ゼロどころかマイナスで解決する探偵 井上真偽「探偵が早すぎる(上)」

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

犯行計画を立てただけなのに……どこからともなく名探偵がやってきた?完全犯罪をもくろむ殺人者は、誰にも見破られぬように犯罪計画を立てた……はずだった。「キミ、殺そうとしてるよね?」彼の犯罪計画の穴とは!?ミステリ界が今、最も注目する才能が放つ、究極の倒叙ミステリ!



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ミステリというのは、探偵が事件に登場するところをゼロとして、そこから犯人が犯行を行い、行動することで手がかりが+1、+2……されていき、できるだけ少ない手数で探偵が犯人を突き止めたり、犯行を食い止めたりする。

ところがこの「探偵が早すぎる」は、まさに早すぎる探偵。
なにせ事件が起きるどころか準備段階で探偵が行動を始める。
ゼロどころか事件としては、マイナスの段階。

しかしこの「探偵が早すぎる(上)」の場合、被害者(候補)は、莫大な遺産を受け取る権利を持つ一華のみ。
一華を殺害して自分が遺産を受け取ろうとしている一族の他の人間……が雇った人間が犯人、とかなり限定的。
なので事件が起きる前から既に、犯人の候補とその動機ははっきりしてる。
だからこそ「事件が起きる前に探偵が事件を突き止め食い止める」という曲芸も成立する。
それに犯行が成功してしまうということは唯一の被害者候補、一華が殺されてしまうとうこと。
それは色々まずい。


作者の井上真偽は「恋と禁忌の述語論理」でミステリの極北メフィスト賞を受賞しデビュー。
次々登場する事件の推理を探偵が否定していくという「その可能性はすでに考えた」とその続編「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」は高い評価を受けた。

【関連過去記事】
azanaerunawano5to4.hatenablog.com

「推理を否定する探偵」の次は、事件が起きる前に「事件を未然に防ぐ探偵」。
デビューから一貫して、変なミステリしか書いていない気がする。

ラノベ寄りのミステリレーベル講談社タイガだけに、出て来る一族の人間や雇われる連中はHUNTERxHUNTERの処理しきれないキャラ並みの個性派ばかり。
ミステリ的な読み物というより、キャラクター小説としての色が強め。
特に三話「カボチャと魔女」は、単体としても非常によくできてる。
是非、一華の友だちの出番をもっと増やしてほしい。

上下巻ではなくシリーズ化して欲しい面白さ。
これなら是非読みたい。
ただ「命を狙われる」シチュエーションをずっと続けるのは難しいからなぁ……。

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