アマゾンで扱わない(後々様子を見ながら扱う事は暗に示唆されてるが)、初版の帯に付いたダウンロードコードを入れると同書の電子書籍版がダウンロード出来る、など色々面白い試みでも話題*1。
本文のところどころのポイント部が、蛍光ペンのように塗られていたりするのも面白い。
中身は新聞やテレビ業界に詳しいオールドメディア池上彰とTwitter、Facebookなどニューメディアに詳しい津田大介が自身の経験や見解を話し合う新旧メディア論、なんだが堅苦しかったり難しい話は一切なく、互いに互いをインタビューしあうような雰囲気。
ぶつかり合う要素が無いので、喧々諤々と言うより和気藹々とやってる。
目新しい意見や見解があるわけではなく
「これまでのメディアとは?」
「これからのメディアとは?」
それを考えるような内容になってる。
語り口が非常に丁寧なので読みやすい。さすが池上氏。
※津田大介はどこに行ったと言うのは置いといて
「池上彰氏の解説はなぜ解りやすいか?」
新聞などのメディアは既に報じられている部分を端折って報道をする。だから読んだ人間はいきなり前提知識無しで記事が書かれているために中々途中から読み始めるのはつらいし、事実上の日刊連載誌だから日々惰性で読み続けてしまう。
池上氏の解説は、その前提から話し始め、知っている人には復習になり知らない人には入門になる、だから判りやすい。
インターネットのハイパーリンクはとても便利で、興味があればその前提となるそもそもの事件を探す事が出来る。しかしそれを端折り簡略化するまとめや拡散するツイッターなどの導線が出て来て、それを鵜呑みにするリテラシーが問題になる。
本文でも語られてるが
「報道(情報)とは中立ではない」
それを前提として情報に向き合うか、その前提が無いかでリテラシーってのは随分と変わってくるんだろう。
中で創価についても語られていて今朝丁度
昨晩私の所属する創価学会の婦人部会で、池上彰の生霊を降臨させました。反抗的だった池上も説得を続けるうちに私達の考えを理解し、最終的には土下座して謝罪し入信を申し出ました。公明党も積極的に応援し、功徳を積みたいとも申しておりました。これで地獄に堕ちかけていた池上の魂は救われました。
— 佃お母さん (@Tsukuda_Mother) July 23, 2013
こんなネタツイが流れていたが、そもそも池上氏は創価を敵視している訳でもなんでも無く「周知の事実として知られてるし、視聴者もそう思ってるんだから触れない方がおかしくない?」というスタンスだと言い切ってる。
みんな知っているのに口にしたら敵だ、と言うのもおかしな話。
そのコツをまとめると、(1)聞くべきことは聞くが、下品にならないようにギリギリで寸止めする(2)相手の警戒心を解くために、45度の角度から質問する(3)「当選おめでとうございます」と呼びかけた後、「お気持ちは」などの定番フレーズを重ねず、ストレートパンチを繰り出す――となる。明かされたのは一部だろうが、ほかのキャスターはこの程度の工夫もしないから、視聴者にソッポを向かれるのだ。
テレ東の選挙特番に関しても語り、「メディアの仕組み」もだが、読み終わると
「池上彰の仕組み」
がよく判るし面白い。
自身で「黒池上が本当の池上彰です」と言っているように「空気」を読んで遠まわしに聞くのではなく誰もが思いそうな素朴な、子どものような根本的な疑問を相手にぶつけるから「黒池上」と呼ばれるんだろうし、池上無双が正しいと思っているんだろう。
公明党本部にやってきた池上彰一行。アナウンサー「中には入れないんですか?」池上「お断りされてしまいました」 #tvtokyo pic.twitter.com/LT93RfO5wP
— コクブカメラ (@kokubucamera) July 21, 2013
200P超の対談本だが、昨日の帰り道に買って寝る前に読み終わった。
面白いが一気に読めてしまうので少々勿体ない。
池上彰氏が色々な事件について語っている本は多いが、池上彰本人について池上氏が語っている事も少ないのでなかなか面白い一冊になってると思う。
読み口が軽いので二度読むのも苦にならなそう。
*1:だから書影は紀伊國屋から持って来た