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現代中国を支える経営者の肖像 高口康太「現代中国経営者列伝」

現代中国経営者列伝 (星海社新書)

傑物8人の列伝から読み解く、現代中国経済史!
トウ小平による改革開放政策の開始から30年あまり。中国経済は驚異的なスピードで成長を続け、ついには日本を追い抜き、世界第2位の経済体へと発展を遂げた。経済の近代化が遅れていた中国にとって、「明治維新と高度成長が一緒にやってきた」ような狂騒の時代――その中から「改革開放の風雲児」ともいうべき起業家たちが現れる。本書では、世界一のPCメーカーとなったレノボの柳傳志、孫正義からの伝説的資金調達でも知られるアリババの馬雲ら傑物8人の人生を通じて、現代中国経済の発展をたどっていく。風雲児たちの破天荒なエピソードの数々は、長期低迷にあえぐ日本人が忘れてしまった「経済成長の楽しさ」を教えてくれるだろう。

とても面白くて一気に読んでしまった。
これはかなりオススメの一冊。

星海社新書なので電子書籍がないのが残念だが。
 



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立志伝

明治維新+高度成長=改革開放

と帯にあるよう、中国は2010年にGDPで日本を追い抜き世界二位になった。
しかし日本では、そんな中国で成功した経営者の「立志伝」のようなものを目にすることはほとんどない。


たとえば、家電メーカー ハイアールの社長 張瑞敏や飲料メーカー娃哈哈(WAHAHA)のワンマン社長 宗慶后、通信機器メーカーファーウェイのCEO任正非などは極貧の環境などから成り上がった叩き上げの人物が多い。

特に娃哈哈の宗慶后はその出自から文革*1の最中、島を開拓する重労働からダンボール工場の労働者まで、いわゆるブルーカラーを経験して大学にも行けず、それでも創業。
2010年フォーブスの世界長者番付で世界一位になるまでになりあがった。

しかし携帯メーカー シャオミの創業者 雷軍は小さい頃からプログラマー一筋。
大学を卒業し、マイクロソフトオフィスとの互換性のあるキングソフトオフィスのキングソフトにプログラマーとして加入。
キングソフトが上場すると退職、自身の手でスマフォメーカーを立ち上げた。
スティーブ・ジョブズに憧れ、スティーブ・ジョブズのようなプレゼンでプレミアム感を持たせたスマフォは中国で大ヒットを飛ばした(最近低迷気味だが)。

動画サービスyouku(優酷)の創業者 古永锵は香港産まれ、オーストラリア育ち。
アメリカに留学し、バークレーを卒業してインターネット企業でノウハウを学び、中国へ帰りyoukuを設立したのだという。

中国には、文革という歴史と共産党という特殊な環境がある。
文革を経て、混乱していた中国の中、極貧な環境から叩き上げで成り上がった先人と、ITの下請けとして技術を蓄え、経済的にも勢いがつき始めた中国で立ち上げた企業と。
それだけ中国という国の環境が、大きく変わったということでもあるんだろうが、成功企業の創業者の背景も、随分と違う。

アリババ

「今日は残酷だ。明日はより残酷だ。
明後日は美しいが、ほとんどの企業は明日の夜には死んでいる」

中でも、ECサイト アリババの創業者 馬雲のエピソードは面白い。

1964年、杭州市で生まれた馬雲は、小さい頃から喧嘩っ早い暴れん坊。
学校の成績も悪く、常に平均点以下。
しかし英語だけは上手く、英語ラジオを聞き込み、観光地に訪れた外国人に話しかけ実地で学んだ。

だが大学入試では、数学で1点を叩き出し当然落第。
大学は諦め、就職しようとホテルの採用面接を受けるが「背が小さくブサイクだから」という理由で不採用(ひどすぎ)。
三度目の受験で山勘が当たり、数学で高得点を記録しなんとか合格。

その後、馬雲は、何社も面接を受けるがことごとく不採用。
雇ってくれる会社がないからと中国版イエローページの立ち上げを行う。
ここから巨大ECサイト アリババへとつながっていくんだから、人生何があるかわからない。
 
 

リバース・イノベーション

リバース・イノベーション2.0 世界を牽引する中国企業の「創造力」

リバース・イノベーション2.0では、中国企業が自国の市場に合わせて開発した商品やサービスが先進国で応用され、中国で生まれた新しいビジネス手法が先進国のグローバル企業に採用されている。あるいは中国の社会イノベーションが、先進国の行政にも導入される。それだけでなく、中国企業が先進国で、その国にあった商品を開発し、そこから今度は中国をはじめ世界に展開するというケースも現れた。
リバース・イノベーション2.0とはなにか?

2014年に発売された「リバース・イノベーション2.0」は、中国で一体何が起きているかを代表的な企業を挙げ考察する(そして日本もイノベーションとして生かせないか?)興味深い一冊だったが、こちら「現代中国経営者列伝」は、企業や技術より、その企業の中心になる人物の歴史とその背景に注目した美味しいとこどりの読み物。


他にもレノボの創業者 柳 傳志、ワンダグループの王健林など。
この一冊に8人分の立志伝が書かれている。

1人1人で一冊づつ読むのはさすがにつらいし、そもそも日本語化された立志伝をほとんど見かけない。
Wikipediaにすら情報があまりない(多少詳しいのは、馬雲くらいか)。
嫌中本を出すヒマがあるならもっと知中本を出してほしいものだが……。

こうやって「現代中国を支える」という軸で総括された経営者らの肖像は、あまり他では見かけない内容だけに、とても興味深いし、学ぶことも多い。

現代中国経営者列伝 (星海社新書)
高口 康太
講談社
売り上げランキング: 508

*1:文化大革命