小川一水「天冥の標Ⅲ アウレーリア一統」

天冥の標Ⅲ アウレーリア一統天冥の標Ⅲ アウレーリア一統
小川 一水

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【関連過去記事】
小川一水「天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ上・下」
小川一水「天冥の標Ⅱ 救世群」
西暦2310年、小惑星帯を中心に太陽系内に広がった人類のなかでも、ノイジーラント大主教国は肉体改造により真空に適応した“酸素いらず(アンチ・オックス)”の国だった。海賊狩りの任にあたる強襲砲艦エスレルの艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカに暮らす救世群の人々と出会う。伝説の動力炉ドロテアに繋がる報告書を奪われたという彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うことになるが…
現代を舞台にしたパンデミック作品「天冥の標Ⅱ 救世群」から一転、今度は2310年の宇宙が舞台。メニー・メニー・シープに登場する“酸素いらず”や岩造りロボットフェオドールも登場する。

 



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今回のキャッチフレーズは「今度は戦争だ!」か。
正統スペースオペラ。
眉目秀麗な主人公、流麗な宇宙船。
個人的な脳内イメージは、ラインハルトとブリュンヒルト。
謎の古代遺跡・兵器とそれを狙う海賊との戦い。
銃撃、格闘、非業の死。
普段ラノベなんかを読んでるなら一番スムースに読めるのがこの「アウレーリア一統」じゃないだろうか。

系内平和をかき乱す邪なる者滅ぼすため、一統身命を御許に擲ち、怒り、溜め、撃ち放せ!大気なくとも大地あり!
“酸素いらず(アンチ・オックス)”は神の名の元に正義を行うから迷いが無いし、疑問も無い。
自分らが正義であって、海賊は悪である。判り易い(だからこそアンチ・オックスが主人公なんだろうけれど)。
多分、これ単体だと
「なんか一昔前のスペースオペラって感じ?古くない?」
とかって思われそうな作品だけど、これがこの長大なサーガの中にあると「銀河の歴史がまた1ページ」になるんだから面白い。


◆Ⅰ メニー・メニー・シープ上・下 
西暦2803年 植民地での反乱、地上での戦争

◆Ⅱ 救世群
西暦201X年 冥王斑ウイルスの発生、パンデミック

◆Ⅲ アウレーリア一統
西暦2310年 謎の古代遺跡を巡る海賊との戦い

物語によって時系列もバラバラ、中身・作風もバラバラ。
ただそのバラバラの中にシリーズの背骨になる様々な共通要素があって、謎はあかされつつも、しかしその共通要素が何を示しているのかまだ見えない。冥王斑ウイルスと救世群、アンチオックス、非展開体、ダダー。


進む度に作風が変わる。
読みながら故中島らも氏の「ガダラの豚」を思い出した。

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アフリカの呪術師のパワーを求めて取材班がアフリカへ赴くが、事件があり、なんとか日本へ帰り着いたスタッフが次々と変死していく中、最終的にその呪術師との戦いになると言うお話。
一冊目では超能力と手品について語られいわゆる「超能力のネタバレ」的な側面が強いサスペンスになってる。
二冊目では一転、アクション的な展開になり、三冊目ではホラーになり次々と惨殺される。
色々なエンターテイメントの要素がこれでもかと盛り込まれ、本来であれば違う一個の作品として成立する要素が一つの物語に組み込まれてる。

この「天冥の標」も同じくそうで、小川一水氏が「自分の出来る事を全部やろう」としているシリーズだけに、時系列も前後させ、このように一転また一転するんだろう。
時系列が順序どおりでは単純になってしまいかねない謎やストーリーがシャッフルされる事で複雑になり、しかし非展開体と同じく世界と物語を敷衍してみる事の出来る読者にとっては共通項やその暗喩を考えながら読む楽しみにもなっている。
まだ四冊目、いやいや面白い。
次は、機械仕掛け...これまた変化球。

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