンを起用。
このキャスティング、これまでの経緯を振り返って捉えると、とても興味深い。



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光と影

バットマン (字幕版)

元々、演技派俳優だったロバート・ダウニーJrだったが薬物によるトラブルが多く1996年には逮捕され99年から刑務所に収監、さらに釈放後も再逮捕された過去を持つ。

一方のマイケル・キートンは1989年映画「バットマン」「バットマンリターンズ」に出演。
まだまだ重かったバットスーツを着て初代バットマンを演じたが、三作目でヴァル・キルマーと交代。
ここからコンスタントに作品には出演するがヒット作には恵まれなかった。
ハリウッドからは「旬の過ぎた落ち目の俳優」とレッテルを張られていたかもしれない。

一方でハリウッドは、クリストファーノーランによるバットマントリロジー三作のヒットをきっかけにアメコミヒーローの映像化が本格化。
そんな中、アイアンマン役としてロバートダウニーJrが起用される。

2008年公開の『アイアンマン』で、「彼の波瀾万丈のキャリアがキャラクターに深みを与える」として、ジョン・ファヴロー監督から主人公のトニー・スターク役に抜擢される。制作スタジオ側は当初、薬物問題から「どんなことがあっても、彼を雇うことはない」としていたが、オーディションで他の役者たちを圧倒、トニー役を手に入れた
ロバート・ダウニー・Jr - Wikipedia

薬物問題の印象が強くハリウッドから嫌煙されていたロバート・ダウニーJrは、薬物を絶つと宣言し出演した「アイアンマン」のヒットによって再びスターダムへと返り咲く。

その後、スーパーマンやワンダーウーマン、ジャスティスリーグなどアメコミの遺産は次々とヒット作を生み出し、アメコミ映画はハリウッドの稼ぎ頭になった。

問題を抱えながらアメコミヒーローによって救われたロバート・ダウニーJrと、アメコミヒーロー映画の時代の波に乗り損ねたマイケル・キートン。
 
 

復帰

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(字幕版)

14年マイケル・キートンは、アレハンドロ・イニャリトゥ監督の「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」に出演。
「かつてバードマンというヒーロー映画で一世風靡したが、その後ヒット作に恵まれない落ち目の役者」というマイケル・キートンの人生が二重写しになる役を演じた。

作中には、アメコミヒーローを演じスターダムにのし上がったロバート・ダウニーJrの名前も登場。
落ち目の役者、マイケル・キートンは、テレビや映画の出演も減り、ブロードウェイの舞台での成功を目指しながらも過去の栄光(バードマン=バットマン)が離れず、幻覚として実体化して見えてくる。
アレハンドロ・イニャリトゥ監督による、現代のアメコミヒーロー映画やハリウッドに対しての皮肉がたっぷり込められた作品だった*1

この作品によってキートンは、ゴールデングローブの主演男優賞を受賞。
マイケル・キートンは、再びスポットライトの下に戻ってきた。

ヴァルチャー

その勢いのまま2015年に出演した「スポットライト 世紀のスクープ」も高く評価され、16年にはマクドナルドのフランチャイズ化を成功させたセールスマンを描いた「The Founder」で主演を務めた(日本未公開)。

今作でも高評価を受けている。
マイケル・キートンは再び注目される役者になった。
そして久々にアメコミ作品へ復帰。


かつてバットマンを演じたキートンが、ロバート・ダウニーJr演じるトニー・スタークの裏面ともいえる悪役バルチャーを演じる。

「バードマン〜」では、
・アメコミヒーローを演じたが、波に乗り損ねた落ち目俳優
・アメコミヒーローによって、スターになった上り調子俳優

という関係で扱われた二人が、新作では正義と悪に分かれる。
しかもキートンは、
・バットマン→バードマン→ヴァルチャー
なんだから暗喩というより、もはや直喩。全部、羽がある役。

この皮肉な、自虐的な役も引き受けてみせる(こうやって評価され、再び今勢いのあるアメコミものに参加した)マイケル・キートンの悪役っぷりには、期待しかない。

【関連過去記事】
azanaerunawano5to4.hatenablog.com

*1:監督はインタビューに答えヒーロー映画について「文化的ジェノサイドだ」と発言している