小川一水「天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河」

天冥の標 Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河天冥の標 Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河
小川 一水

早川書房
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西暦2349年、小惑星パラス。地下の野菜農場を営む40代の農夫タック・ヴァンディは、調子の悪い環境制御装置、星間生鮮食品チェーンの進出、そして反抗期を迎えた一人娘ザリーカの扱いに思い悩む日々だった。そんな日常は、地球から来た学者アニーとの出会いで微妙に変化していくが―。その6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海底に繁茂する原始サンゴ虫の中で、ふと何かの自我が覚醒した

前回の「機械しかけの子息たち」に続く話は農村が舞台。
そしてそれと交互に被展開知性体ダダーことノルルスカインとは何なのか?が描かれる。

集合的な意識レベルのレイヤーに敷衍して展開したり、或いは電子ネットワーク上などに生きる寄生生物であり、幾星霜の寿命を持ち、潮流であるが故に実態を持たず、精神と言うものが電気エネルギーならその電気エネルギーそのものが単体として存在しているといえばいいか。
ある世界では神に近い存在として機能する。
攻殻機動隊の「人形遣い」が拡大し進化したような存在。
もし映像化でもするなら比喩的表現としてインタビューウィズヴァンパイアのような美青年にでもするか、あるいは禁断の惑星に出てきたイドの怪物のように描くか。

交互に描かれる宇宙の農村の置かれる環境は現代の農村と同じく、あるいはさらに厳しくやはり大手の食品流通が出てくる事でコストが下げられ対抗するには手を打たなくてはならないし、時代が変わっても生きる上での苦労はさほど変わらない。
やっぱり汚いし、臭いし、肉体労働だし、貧乏だし。
前半から反抗期の娘と父親が延々描かれて「これはなんだ?」と思ってたら急に展開を始めて「なるほどこう言う事で...伏線はこれだったのか?!」って気づくとかなり心地よい仕掛けが一カ所。

冥王斑ウイルス、前回の“恋人たち”、農家の農作物、被展開知性体。
総て種の存続や拡散がそこにある。

それにしてもこの「天冥の標」とか一体何の物語なのか。
今回ようやくノルルスカインとその敵の存在が明るみになる。
ノルルスカインは人のネットワークに寄生しそこに存在する、ならもし敵がノルルスカインを駆除するならそれは人の敗北への道にもなるのか。

農家と無関係と思われた巨大な「ドロテア・ワット」
ノルルスカインや人の昔より存在した知的な生命体の存在と遺産。
それらが絡み合いながら物語は後半へと突入して行く。
次巻は「天冥の標 VI 宿怨 PART1: 6」
だけど歌野晶午をたまには読み返すので、少し間空きます。

天冥の標 Ⅵ 宿怨 PART1: 6 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標 Ⅵ 宿怨 PART1: 6 (ハヤカワ文庫JA)
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