BiS “SOCiALiSM” と意味のない歌詞

SOCiALiSM【CD】

BiSのシングル「Socialism」発売記念リリイベ(リリースイベント)@渋谷タワレコに行って以来、この曲ばかり聴いてる。
曲調はパンク、歌詞の内容は何もない。
いわゆる意味なしソング。

世の中のヒットチャートを賑わす大半の歌は歌詞に意味があるものが当たり前。
特に共感できるものがもてはやされます。
ですが、中には意味のない歌詞の歌もある。

今回は、そんな意味なしソングについて少し。



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歌詞に意味がない

ところでそういう言語のコードというものは、いったいどんなぐあいにできているのか。ごく簡単に言ってしまえば、日本語なら日本語という言語をかたちづくっているコードは《文法》と《辞書》であります。
(中略)
それぞれのことばは辞書という標準コードに登録されているとおりの意味で使われている。それを文法という組み合わせ規則のルールどおりに使えば、とりあえずまちがいのない日本語のメッセージを発信することができる。それが言語の構造というものです。
それに違反するとどういうことになるか。
何か罰がくだるんじゃないか。そこが問題なのです。
レトリックの記号論/佐藤信夫 (講談社学術文庫)

まず連想する人が多いだろう「踊るポンポコリン」
語感とニュアンスで大ヒットを飛ばした。
たまの「さよなら人類」なんてのもあった(などなも山ほどいるとは思いますが、ここでは一部を)。


※タッチ/Numbergirl

ナンバーガールやZAZENBOYZなど向井秀徳の書く歌詞世界は意味が乖離してるイマジネーションの塊。
「繰り返される諸行無常、それでもやっぱり蘇る、性的衝動」というフレーズは向井のMCでも定番ですが、これ、意味がありそうで、でもよくわからない。
わからないが、語感というか、なんとなく格好いいし、歌詞にも入ってる。
もう何十年も諸行無常とか性的衝動は蘇り続けてるはずだが、未だにやっぱりわからない蘇る性的衝動。


※DEBASER/Pixies

向井の場合、PIXIESから大きく影響を受けている。
抽象的な歌詞もフランク・ブラックの影響下なのかもしれない。
この「Debaser」なんかも恐ろしく格好いいが、歌詞は何か言っていそうで何も言ってない。
ひたすらイメージを並べ最低だと言ってる。

TMGE


※リリィ/TMGE

TMGE以来、チバの歌詞はBJCベンジーの影響下。
ポエティックで抽象的な歌詞世界は独特。
どれもイメージが先行していて、歌詞から意味は乖離してる。
やり方は未だに変わってない。

言葉は、一つづりの意味をなす連なりでようやく意味が成立する。
センテンスごとに意味が存在してもセンテンス同士が同調しなければその意味は破綻する。
たとえば

「あの娘はルビーに夢中で、ガンメタルのトカゲはリビドーに戸惑い、星屑はひたすらのたうちまわる」

なんて言葉は、センテンス単位で、それぞれに意味が存在しても、関連、連なりが破綻してるから全体でそこに意味がない。

抽象性

絵画もそうですが、意味性が弱くなればそこに抽象性が強くなる。

意味のない言葉の連なりで抽象的な意味を浮かび上がらせる……ポエムと呼ばれるそれらは、意味性の連なりをあえて弱くすることで、言葉の関連を読み手に任せる。
言葉同士のつながりが弱いから、そこにイマジネーション(読み手が関連を補おうとする)が生まれる。

「意味のある歌詞」というのは、ある程度恣意的に聞き手の理解のベクトルにバイアスをかけてある。
こう聞いて欲しい、こう感じて欲しい、こう思って欲しい。
それが前提としてある。
聞き手は、その歌詞のことばの中から自身が共感しやすい歌詞のいち部分を選んで勝手に共感し、勝手に救われる。
「一番共感できる歌詞」というのは自身の経験と似た(重なる)歌詞を勝手に探し出し、手前勝手に自分の記憶や感覚を錯覚として投影して自分勝手に共感して感動しているのが実際。

歌は、そういう風にできてる。


ところが抽象性の強い歌詞はバイアスが弱く、イマジネーションの幅が広い。
あの細く美しいワイヤーがあったかなかったかという歌詞を聞いて、そこに美しさを見出すリスナーはとっくに調教されてる。
だから抽象性の高い歌詞は、時に感情移入がとても難しい。

SOCiALiSM


※SOCiALiSM/BiS

ここで、話はを新生(7人制)BiSの「Socialism」に戻します。

Socialismの歌詞は日本語としても破綻しているし、聴いていると英語詞に聞こえる。
「貪欲な」はDo you wannaに聞こえて仕方ない……と言うかそう歌ってるだろ。

これは桑田佳祐の「英語っぽく聞こえる日本語」でもあるでしょうが、果たして「英語っぽく聞こえる日本語」「英語詞を無理やり日本語歌詞にした」このどちらかというところ。
一応オフィシャルには前者だというのだけれど、聴いているとこれは後者ではないのかな、と思えてくる。
日本語英語というより、英語の響きをそのまま日本語変換したような歌詞は「英語詞の歌が売れないと言われる」日本に対して面白いスタンス。
ところどころモロに英語に聞こえたりあるいは日本語に聞こえる部分がある。
だからこの曲は単に英語に聞こえる日本語歌詞の歌というより、

・英語っぽい日本語詞
・日本語に聞こえる日本語詞
・英語にしか聞こえない歌詞

のチャンポン。
こんなデタラメはなかなかない。
日本語だとか英語だとか、通じるとか通じないとか、文化としての、ことばのことばとしてのコードを否定してる。

歌詞が意味を拒否している。
すると聞き手の意識は、自然と曲に向かう。
いわゆる英語をわからず聞く洋楽の感覚ですが、もともと「意味がない」と言っている以上、この曲は歌詞への感情や意味の理解ではなく、楽曲の音そのものに意識が向かわざるを得ない。

こういう音先行の歌を、あえて歌詞先行が常道のアイドルでやる挑戦は、実にWACKっぽくもある。
ここまでハードな感じは、他のアイドルでは少々厳しいでしょうが。

BiS

同じパンク調(エモい)でも“CHANGE the WORLD”のストレートなメッセージ性のある内容と真逆を行くような、音先行による言葉と意味との乖離はとても興味深い。
SOCiALiSMは、新生BiSの尖った部分が凝縮されたような印象。

7人になった今のBiS……特にBiSの寂聴担当カミヤサキが参加してのパンク曲というのは、まさにど真ん中。
金髪坊主が踊るステージと、その下で汗まみれで跳び暴れまわるファン(研究員)のコンビネーションはアイドル離れしてる。

ちなみにライブでの、カミヤサキの存在感が素晴らしかった(やんややんや)。
7人でこれだけ安定してしまうと、以前の5人体制に戻ったときどうなるのか。


先日のリリースイベントでもライブ会場がマッチョイズムなモッシュピットと化した様子は、ひと昔前のインディーズパンクバンドでよく観た光景。
バンドがかき鳴らすパンクサウンドに乗せてライブハウスで暴れていた若者らが、今はこうやってBiSとかアイドルに流れて暴れてるんだからとても面白い。
つい混ざろうかと思ってしまった(でも年齢的に筋肉痛とか、そもそも仕事帰りなのでジャケット姿ですし)。

新生BiSが、今とても面白いというお話でした。
年内、後数回現場にも行ければいいのですが……。


BiSH新作ミニアルバムを全曲先行配信、プレオーダー限定パッケージも - 音楽ナタリー
ちなみに明後日(6/9)は、BiSの公式ライバルのBiSH音源先行リリース日。
両方貼っておこう。

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