今、流行の「不倫」を行動経済学で捉えてみた

アリエリー教授の「行動経済学」入門 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
行動経済学の本は幾つも出ているが、この「アリエリー教授の「行動経済学」入門」は、ダン・アリエリー教授がサンフランシスコで行った講義で行った質疑応答を書籍化したもの。
なので非常に読みやすい。

内容は、行動経済学のエッセンスが詰まった……要約版とでも言えばいいか。
入門書として一番向いてるかもしれない。

ところで最近、いろいろなところで不倫や浮気が話題になる。
ネットでもテレビでも不倫不倫不倫。

これを行動経済学などを応用して考えてみるとなかなか興味深い。
付け焼き刃の知識を集めて考えてみると、こんな感じになるが、どうだろうか。



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FAST & SLOW

人間の意識は、早い意識と遅い意識(無意識)に別れる。

ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー」で有名なこの二つの意識。
早い意識……つまり感情や感覚と言ったものと、遅い意識……論理、熟考を人間は時に応じて使い分けてる。

早い意識は常に起動していて、人間の動作をオートマチックに管理している。
遅い意識は自覚しなければ起動せず、使うにもそれなりの集中力が必要になる。

さてこの2つの意識は、どちらが優位にあるか。

あなたの内面で起こることのほとんどがあなたの意識の支配下にはない。そして実際のところ、そのほうが良いのだ。意識は手柄をほしいままにできるが、脳の中で始動する意思決定に関しては、大部分を傍観しているのがベストだ。
あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

「あなたの知らない脳 意識は傍観者である」によると意識……論理的思考はあくまでもシステムのごく一部でしかない。
意識……スローな思考は、感情などを含む大半の無意識……ファストな思考に従属するしかない。
無意識に行っている(ファスト)動作を意識して(スロー)やってみるとぎこちなくなる。

あなたの知らない脳──意識は傍観者である (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
デイヴィッド・イーグルマン
早川書房
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早い意識は優位にあり、人間の意識の根幹をなしている。
「怒らない練習」なんて本もあるが「怒り」がファスト、論理的に考え「怒りを押さえる」のがスロー。
怒りを抑えない練習は必要ないが、ファストの怒りや激しい感情を押さえるにはスローの使い方を練習しなければ難しい。
これもスローよりファストが優位だからに他ならない。
だから誘惑に抵抗するのは、難しいのも当然のことと言える。

マシュマロ・テスト

マシュマロ・テスト――成功する子・しない子 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

マシュマロ・テストについて聞いたことがある人も多いかと思う。
「マシュマロ・テスト 成功する子、しない子」という本も出ているので有名だと思うが、
子供を小さな部屋に入れ、こう伝える。

「マシュマロがひとつある。今すぐ食べてもいいけど、10分待てば素敵なお姉さんが来て、マシュマロを二個くれるよ」
アリエリー教授の「行動経済学」入門 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

我慢できる子と出来ない子がいて、我慢できた自己コントロール力が高い子の方が学業成績がよかったり、犯罪歴が少なかったり、健康に過ごしたなんて調査結果があったらしい。
我慢できた子と我慢できなかった子の差は何だったのか?

マシュマロテストのビデオを見ると、子供たちは、マシュマロを見て気にならないわけではなかった。
しかし、両手をお尻の下に置いたり、天井を見上げたり、あらゆる手段で誘惑を避けようとしていた。
まさにオデュッセウスの「自己コントロールのための環境設定」だ。自分の気をそらすことで、誘惑を退けたんだ。

つまりマシュマロを目の前にしてそこから目をそらしたり気をそらす発想に長けた子供らが誘惑に打ち勝った、ということだろうか。
だとすれば、もしマシュマロの誘惑に抗うために目をそらせない環境でも、我慢できた子は我慢できたろうか。

性的興奮状態

アリエリー教授は、性的興奮状態と冷静な状態で判断に差があるのかを調べた。
「嘘でも愛していると誘いますか?」「女性が応じてくれないときはお酒を勧めますか?」
など幾つかの質問を行ったところ、冷静なときには否定していても興奮状態ではこういう質問にも理解を示したという。

論理的思考が得意な人が感情に流されるのは当然のこと。
なにせ人間である以上、そういう風に脳が出来ている。

人間は論理的に考えられると思いがちだが、その論理的思考は感情的無意識に支えられている。
ネットでもよく見受けるが、思想や宗教などに関してはどれだけ論理的思考を得意とするひとでも話が通じなかったりする。
放射脳などと揶揄されたりのも見受けるが、ひとは途端に感情を基礎にして論理を組み立てることがある。
無意識が、意識に対してバイアスをかける。

論理より感情が優位であるため、感情を正当化するために論理が働きこのような動きをする。
たとえ結論が非論理的でも、自身の感情がその根本にあるため非論理的に感じない。

これはもちろん性的興奮という感覚でも言える。

目の前に魅力的なマシュマロがある。
興奮状態にあるからマシュマロの誘惑に抗おうという意識も弱い。
スローな論理思考はファストな下半身の主導によって判断にバイアスをかけられてしまう。

「普段、あんなに論理的に考えられるひとが、あんなにしっかりした人がどうして不倫に走ったんだろう?」
と言うのは何の不思議でもない。
ファストな感情が暴走すれば人だって殺せちゃう。
にんげんだもの。

双曲割引

最高級チョコレートを思い浮かべてくれ。君たちに、今すぐ食べるなら半分、一週間待つならその倍の量をあげるとしよう。今すぐ食べたければ食べてもいいが、その場合は、量が半分だ。一週間後ならその倍、食べられる。
では一週間待って倍もらおうというひとはどのくらいいる?
(四、五人が挙手)
何人かいるね。賭けてもいいが、もし今、本当にチョコレートがあって匂いをかいだら、待てる人はいないに違いない(笑)。
君たちはきっとこう言う。
「待つほどの価値はないから今ください」と。
たいていの人は「待つ価値はない」と言うんだ。
でも、チョコレートをもらうのがもっと先だったらどうだろう。一年待てば半分、一年と一週間待てばその倍もらえるとしたら?
アリエリー教授の「行動経済学」入門 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

物の価値は時間によって変わる。
人間は今を生きる生き物で、だから人間は、目の前の誘惑に弱い。
ダイエットは失敗するし、買い物もしてしまう、ガチャも回してしまう。

将来の平和な家庭と、目の前の魅力的な女性。
十年後の幸せな家族の姿と、目の前の女性との快楽。

その魅力に抗うのは、なかなか難しいかもしれない。

信頼と報復

先日、ベッキーがニューバランスの秋冬のイメージキャラクターに起用されたのだが、その際、ツイッターを眺めていたら「ベッキーがイメージキャラだなんてもうニューバランスは履かない」「あんな不倫女起用するなんて頭おかしいだろ」と言ったツイートが流れていて随分と驚いた。

ベッキーの不倫が報道されたのは2016年の1月。
もう一年以上経っている。

今や、不倫は、刑事事件を起こしたくらいの罪の重さなのかもしれない。
バッシングされ、社会的に制裁を受け、金銭的にもとてつもない額が賠償として支払われたろうに、未だに「あんな不倫女許すな」「テレビに出すな」「消えろ」という声が挙がる。

この理不尽に過剰なくらい報復したいという欲求に関してもアリエリー教授は実験を行った。

実験を行い、被験者の脳を測定したところ、報復欲求の機会を与えられた被験者の脳は、喜びの感情と近い部分が活発になった。
これにより裏切った相手を罰したいという欲求には生科学的根拠があり、喜びを感じるということがわかった。
※参照:不合理だからうまくいく: 行動経済学で「人を動かす」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

人間は、どんな相手であれ、まず信頼しようとするようにできている。
人間の社会の根幹は信頼によって成り立っているとも言える。
「人間は社会的動物だ」と俗にいうが、信頼が基本にあるからこそ社会が成立しているとも言えるかもしれない。

だから信頼を元にした社会的契約を裏切られると憤慨する。
信頼が高ければ高いほど利益があるからこそ、裏切った相手には報復しようとする。
報復の報酬として「喜び」を与えるように出来ている。

ベッキーは、高感度タレント……社会的にとても高い信頼を得ていた。
しかしそこへ不倫の話が浮上し、マスコミは連日その裏の顔と称してさまざまな情報を流した。

結果として、ベッキーを信頼していた多くの視聴者は高い信頼に対して過剰なまでの報復を行った、と言えるかも知れない。
信頼していればしているほど、深く裏切られたと感じるほど理不尽なまでに報復したくなる。

報復に尺度はない。
数値化されていない。
これだけの罰を受けた、と明文化されないから、ベッキーはこれまでの高感度に対しての過剰な報復によって、いつまでも叩かれ続ける。

信頼を裏切ったんだから報復されて当然。
バッシングに、人間は喜びを感じるように出来ている。

最後に

人間とは不合理な生き物である、と行動経済学は知れば知るほど教えてくれる。

もちろん上記は書かれていたことそのまま書き写したわけではなく、何冊もの本に書かれていたことを繋ぎ合わせたパッチワークにすぎない。
挙げていない本からの影響もあるかもしれない。

専門家からすれば「イヤイヤそれは違うよ」という部分もあるかもしれない。
別に行動経済学は、不倫を紐解く学問ではない(上記の記事はあくまで応用しただけです)。

ただ知識とは持つだけではなく繋ぎ合わせるからこそ新たな知見に繋がる。
行動経済学は、現実を生きる上で、さまざまな事象を捉えるための一助になると思うのだが、どうだろうか?


途中にも貼ったが以下、参考文献。

アリエリー教授の「行動経済学」入門 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ダン・アリエリー
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ファスト&スロー (上)
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あなたの知らない脳 意識は傍観者である (ハヤカワ文庫NF)
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