・一体どんなものを“ライトノベル”というのだろう―小説とライトノベルの境界線/空読みすくらっぷ
これを読んだ。
こーいうジャンル別けを考察するには、自分の場合原点を辿って行く。
児童向け文学と言う風に考えると遥か昔、
サー・アーサー・コナン・ドイルが1929年発表した「マラコット深海」や「毒ガス地帯」、1870年ジュール・ヴェルヌ「海底六万哩」、1876年マーク・トウェイン「トムソーヤの冒険」など、どんどん過去に遡れてしまうし、系統が隔絶している感がある。
この辺りの歴史はグーグル先生に聞くしかないので面白くない。
日本だとドイル作品は東京創元社辺りから出ているので児童文学と言うよりも「古典SF」と言った印象かもしれない。
ラノベに到る道
個人的原初体験に照らしてみると、朝日ソノラマの
菊地秀行「吸血鬼ハンターD」
夢枕獏「キマイラ・吼」
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辺りを小さい頃読んだ。
初期のソノラマ文庫は背の部分が緑だったっけ。
ソノラマ文庫(ソノラマぶんこ)は、1975年創刊のライトノベルを中心とした文庫レーベル
とあるが、少なくとも自分が「吸血鬼ハンターD」を初めて読んだ頃ライトノベルと言う呼称は無かった。その頃は「ジュブナイル小説」だったと思う。
境界とは何か?
ライトノベルの特徴として漫画のような表紙(と挿絵)が挙げられるが、最近は一般の小説でも漫画のようなイラストが書かれていたり、ライトノベル作家が文芸界に進出したり(桜庭一樹、沖方丁など)、一般小説とライトノベルの境界があやふやになりつつある。
ライトノベルとSF、ファンタジー小説の境界は曖昧だろう。
ジャンルは所詮パッケージでしかない。
野尻抱介「クレギオンシリーズ」は富士見ファンタジア文庫から発売された。
クレギオンシリーズは、ゲーム(プレイバイメール)のノベライズ。
その後、野尻抱介は、ハヤカワSFから「太陽の簒奪者」、「沈黙のフライバイ」を発表。
二作はラノベと言うよりハードSF的(これまた微妙なジャンル)な作風。
そして続いてハヤカワからクレギオンシリーズが再刊行される。
その際、イラストが弘司氏から
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このような「SF」を強く意識したイラストに差し替えられた。
もし最初にハヤカワから下の表紙で発売されていたら「クレギオンシリーズ」はラノベと呼ばれていただろうか。
ケータイ小説
少し寄り道。
私はライトノベルを中心に読んでいて、ボカロ小説、ケータイ小説といったものにはあまり触れていません。
ただ少ない作品数ではありますが、読んでみてこれらの文化圏はわりと違うもののようにも思いました。例えばライトノベルでは登場人物たちが生殖行動に至るケースを見かけることはあまりなく、にも関わらず女の子のキャラが扇情的な行動をとったりすることも多いです。
最近アニメ化された作品だと僕は友達が少ない(NEXT)あたりはそんな印象があります。
それに対してケータイ小説は、わりとさらりと生殖行動に至るケースを見受けます。
先日から読み始めた王様ゲームも物語序盤でそのような表現を見かけました。
それも十分に性欲を高める展開、表現をしてから生殖行動に至るのではなく、日常の行動とまではいかずとも、特别とは言いがたいぐらいのノリで生殖行動を行っていました。
http://d.hatena.ne.jp/alphabate/20130315/1363351166#20130315f1
「ラノベ」のライトがかつての「ジュブナイル」よりの系統とすれば、生殖行動とラノベの親和性は低い。
※生殖行動ってお堅いので以下セックスって書きますが
例えば菊地秀行が「魔界都市」シリーズとしてNONノベルから煎餅屋(マンサーチャー)秋せつらや魔界医師メフィストを主人公にしたシリーズを刊行しているが、そちらにはセックスもバンバン出て来る。夢枕獏のサイコダイバーシリーズも同じ。
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しかし吸血鬼ハンターDシリーズや、キマイラシリーズにはセックスは出て来ない。
仮にラノベが大ジャンルとして、その下に「ケータイ小説」が入るか、と言えば正直微妙だろう。
近年の「ケータイ小説」を辿ればやはりYoshiの「DeepLove」辺りがカタカナの「ケータイ」と呼ばれる小説ジャンルの元になるかも知れない。
さて「DeepLove」がラノベか?
実際、ケータイ小説は初期から既にラノベではない。
「ケータイ小説」はあくまで「ケータイで読める、ケータイで書かれた」小説であって、ジャンル方法がそもそもが違う。
このリンク先の文脈で「ケータイ小説」を語ってしまう事は、少しズレがあると思う。
まとめ
ライトノベルとは何なのだろうか?
内容は真面目なミステリーでも、若く美しい女性が表紙に描かれていればラノベなのだろうか?
ファンタジーであるハリー・ポッター、SF小説の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』はラノベなのか?
漫画・アニメ化された屍鬼(小野不由美)はラノベなのか?
表紙が徐々に奇妙な伊豆の踊子 (集英社文庫)はラノベなのか?(さすがにそれは違う)
一体何を以てライトノベルと定義すればいいのか?
真面目でないミステリーってなんだ、と言うのは置いといて(六トンの事かぁ〜!)
例えば新城カズマの「蓬莱学園の犯罪」はミステリーとしてもよく出来ていた。
しかし世間的にはラノベ(ジュブナイル)として認識されていた。
例えば清涼院流水「とくまでやる」はラノベの徳間デュアル文庫から発売された。
世間的にはラノベとしての認識だろう。
だが中身は(新)本格推理になっている。
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例えば西尾維新の「クビキリサイクル」はミステリーの賞メフィスト賞を受賞し、講談社ノベルスから発売された。
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しかし最近はラノベとして捉える向きもあるようだ。
近年の「化物語」や「刀語」などアニメ化の印象と、表紙のイラストからだろうか。
発売当時はミステリーとしか扱われてなかったように思う(その後ファウストなど発刊しミステリーとラノベの接近が始まる訳ですが)。
作家が自分が主力とする(デビューした)ジャンルと違う作風のものを発表する事は往々にしてある。
舞城王太郎はメフィスト賞「煙か土か食い物」でデビューしたが、最近は芥川賞の候補にもなっているし、ミステリー要素の無い作品も多い。
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作家のイメージによるジャンル別けは不毛。
ライトノベルは誰かが決めるのではなく、どんな内容の作品が求められているかで決まる。
表紙やジャンル、文体といった見た目ではなく、内容で判断するべきなのであろう。
改めて、ライトノベルの決まりに一文を付け加えてこの文章の締めとする。
「あなたがライトノベルと思うものがライトノベルです。ただし、他人の賛同を得られるとは限りません。
ライトノベルの狭義にこだわらず、周囲の意見を包括して判断するべきです。」
まぁ、確かにその通りなのだが、何かしらの境界があるからこそ「ラノベ」というジャンリングが存在してしまう。
ジャンルってタグみたいなものだと思う。
この作品には「ラノベ」「ミステリー」「SF」というタグが付く。
この作品には「新本格」というタグが付く。
タグは要素だ。だからクロスジャンルでも成立してしまう。
狭義な「ジャンル」よりも自由度が高い。
そして読者のタグつけと、出版社のパッケージとは違う。
売り手の「パッケージ」に反して、読者が想定外のタグを付けてしまう場合もあるだろう。
だから出版社・読者間で「ラノベってなんだ?」「SFってなんだ?」「ミステリーってなんだ?」という疑念が生まれてしまう。
「あなたがライトノベルと思うものがライトノベルです。ただし、他人の賛同を得られるとは限りません。
ライトノベルの狭義にこだわらず、周囲の意見を包括して判断するべきです。」
確かに全ては読み手の思うままに。
「周囲の意見を包括して判断」
周囲の意見なんてどーでもいいと思う。
ライトノベルと小説には境界線はなく、ライトノベルと小説の間の線引きは読む側が決めている。
ライトノベルと小説の境界があやふやになっている今、ライトノベルはライトノベル、小説は小説と区別して考えるのではなく、どちらも同じ「本」として考えた方がいい
ラノベなんてジャンルをそもそも決めつける必要も無い。
面白いか面白くないか。
小説なんてそれが全てで良いと思うけど。