地上波放送を気にしなくていいからこそ人間の残酷さを描けた「DEVILMAN crybaby」

devilman-crybaby.com
DEVILMAN crybabyが、とてもとてもよかった。
NETFLIXオリジナル、監督は「ケモノヅメ」「カイバ」の湯浅政明。

湯浅らしい「ケモノヅメ」で見せたような残酷描写や地上波ではまず無理なセクシー描写の数々。
地上波での放送を考えないからこそ、これだけ過激で挑戦的な描写ができる。
なにより永井豪の原作を(完全に忠実ではないまでも)最初から最後まで描いたのが一番素晴らしい。
NETFLIXに加入する一番の理由になれる作品。



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crybaby

DEVILMAN crybaby Original Soundtrack

原作を再現とは行かなくても、今のアニメとしてとてもクオリティが高く、原作にある「悪魔のように行動する人間をそれでも守るべきか」「たとえ暴力の前に無力でも愛や正義を持つ人間はいる」という暗澹とした展開も待ち構えている。
愚かしさに関しては、原作の方がより一層愚かしいが。

エヴァはデビルマンの影響を受けてると言われるが、そんなエヴァを逆になぞるようなカットや描写を意図的にやって見せているのも面白い。

サブタイトルのcrybabyも「自分のためには泣かないが他人のために泣く」利他的で優しい人間的な不動明というキャラクター像を際立たせ、そんな人間的な脆さを持つ不動明が悪魔を憑依させ悪魔でも人間でもないデビルマンになるという仕掛けだろう。

卓球が担当した音楽も湯浅の描線やクネクネとした絵の変化に合致してる。
ギターなんかの有機的な音よりデジタルの音の方が相性がいいらしい。
ラッパー役でKENTHE390や般若が参加していたらしく、道理でラップ上手いと思ったわ(観終わってから知った)。

悪魔とのバトル

気になったのはジンメンやシレーヌとの戦いが結構あっさりしているところ。
その辺は過去にOVAとしてアニメ化されたデビルマンの方がよくできてるかもしれない(あちらは戦いが主眼なので)。
湯浅版は、戦いにあまり比重がない。
基本的にデビルマンは食いちぎり引き裂いて臓物をばらまくような戦い方。
勝負の駆け引きみたいなものは少ない。

たとえばジンメンは、食べた人間の顔が生きたまま背中の甲羅に浮かぶ。「殺してない、食っただけだ」というジンメンに対しデビルマンは攻撃しようとしても人の顔が邪魔で攻撃できない。

ところが湯浅版では甲羅ではなくて胸の方に顔が浮き出る。
ん?胸?
なんとなく「ジンメン、亀の造形のままなのに甲羅じゃなく前側に人間の顔が出る違和感」がありつつ、戦いの展開はオーソドックス。
とはいえ、あの「ジンメンの甲羅、それは巨大な悲しみのデスマスク」がないのは尺の都合か、それほどの逡巡なく終わる。

シレーヌに関しても、出現までは不動明を探したり、思わせぶりなシーンがあり、かなりもったいぶった割に、コンビはあっさりと倒されてしまう。
前振りの量と戦いの量の比重が!
もちろんカイムとの捨身な合体攻撃や弁慶の立ち往生はありますよ。

残酷描写

そもそも原作が素晴らしいのだから、レーティングを気にして描写をヌルくしたりせずなぞれば素晴らしいに決まってる。
だが、これだけの作品も地上波で実現するのはまず無理だろう。
「ポプテピピック」のような狂った(褒めている)自由度に対する許容度は高いのに残酷描写などへの許容度は低い*1

デビルマンは、性的描写、残酷描写のオンパレード。
背中から刺す例のシーンだって原作をなぞり刺してからきちんと下まで切り裂く。
家には火を放ち、死体の首を刎ね、身体をバラバラにし、串刺しにして弄ぶ吐き気がするような魔女狩りもシルエットとはいえキチンと描く。

悪魔は人間のフリをして人間の中に混ざっている。そう言われるだけで疑心暗鬼になりお互いを疑い魔女狩りを始める。

人間は、社会性と知性の皮を被った獣に過ぎない。
一皮むけば残酷で下劣な獣の顔が覗く。
デビルマンは悪魔と戦い人間を守るはずが、守るべき人間はとても愚かしい。
守るべき価値もない。
悪魔のような人間……人間のために戦い泣くデビルマンと、悪魔にそそのかされ自分たちで殺しあう人間と。
いったい誰のために戦うのか?
その逡巡を産むために必要な残酷描写だが、地上波で流せば「子供の教育上」よくないから流せないだろう。

アニメの悪魔の臓物が飛び散るデビルマンと、ツイッターで自殺志願者を探し座間のアパートで9人殺した現実のニュースと、果たしてどちらが「残酷」なんだか。
内臓が見えていなければ、血が飛び散っていなければどれだけ悲惨でどれだけひどくても「現実に起きたことだから」セーフだと言うのはどういう思考なのか理解に苦しむ。
不倫だのホテルで密会だの下世話に騒ぐクセに性的描写は胸一つさらしてもアウト。

メディアもフィクションも現実を映す鏡。
現実はいつもフィクションより残酷で悲惨にできてる。
だがメディアもフィクションも現実より生ぬるいモラトリアムでなければならないとされる。

結果、テレビは「真実の愛を見つける涙と感動のドラマ」「いったいひとはいつ恋に落ちるのか?十代のリアリティ」なんて浅薄なコンテンツで溢れ、数年後には「本人の許諾が必要だから」とドッキリ番組や落とし穴は禁止になり、イジメの構図だからとモノマネ芸人も排除され、暴力を産むからとツッコミもなくなり、「子供への影響を考え、国内ドラマでは赤ちゃんはキャベツ畑で生まれる設定にすること」と言い出すディストピアの坂道を転げ落ちるフールフォーザシティ真っしぐら。

少なくとも今後は、クリエイターがNetflixなど、表現において自由度の高い配信系に流れるだろう。
それを予感させる作品になってる。
もう文句を言いたいひとが文句を言うための鏡と化したテレビに期待しても仕方ない。

www.netflix.com

ちなみにNetflix、初月無料なので試しで入ってみてもいいと思う。
今ならアニメもヨルムンガンドやウテナの配信も始まった。
来週には、虚淵版ゴジラの配信も始まる。
ノンフィクション好きならビットコインやアルファGOのドキュメンタリーもある。
観て、すぐに辞めれば金もかからない。

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*1:あのド深夜ですらキツイだろう