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毒親たちから窃盗娘は逃げ出せるか? 映画「ドント・ブリーズ」


映画 『ドント・ブリーズ』 予告

街を出るための資金が必要なロッキーは、恋人マニー、友人アレックスと共に、大金を持っているといううわさの目の見えない老人の家に忍び込む。だが、老人(スティーヴン・ラング)は、驚異的な聴覚を武器に彼らを追い詰める。明かりを消され屋敷に閉じ込められた若者たちは、息を殺して脱出を図るが……。

かなりよくできたホラー作品。
少し深読みできる余地があるのも面白い(そういう意味で「イットフォローズ」を連想させる)。

そこまでエグく怖くもないので観やすいのもポイント高いかもしれない。



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主人公らは、窃盗グループ。
盲目の老人が金を貯めこんでると聞き、警備会社社長の息子と家に乗り込み老人の逆襲に遭う。
イラク戦争で盲目になった老人は、多分特殊部隊か何かでいわゆる映画の主人公みたいなキャラだったのに目をやられて娘が死んでそこから狂い始めたと考えるといいか。

まず老人、最初の一言二言以外は殆ど話さない。
ここでペラペラしゃべってしまうと怖さが半減する。
しゃべらないことで老人の人間性を見せない演出。
沈黙したまま、殺人マシーンとして老人は動き回る。

反対に主人公らはベラベラと話し、漏れ出る呼吸を押さえ込むことになる。
人間性を拒否した殺人マシーンと、逃げ回る愚かな窃盗団。

善と悪

この映画、普通に考えて主人公らが圧倒的に悪い。
なにせ窃盗だし、銃を持ってるし、金目当てだし。
だから少しでもバランスをとるために、主人公に同情できる動機づけをしてある。
毒母親は若い男を連れ込む家から妹を連れ出しどこかで新しく生活するための資金が欲しくて窃盗をやってる。

ところが、これでも弱い。
それでも盗みは盗み。

そこで老人の方も、金は別として少なくとも完全に同情できる人間にしない。
これで動機的なバランスを少し取ろうとしてる。
正義 対 悪ではなくても、せめて悪 対 悪くらいになれば物語は成立する。
おまけにザクザク殺されるわけですから。

ネグレクト

主人公は、毒母親の元から逃げ出たい。
そして老人は、妻もおらず娘も死んだ。
この「父親のいない娘」と「娘をなくした老人」という関係は非常に暗喩的。
「ネグレクトな母親」のもとで育った娘が、娘をなくし狂う老人のところであんな目に合うというのは、DVの影が臭う。

この映画は「毒親の元から娘が逃げられるのか?」という暗喩があるという見方をすると色々と風景が違って見える。

つまり「狂った老人」「ネグレクトな母親」という毒親から妹を連れ逃げ出すため「姉」は、親から金を盗んで逃げようとする話に読み替えると、あのエンディングもわかりやすくなる*1
さらに読み替えるならあの老人は無くした妻に対してもドメスティックだった可能性もあって、だとすればあの娘をその代わりにしようと捉えて「DV夫の元から逃げようとする妻」に読み替えてもそれはそれで面白いかも知れない。
姉から妹への愛情というより、母性を感じさせる場面もあるし。

表面的に観るなら、単に強盗が舐めてた老人に逆アップかまされて逃げ回るシンプルな話ですが。

なかなか面白かった。
結構、オススメ度高い。

ドント・ブリーズ (字幕版)
(2017-03-22)
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*1:もちろん「実際に老人と主人公の母親が夫婦だ」ということではなくて、あくまでも「毒親」という属性と「その子供」という属性で