悪徳刑事と市長と検事が描く破滅と地獄絵図 映画「アシュラ」

その激しい痛みと哀しみは、見るもの全ての心を突き破る--映画史上最も刺激的で儚い<悪>を描いたノワール・エンタテインメント

チョン・ウソン演じる悪徳刑事ドギョン。
私腹を肥やす市長(ファン・ジョンミン)の元で働くドギョンが、あるとき同僚刑事と揉み合いになり突き落とし、殺してしまう。
検事(クァク・ドゥオン)はそんなドギョンに目をつけ、市長の悪事を暴くためドギョンに協力するよう脅すが……。



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グチャドロ

ものすごくベタにいうとタランティーノっぽい。
いわゆる「レザボア・ドッグス」や「ヘイトフルエイト」を思わせる死体の量。
「戦争くらい死体が出てるのを、このあとどーやって誤魔化すんだ」と思わなくもないが、悪徳カリスマ市長だからなんとかするのかもしれない。

ドロドロバイオレンスてんこ盛り。
韓国のこの手の作品でおなじみ拳銃 vs 手斧、鉈も満載。
肉弾戦のない「ザ・レイド」というか、ドロドロの「シャロウ・グレイブ」というか。

拳銃は中距離で弾着が弾けて終わりですが、鉈や手斧の場合、殴って蹴って近くでザクザク切りまくって、それでも意外と人間は丈夫で死なないから、相手がズタズタなるまで何度も斬りかかる→当然、全身血まみれ、床も壁も血だらけ。
拳銃が出てきても結局接近戦になり、超近距離で撃ったりするのできれいなアクションにならないのもこだわり。
ガンアクションは中距離なので、画面がキレイになりがちなんですよね。


なので血みどろが苦手な人は、やめておいた方がいいかも知れない。
ほんと容赦ない。

カーチェイスもあらゆる映画でやってると思うんですが、この映画のカーチェイスは並大抵でなく、やはりキレイではない。
スピードで云々じゃなく、扉が吹き飛んで、車同士で壁に押し付けて、壁と車が擦れて火花が散り、タイヤが吹き飛んでも猛スピードで走り続けてもうあたまおかしい(ほめ言葉)。
ともかくズタボロになって、グチャグチャにならないと気がすまない。

演技派

「コクソン」では警官役で主演だったクァク・ドゥオンと祈祷師役だったファン・ジョンミンが、今回は市長と検事で敵対関係になり、検察の捜査官役に名脇役のチョン・マンシクを配して、ともかく役者陣に一切隙がない濃すぎるオッサンの演技合戦。

そんな脇を固める役者陣の影響か主演のチョン・ウソンも甘いルックスを傷と血にまみれさせ、ラスト近くでグラスをバリバリ食べるシーンなんて「仁義の墓場」の渡哲也を連想させるような迫力*1

主演級の役者をこれだけ揃えれば、そりゃあ緊張感がキープできる。
演技マシマシおっさんマシマシ血みどろマシマシ。
女性や若者なんて数えるほどしか出てこないオッサン率の高さ。
いやー、濃い濃い。

阿修羅

妻のために悪に手を染めたドギョンが一度手を付けた悪事から手を引けず、泥沼にハマっていく。
「アシュラ」というタイトルの通り、天界を追われた阿修羅と警察の中で悪に手を染めるドギョンは相似形。
怒りの果てに全てを焼き尽くす業火。


「悪徳刑事の破滅と破壊」というありがちな素材も、ここまで徹底してやれば名作になるというのがよく分かる。
シナリオ(序盤、少し冗長ですが)、役者の演技、演出、全部が噛み合ってる。
これは間違いなく観るべき一本。


韓国映画界は「軍艦島」とか、あーいうナショナリズムに歪んだ物語より、ストレートにエンターテイメントを作って欲しいなぁ……。
映画や芸能がプロパガンダに利用されるのは宿命ではあるとはいえ……。

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*1:「仁義の墓場」では渡哲也演じる石川力夫が骨壷から骨を摘んでボリボリかじるシーンがある