好きな時間に行けるとしたらあなたは過去に行くだろうか?
それとも未来に行くだろうか?
遥か未来を観に行きたいと言う人もいるだろうし。
小さい頃の自分に「受験勉強しとけ」って言いに行くかも知れない。
一年前の自分に「ガンホーって会社の株を15万で買っとけ」って言うかも知れない。
でも時間は補正をする。
確かにガンホーの株は1,500万になるが、得をするはずだった自分は何らかの形で1,485万円損をする。プラマイゼロ。
そして未来は書き換えられない。
タイムトラベルものには、非決定論的・決定論的な作品がある。
・過去を変えると未来が変わる。筋書きはまだ決まっていない
・過去を変えても未来が変わらない。筋書きはすでに決まっている
多くは「未来は変えられる」っていう非決定論で、ドラえもんなんかもそうだろう。
ドラえもんがいなければのび太はジャイ子と結婚しているし、ドラえもんの存在があったおかげでのび太はしずかちゃんと結婚する事になる。だからのび太の玄孫のセワシはドラえもんを送り込むんだけど、未来が書き変わった時点でセワシの存在も無くなるかも知れないタイムパラドックス。
しかし決定論的な作品はタイムパラドックスを許さない。
時間自体が補正をしてしまう。
死ぬはずだった筈の人間が未来予知能力のおかげで生き残り、しかし「運命」が予定通り生き残った人間を殺していくっていう映画「ファイナル・デスティネーション」ってのがあったが、あれも決定論的な「運命」と人間が戦うって作品だったりする。
この榎本ナリコ(野火ノビタ)「時間の歩き方」もそんな決定論的な時間と主人公が戦う作品になる。
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・読んでないとヤバイ(!)ってレベルの隠れたSFマンガ10選
記事を書いたら読み返したくなったので、読んでみたけどやっぱり面白かった。
絵柄は少女漫画っぽく細い印象はあるけど中身はがっつりと考証を考えたタイムトラベルものになってる。
さすが榎本ナリコ。
決定論的なタイムトラベルの設定。
軟派なモノは書きません。背景がしっかりしてるから安心して読める。
でもSFクラスタの方だと設定の重箱の隅つつきをして「いや、これはおかしい」とか言っちゃうかもしれないけれど。そこまで読み込んでません。そういう読み方はつまらないし(作品の疵になるなら宜しくは無いけど)
生まれつき時間を移動できる能力(扉を開けるとランダムに違う時間に繋がってしまう)を持つ女子高生の杉田果子。
遥か未来から来たタラベラー(タイムトラベラー)井村遇太と出会う。
最初は時かけ(あるいはミステリクラスタ向けに言えば「七回死んだ男」)的な時間改竄に挑むが失敗。
そして強引に時間(運命)に逆らう事でペナルティを食らってしまう。
そこから冒険が始まって行くことになる。
時間に逆らうって天に唾吐くようなもので逆らっても逆らえないし、自分に返ってくる。
運命は理不尽だし、時間は無常だし。
感情や同情、人間の意志なんて関係ない。
それでも変えられる可能性が有るなら変えようと思うし、少しでもましになるなら努力しようと思う。
この道を行けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなしアントニオ猪木はそういったが迷わず真っ直ぐに行ける人間はとても少ない。
踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる 迷わず行けよ 行けばわかるさ
清沢哲夫
この作品の主人公である果子はその一歩を踏み出せるタイプなんだろう。
踏み出してダメでも、踏み出してダメでも、それでもまだ踏み出せる。
愚直に信じ続ける事は愚かだと笑われる時代だけど、真っ直ぐに信じる事も良い事なんだと思わせてくれる、そういう一冊じゃないのかなぁ。
解決してるんだかどんどん深みにはまってるんだか知らないけれど 笑
おっちょこちょいな主人公は好感触です。
ちなみに果子って名前は過去で、「因果」の果でもあるのかな?
だとしたら遇太は「偶奇」の遇から取ってるとか..なのかなぁ。
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お買い得!!お客さん一冊いかがっすか?! 笑
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