ミステリランキングの傾向と読解

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今年も年末恒例、ミステリのランキング本がいくつも発売されたので買ってみました。

週間文春の「ミステリーベスト10」、
30年目のこのミスこと「このミステリーがすごい!」(宝島社)、
探偵小説研究会「本格ミステリベスト10」
そしてハヤカワミステリマガジンの特集「ミステリが読みたい!」

maname.hatenablog.com
まなめ氏は集計された模様ですが、多分、集計されていれば「あれ?なんかかなり違うな??」と思う部分があると思うんですよね。
ランキング本にはそれぞれの傾向や、あるいは事情というのがありまして。
以下にいくつか。



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屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

比較されるとわかるかと思いますが、早川のミステリマガジン内特集「ミステリが読みたい!」だけ他のランキングとかなり違う。
何せ今年の各ランキングを席巻した今村昌弘「屍人荘の殺人」がどこにもない。

公開されているランキング上位を引用しても、

【国内篇】

第1位『機龍警察 狼眼殺手』
月村了衛

第2位『いくさの底』
古処誠二

第3位『紅城奇譚』
鳥飼否宇
ミステリが読みたい! 2018年版/ランキング結果発表

1~3位はもちろん、4位以下にも「屍人荘の殺人」がない。
他のランキングでは上位に間違いなく名前が挙がっている作品なのに。
どうしてこうなったのか?

ミステリが読みたい!は、奥付が2016年10月1日~2017年9月30日のミステリ作品が対象。
他のランキングより締め切りが早い。
「屍人荘の殺人」は、奥付が2017年10月13日になっているため、2017年末のミステリが読みたい!対象作品にならなかった。

時期をずらしたことで、ランキングの1位がまさか変わってしまうとは。

ちなみに当ブログでも過去にオススメしています。
azanaerunawano5to4.hatenablog.com

13・67

13・67

さらに海外部門で高評価を得た陳浩基「13・67」が、ミステリが読みたい!ではランキング20位にすら入っていない。
こちらは屍人荘の殺人と違い対象期間に出た作品なのに。

そこでミステリが読みたい!の得票を数えてみた。

対象は、ミステリが読みたい!やこのミスで1位になったフロストシリーズ完結編 R・D・ウィングフィールド「フロスト始末」、そして概ね上位にあったケイト・モートン「湖畔荘」
比較してみた表が以下。

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面白いのが、1位として挙げている人の数は三作品ともそれほど変わらない。
だが2位以下に挙げている人の数が全く違う。トータルなら13・67が5に対しフロストは19。
ほぼ4倍の差になった。
1位の投票数ではなく、全体的な得票数の差がランキングに現れた結果。

繰り返しますが、ミステリが読みたい!の対象は16年10月1日~17年9月30日のミステリ作品。

実は「13・67」奥付が17年9月20日になってる。
だから13・67は今年の対象作品ではあるが、〆切までに時間がなく全体的に読まれていた数が少ないために得票の少なさにつながったのではないかな、と。
結果として票が集まらずランク外になった、と思われる。
作品の面白さは間違いない。
何せ投票した方々は、皆さん上位にしてる。ただタイミングが合わなかった。

ちなみに当ブログでも過去にオススメしています。
azanaerunawano5to4.hatenablog.com

ミステリが読みたい!の国内編で「屍人荘の殺人」、海外編では「13・67」がランク入りしなかったのには以上のような理由が考えられます。
他のミステリランキングと一月ずらしたことによって、まさか〆切前後にランキングトップクラスの作品が国内外から発売されるとは誰も思わなかったでしょうが。

狼眼殺手

機龍警察 狼眼殺手 (ハヤカワ・ミステリワールド)

ミステリが読みたい!で1位、文春で4位、このミスで3位にランク入りした月村了衛「機龍警察 狼眼殺手」だが本格ミステリベスト10では対象外。
これは対象期間云々ではなくランキングの傾向によるもの。

もともと広く冒険小説なども含むエンタメ作品を対象としたこのミスに対し、謎解きの魅力を中心にしたミステリ作品を対象とすることをウリにして立ち上げられたのが本格ミステリベスト10。
このミスでは、過去に船戸与一の作品が上位常連でしたが、本格ミステリベスト10なら船戸与一は対象外になる。

だからまなめ氏のように四つのランキングを集計しても、その中に本格ミステリベストを入れるなら「機龍警察」にだけ票が入らないんですよ。
得票に最初からバイアスがかかってる。
さらにミステリが読みたい!みたいに時期が違うものも投票数がズレてしまう。

差別化

各ランキングは多様性を出そうとして色々試みを行うんですが、やるなら半年ズラすとか、一般投票を受け付けるとか、かなり思い切ったことをやらないと差別化できないと思うんですよね。
夏のミステリランキングとか。

もちろんランキング上位は多くの人が「面白い」と票を投じた作品なわけですが、しかしその対象時期や傾向によって結果は大きく異なってしまう。
自分の好みに合ったようなランキングの傾向を見つけるのも楽しいかもしれない。

ということで、年末はミステリざんまいしてはいかがでしょうか。
今年はなかなか豊作の年。
このブログでもまだいくつか感想を書くつもりですが。

こんな感じです。

このミステリーがすごい! 2018年版

宝島社
売り上げランキング: 30

2018本格ミステリ・ベスト10
探偵小説研究会
原書房
売り上げランキング: 389

週刊文春 12月14日号[雑誌]
文藝春秋 (2017-12-07)