「半沢直樹」の構造とテクスチャ
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・半沢直樹の評価はどうして真っ二つに割れるのか/More Access! More Fun!
http://www.landerblue.co.jp/blog/?p=8304
そういえば「半沢直樹」の事を書こうと思ってすっかり忘れていた。
それはさておき、ネット上でも半沢直樹に対する評価が大きく割れているように思える。「なにが面白いのかわからない」「なんであんな銀行に勤めてるんだよ、自分で起業しろ」VS「サラリーマンの気持ちを代弁していてすかっとする」という感じでしょうか。ぶっちゃけ自分はドラマとしては面白いけど、ストーリーとしては前者でございました。
まぁ、なんで評価が分かれるかと言えば簡単な話。
あれって
「古典的な復讐話に銀行員のテクスチャを貼りつけた物語」
そういう構造になってる。
失敗を上司に押しつけられ、それを倍返しにするために奮闘する。
しかし上司は裏で黒幕と繋がり半沢に嫌がらせを繰り返す。
最終的に半沢は勝って、上司は片道切符の出向に出される、と。
この構造って
「理不尽に押さえつけられた正義が最後に逆転してスッキリ」
赤穂浪士の時代からずーっとある。
「必殺仕事人」だって「ザ・ハングマン」だってこの構造。
そこへ銀行のドロドロした世界と言うテクスチャが被せられてる。
半沢は
「復讐」がレゾンデートルのキャラクターで
「倍返しだ」
「十倍返しだ」
ばっかり言ってる。
「独立したらいいのに」
いやいや、元々復讐のためなんだから意味がない。
主人公が苦難に立ち向かいながら最終的に目的を果たす。
だから視聴者は感情移入する。
半沢が「栄達」や「経済的成功」が目的なら起業でも何でもすれば良いけど。
「踊る」で柳葉が演じてた室井も理不尽と戦いながら出世して警察を変えようともがいてるキャラクター。
「そんなに理不尽ならやめちゃえばいーじゃん」
それじゃドラマ自体存在できない。
キャラは「物語」の下に従属してるんであって、キャラが「物語」を作ってるんじゃない。
独立したなら、それは本末転倒。
このドラマに対しての意見におかしなものが多いのは、普段「物語」を観たり語ったりしないクラスタの方々が「銀行が舞台で話題のドラマだって?!」と観て、己の経済知識を元に語りだすからおかしな事になる。
エンターテイメントなんだからエンタメとして語るのが正当。
なのに「銀行の出向と言うのは...」「組織内の序列とは...」
と語ってしまう。
でもあのドラマは、そこが主眼ではなく出来てる。
ディテールを観る事と物語を観る事は違う。
どれもこれもディテールには詳しい感想が多いのに物語全体を俯瞰した感想が少ない。
人間って観たい部分しか観ない。
だからサラリーマンもベタな復讐物語だけなら観ないのに「銀行の世界」ってお堅いテクスチャがあるからスッキリ観られて最後にはカタルシス。
「半沢直樹」に限らずベタで王道な話ってウケればとても強い。
そーいえば東京編からは近野成美が出るんだよなぁ...。
次回も、こってりした香川照之の顔演技に注目。
※上記More Access! More Fun!さんのリンク張ってますが、記事に言及してるわけでは無く、読んで思い出した&引用で使わせて頂いたためリンクを貼っております。他意はありませんかしこ。
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