「逃げ恥」の終わりと「恋ダンス」の終わりの始まり

wired.jp

「アーティストとファンがダイレクトにつながれて、さらにファンがぼくらの曲をつかってコンテンツをつくる。ぼくらのファンが、クリエイターになってしまうんだ。そうやってファンたちがつくったコンテンツをみると、違った視点から自分の曲をみつめることができるよ。『なんだ、オレの曲結構イケてるじゃん』って思うんだよね(笑)」と。

音楽に合わせてファンがMV風動画を投稿できるmusical.lyのプレジデント、アレックス・ホフマンのインタビュー。
音楽が売れないと言われる現代で、音楽に対して「聴く」だけではない新しいこれからのファンの形を創造しようという発想は面白い。

読んでいて、恋ダンス動画削除の一件を思い出した。



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逃げ恥の終わりと恋ダンスの終わりの始まり

恋

www.huffingtonpost.jp
恋ダンスとして流行した動画がドラマの終了と共に著作権侵害として削除。
事前に予告していたことだったそう。

まず前提として、著作権侵害がよくないのは、当然。

だが恋ダンスのように公式が一度許可して、それが流行り、一世を風靡し、「もう曲のセールスに寄与しないので動画は著作権侵害として削除します」という姿勢は、たとえ予告していたとしても、権利的に正しくても、マーケティングのためだけだったのが透けて見える。
ファンは、別に音楽会社のマーケティングに協力するために恋ダンスを踊ったわけではないのに。

JASRACもそうだが、著作権という"著作に関する権利"を守るための目的と手段が混乱してるようにしか見えない。

要は恋ダンスだけの話ではなく
「今後似たようなことがあっても厳格に著作権侵害を適用し削除を行う」
という会社としての法務的な姿勢を見せたのだと思うが。

MAD動画五箇条

山本弘氏のMAD動画についての五箇条から引用するが、

1.MADや同人誌などの二次創作は、創作者が想像力を働かせて元の作品を別の形にこね上げた、新たな作品であり、いわゆる「盗作」とは異なる。

2.MADは削除しすぎるとファンの反感を買う。

3.MADは原作の売り上げに貢献している(下のニコニコ市場を見れば明らかである)。

4.つまり、MADのような二次創作はある程度黙認するほうが賢いやり方である。
同人誌業界から多くの漫画家が生まれてきたように、MAD業界からもいい映像クリエイターが生まれてくると思われる。
MADとは (マッドとは) ニコニコ大百科 スマートフォン版!

MAD動画はニコニコの中でも削除されやすいジャンルではあるがそれでも一定のガイドラインがあるため息が長く投稿されている。

もちろんサンプリングしたMADのように楽曲をそのまま使ったり、あるいはデジタルコピーして販売したり、楽曲をそのまま使いドラマの動画に合わせる(それこそMAD)にするのと、恋ダンスのように伴奏として音楽を流し、それに合わせて踊る動画を撮影するというのは、「楽曲を使う」にしろ大きく異なる。

デジタル文化において著作権が問題になるのはデジタルデータが元データと変わらずコピーできるからであり、曲に合わせて踊るため背景に楽曲を流してもそれは一度音としてアナログ化されたものであり、元のデジタルデータとは異なる。
一度アナログになり、劣化した音源はもはや元音源とは別物。
音源を販売するわけでもなく、商用利用するわけでも、元音源を共有するわけでもない。

もちろんそれでも著作権侵害にはなるが、ではファンが楽曲に合わせて踊った動画が、レコード会社に対して、売り上げに対してどんな損害を与えるのか。
そう言った形のファンによる侵害=損害ではない。
話題になりフィードバックとしての宣伝効果すらあったものを
「もうドラマも終わったし、宣伝効果がないので消しますわ」
と著作権発動するというのは、イメージダウンとしての効果しか思いつかない。

著作権という権利をマーケティングのツールとして「使い」、役目を終えたから権利を執行する。
著作権という権利が侵害されるのが嫌なのか、旨味が減ったから使ったのか。

二次創作

初音ミクの発展や二次創作にしろそうだが、今の時代において音楽著作権というのは旧来的な「ともかく使ってはいけない」という権利の使い方より「ここまでなら使っていい」という定義や柔軟な姿勢こそがキーになる。
一度許してそれを締め付ければ当然ながら印象が悪くなることも当然。

こういった戦略をやるなら、使用期限を切るのではなく、「このような使い方なら著作権侵害扱いしない」という提示の仕方がキモになる。


こんなことをやってるから音楽業界も斜陽なのは当然。

「音楽が売れないよー!どうしたらいいの!著作権侵害取り締まってもうまくいかないよ!」
だなんて毎日アホみたいな会議で重役がツノ付き合わせてるんだろうが、音楽会社は上を仕切ってる人間に一切合切退職していただいて、一気に平均年齢を下げないとこのまま著作権を後生大事に抱いたまま坂道をゴロゴロ転がり落ちるしかない。

もう作り手は、レコード会社を通さずにユーザーに楽曲を届けるフォーマットを広めていくしかないかもしれない。
今の時代にあった著作権のあり方は、その先にある気がする。

既得権益にしがみつくレコード会社はとっとと死に体になっていただければよろしいかと。
硬直化した組織は、一度完全に死なないと学ばない。

別冊ele-king 初音ミク10周年――ボーカロイド音楽の深化と拡張 (ele-king books)

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