不倫の果ての逆セカイ系 米代 恭「あげくの果てのカノン」

あげくの果てのカノン(3) (ビッグコミックス)

日常は崩れゆく。
世界は悪化の一途。
恋心はまっすぐに、狂ったまま、重さを増していく。


この世界を救うヒーロー境と、彼に8年間片想いをよせる高月(こうづき)。
ふたりは
この“不道徳な恋”を誰も知ることのない北海道へと
エスケープするが…
不倫地獄のループを断ち切るため、妻は…!?

世界の緊迫と、個人の切実さが
はじけ飛ぶ
大注目、不倫SF、第三集!

ストーカー、不倫、逃避行、嫉妬、侵略者SFな注目作品。
遂に三巻、ドロドロしてまいりました。



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ストーカー

憧れの先輩。
卒業しても恋し続け、ストーカーと化す主人公 高月カノン。
そして先輩とストーカーなカノンの距離が近づき、先輩の妻 初穂が気づいて泥沼に……と言うのはどこにもで転がってるようなよくある話。
少女マンガの山に石を投げれば、そんな話に当たるくらいの王道。


ところがこの「あげくの~」は、少々異なる。
憧れの先輩は地球を攻撃するゼリー状の侵略者と最前線で戦う隊員であり、地球を守るみんなのヒーロー。
そして、その身体に侵略者の細胞(ゼリー)を埋め込んでいる。
ゼリーを埋め込んでいると超回復できる。
腕がもがれても生えるし、頭が半分になっても死なない。

代わりに精神に影響がある。
回復する度、徐々に性格が変わる。
甘いものが苦手だったのが、好きになったり。
まったく興味のなかった女性に惹かれ始めたり。

先輩はカノンとの不倫にハマり始める。
だが、それが果たしてゼリーのせいなのか、それともそれ以外の理由なのか。

そしてそんな先輩の妻 初穂は、侵略者ゼリーの研究者。
先輩の気持ちがどんどん変わっていくのは、自分のせいでもある。
しかしゼリーがなければ先輩は死ぬし、侵略者の研究はしなければならない仕事。
愛する相手の気持ちが変わっていくことを止めることはできない。

変わることと変わらないこと

人間は変わっていく。

幼いころに野球選手になると言い、幼稚園の頃に知り合った相手と結婚すると言っても、その夢や約束を果たせないまま多くのひとは成長する。
昨日好きだった相手を何かの拍子に嫌いになったり、数年前は大好きだった相手を今は殺したいと思ったり、一度は生涯一緒にいることを誓った相手ともう会うこともないかもしれない。
気持ちや思いは簡単に変わってしまう。
だから心を変えないために、強く思い続ける必要がある。

先輩が自分のせいかゼリーのせいかはわからないが変わっていく自分の気持の中で、、ずっと変わらないカノンの自分への想い(ストーカーチックな、偏執的な、執着)の普遍性に惹かれるのはそんな自身と異なる性質に対して感じるギャップのせいかも知れず、反対に自分の妻に対しての気持ちが冷めていくのは、そんな妻が自分に合わせて自分を変えようとする同じ性質のせいかもしれない。
川の流れのように流れ続けるその中で、ただ一つ変わらないものにすがろうとする気持ちは果たして愛情なのか。

「あげくの果てのカノン」もニ~三巻で暴走が加速度を増し、不倫が地球の危機を巻き込みつつあるという、なんだかはた迷惑な状況。

私事が世界の命運を巻き込んでしまう……かつてセカイ系*1というのがあったが、「キミとボク」の不倫が世界を滅ぼすのならこれは逆セカイ系なのかもしれない(安易)。

不倫の果に世界が滅ぼうが、いっそ別れるくらいなら壊れてしまえ、と……。
他人からすれば仕事は仕事で割り切ってほしいんだろうが、ゼリーの移植はプライベートに影響しすぎるからなぁ……やっぱり夫婦で同じ職場は(特に人類の命運を握るような)いかん。

他人の修羅場は蜜の味。
この先どうなっていくのか展開が読めないが、最後まで楽しみにしたい。
ドロドロ鬱展開不可避。

*1:そもそもが曖昧でイージーなバズワードだが、ここではWikipediaの記述から「キミとボクの関係性が世界全体の命運を握る」ような作品としている